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特集

人工衛星の姿勢を制御する高性能機器の開発

 科学観測(特に天文観測など)を行う際には,人工衛星に搭載した望遠鏡などの視野方向を精密に目標方向に合わせる必要があります。そのためには,人工衛星が向いている方向(姿勢)を精度よく計測するセンサが必要です。高精度姿勢センサとしては,CCDカメラを使って星を撮影し,その写っている方向から人工衛星の姿勢を知る恒星センサが使われます。しかし精度を上げるためには,一般的には重くて消費電力が大きいものになってしまい,小型の科学衛星に載せることが難しくなります。JAXAでは,重量3kg,電力10Wで0.001度程度の精度を出す恒星センサを開発しています(図1)。


図1
図1 高精度恒星センサの光学部


 恒星センサは,星を撮影するための露光時間がある程度必要なので,1秒間に数回程度しかデータを出力することができません。人工衛星の姿勢を安定させるには,もっと高速に姿勢の変化を検出することができるジャイロが必要になります。現在,高精度なジャイロには機械式のもの(回転するコマのようなもの)が使われていますが,可動部の信頼性やその発生する微小振動が観測データに悪影響を及ぼしたりすることが問題となっています。これに対して,光ファイバージャイロなどの非機械式ジャイロが中精度の用途には使われていますが,精度を上げるためにはさまざまな技術革新が必要です。JAXAでは,検出部の光ファイバーを長くする,出力の大きなレーザー光源を使用する,雑音を打ち消す回路を追加するなどして,高精度な光ファイバージャイロを開発しています(図2)。


図2
図2 高精度光ファイバージャイロの実験モデル


 衛星の姿勢を動かすためには,リアクションホイールといわれる回転する円盤を使います。円盤の回転数を上げたり下げたりすることで,衛星を回転させます。通常のホイールは,玉軸受で支えられて回転するため,機械式ジャイロと同様,信頼性や発生振動の問題があります。これを解決するため,回転円盤を電磁石の力で浮かしながら非接触で回転させ,回転軸を制御して振動が出ないようにする磁気軸受方式のホイールを開発しています(図3)。


図3
図3 磁気軸受方式のホイール


(システム誘導グループ/ISTA/JAXA,姿勢班/ISAS/JAXA)
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