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ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第482号

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ISASメールマガジン   第482号       【 発行日− 13.12.17 】
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★こんにちは、山本です。

 週末、今年最後の天体ショーと言われている「ふたご座流星群」がピークを迎えました。

 寒さの中、ガンバってご覧になった方も多いと思いますが、『根性無し』の私はネットで検索して
・ふたご座流星群と富士山
・ふたご座流星群、ラブジョイ彗星と共演。「流星痕」も出現

 なーんて 楽しんでいます。

 お正月には「しぶんぎ座」流星群を見ることができます。
1月1日から5日にかけて北極星の近くに出現します。
(「しぶんぎ座」:現在は使われていません。)

 今週は、宇宙飛翔工学研究系の石井信明(いしい・のぶあき)さんです。

── INDEX──────────────────────────────
★01:金星探査機「あかつき」の現状(いま)
☆02:お知らせ:募集 2件
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★01:金星探査機「あかつき」の現状(いま)

 アイソンすい星が久しぶりに肉眼で観測できる大型すい星として話題になりましたが、残念なことに太陽に近付き過ぎて分解してしまったようです。もし分解しなければ、12月初旬の夜明け前4〜5時頃の東の空、ちょうど太陽が昇る1〜2時間位前に、長い尾っぽが観測できたはずと多くの天文ファンをがっかりさせました。

古来すい星はいろいろな言い伝えを秘めてきた星でもあり、天文ファンでなくても、興味関心が高かったはずで、とても残念な結果となりました。ただし、肉眼では見えなくても大型の望遠鏡を使えばすい星の尾っぽをわずかばかり観測することができるようで、この先はたくさんの専門家達によって、すばらしい発見が報告されることを期待したいと思います。


 さて、実は日本で最大のアンテナ、長野県佐久市臼田にある直径64mのパラボラ型アンテナ、も同じ頃同じ方向を向いて毎日こつこつと観測データを集めています。アンテナは望遠鏡ではないので、アイソンすい星を見ることはできませんが、ほぼ同じ方角にある「あかつき」からの微弱な電波を受信しているのです。


 現在「あかつき」は、金星や水星と同じように、内惑星軌道を回っています。12月9日には、外合といって、地球から見てちょうど太陽の反対側に来ます。

このため、巨大なアンテナを毎日ほぼ太陽と同じ方向に向け、その近くにいる「あかつき」から発信されるか細い電波を受信し、「あかつき」の健康状態を見守っています。

望遠鏡で太陽の近くにある星を見る時には太陽からの強烈な光に邪魔されて、良く見ることはできませんが、「あかつき」の場合は、電波を受信するので、完全に太陽の裏側に隠れてしまわない限りは、交信できます。

逆に、外惑星ではないので、太陽と反対側に来ることはなく、夜中とか深夜に見えることはありません。そのため、太陽が昇る頃に臼田の巨大アンテナを東の空、太陽の方向に向け、「あかつき」からの電波を受信し、 一日の「運用」が始まります。

「運用」では、「あかつき」の健康状態を調べるとともに、異常があった場合の対策や姿勢変更や機器の動作切り替えなどに必要な指令(コマンド)を送ります。「運用」は太陽が沈む頃まで続けられます。

地球軌道の外側を飛行した「はやぶさ」では、夜中(深夜)も貴重な運用時間でしたが、「あかつき」の場合は、夜間の運用はありません。「はやぶさ」では、昼間会議をして夜中に運用をしなければなりませんでしたが、「あかつき」では昼間会議をしながら運用もしなければならず、どちらも根気と体力のいる大変な作業が続きます。


 「あかつき」は2010年5月に打ち上げられ、同年12月に金星を周回する軌道に入るはずでした。しかし、軌道制御用のメインエンジンにトラブルがあり失敗。金星のすぐそばを通過した後、金星の重力圏を飛び出し、太陽を回る軌道になってしまいました。

その後、専門家たちの知恵を結集し、再度金星を回る軌道に入る案が検討されました。その案によれば、次に金星に会えるチャンスは、2015年の11月下旬。メインエンジンは使えないけれども、姿勢制御用の小型スラスタを使って減速すれば、金星を回る軌道に入ることができます。

約200日(約半年)で金星に着く予定でしたが、飛行日数は約2000日(約5.5年)に延びてしまいました。2010年12月の失敗から今年で3年が過ぎ、金星の再会合まであと2年となりました。まさに道半ばです。

この間、たくさんの人達から励ましと応援のメッセージをいただきました。誕生日(5/21)、端午の節句(5/5)、七夕(7/7)、七五三(11/15)、クリスマス(12/25)などなど、様々な行事のたびに、欠かさずにお手紙やプレゼントをいただいています。

今後もたくさんの方々の期待に沿えるよう、細心の注意を払い、精一杯「運用」を続けてまいりますので、引き続き応援をよろしくお願いします。

(石井信明、いしい・のぶあき)

ISASニュースNo.390「宇宙・夢・人」
http://www.isas.jaxa.jp/j/column/interview/107.shtml

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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※