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ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第477号

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ISASメールマガジン   第477号       【 発行日− 13.11.12 】
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★こんにちは、山本です。

 2013年度グッドデザイン賞特別賞が発表されました。
大賞は該当なしでしたが、ベスト100に残っていた「イプシロンロケット」は、見事金賞に輝きました。

 明け方の気温がグンと下がり、木々の紅葉が進みました。週末には 各地で「コガラシ1号」が吹いたり、初雪が降ったりしました。このままでは、「衣替え」が済む前に冬になりそうです。

 今週は、学際科学研究系の三浦 昭(みうら・あきら)さんです。

── INDEX──────────────────────────────
★01:「はやぶさ」の軌跡
☆02:『「はやぶさ」来し方 / Trajectories of 'HAYABUSA'』が、国際科学映像祭「会場特別賞」および「審査員特別賞」を受賞
☆03:イプシロンロケットが「グッドデザイン賞金賞」を受賞
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★01:「はやぶさ」の軌跡


 私、縁あって「はやぶさ」関係のメルマガを何回か書かせて頂きましたが、縁はどこに転がっているか分からないものです。

今年は、「はやぶさ」10周年記念イベント用に「はやぶさ」とイトカワのランデブーを映像化させて頂きました。それに続いて、国際科学映像祭ドームフェスタにもフルドーム版の映像を出品させて頂きまして、ショートプログラムコンテストで「会場特別賞」と「審査員特別賞」を頂くという栄光に預かりました。

 このたびISASのアウトリーチ用サイトにも、これらの映像を掲載させて頂きましたので、ご興味のおありの方はご覧頂ければ幸いです。


 そもそもの始まりは某月某日。職員乙から、「はやぶさ」のCG、作れますか、と聞かれました。「はやぶさ」と小惑星イトカワのランデブーを映像化するのだそうです。
内心わくわくしながらも、冷静な面持ちで話を聞きました。今回の映像化には、いろいろな目的がありました。

広報・アウトリーチ用の映像として。
記録映像として。
今後のミッション・計画に役立てるため。
etc.


 世の中では、プラネタリウムや映画館向けに様々な映像作品が製作され、「はやぶさ」のリアリティ溢れる映像を見る事ができるようになりました。でも、実際の位置・姿勢データに基づいた実写風の映像は、作られて来なかったようです。そんな、実データとリアリティの橋渡しをするような映像が作れないか、という話でして。

「やりましょう」

言ったからには私も前進しないといけません。


 まずデータを調べます。
「はやぶさ」の形状は、職員甲(=総監督)からの資料を元にモデリングしたのですが、インターネット上に打ち上げ前の写真が多く残っていて、大変参考になりました。
イトカワの形状データは、DARTSのサイトからダウンロードできます。三角形にして5万個ぐらいの軽量級から300万個ぐらいの重量級まで揃っていますので、お好みにあわせて調理できます。

 続いて、職員乙(=データのエキスパート)に「はやぶさ」やイトカワの位置・姿勢データなどについて教えて貰います。これらのデータは、SPICEカーネルというファイルで提供されています。直訳すると、香辛料の種?

Q.おいしいですか?
A.一部の研究者にとっては、とてもおいしいみたいです。

それはさておき、
Spacecraft
Planet
Instrument
C-Matrix
Event
の頭文字をとって、SPICE。
探査機や惑星などのいろいろなデータの詰め合わせなのだそうです。

 「はやぶさ」と小惑星イトカワのランデブー中の位置・姿勢なども、このSPICEカーネルの一部として公開されていて、誰でもダウンロードして調理できます。

Q.簡単ですか?
A.一部の研究者にとっては、とても簡単みたいです。

 幸いな事に、職員乙は、その「一部の研究者」でした。早速サンプルプログラムを作ってもらいます。
「はやぶさ」とイトカワのモデルを、SPICEカーネルから取り出した位置・姿勢データに基づいてCGソフトで配置してみます。でも、これで正しいのかどうか、分かりません。

 「はやぶさ」に搭載されていた、AMICAという望遠カメラの画像がDARTSで公開されています。SPICEカーネルには、AMICAの取り付け位置などのデータも含まれていました。
そこで、CGソフトのカメラをAMICAと一致するように配置してみました。これで、「はやぶさ」やイトカワの位置・姿勢データが正しく読み込まれていれば、AMICAが撮影したのと同じイトカワの形が描かれるはずです。早速描画。ポチっとな。

 同じ形が描かれるようになったのは、数日後のことでした。
(人生、山あり谷あり♪)


 それからは、いろいろな日のデータを描いては眺めていました。すると、最初は安定して飛んでいた「はやぶさ」でしたが、ある時、突然姿勢が乱れたのが見えました。それは日本時間で2005年10月2日深夜、2つ目のリアクションホイールが壊れた瞬間でした。
当時のデータには、新しくアップロードされたプログラムで姿勢の乱れが抑えられて行く様子も記録されていました。

 残念ながらタッチダウンの付近のデータは誤差が大きすぎて映像にできませんでしたが、その少し手前までの映像が、10周年記念イベント用に出来上がりました。


 次はドーム映像の制作です。プラネタリウムなどの全天周スクリーン向けの映像です。ドーム映像を作るには、ドームマスターという形式が良く使われます。これには、メルマガ254号(もう4年も前ですね〜)でご紹介しました、科学映像クリエータ養成コースのノウハウが役に立ちました。


 11月19日のタッチダウン30分手前までは、他の工学データを使って位置誤差を抑えることができまして、ドームマスター版では、かの有名な「はやぶさ」の影も再現することができました。

10周年記念版では、影の位置が微妙にずれているらしい、というのは内緒です。(^^);

そして冒頭の、国際科学映像祭のお話につながります。


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「はやぶさ」の軌跡(ISAS/アウトリーチ用サイト内)
三浦(映像)、山本幸生(データ)、吉川真(監督)のチームで制作しました。

注意:小さなファイルでも100MB程度あります。モバイル環境でご利用の際は、ご注意ください。
新しいウィンドウが開きます http://www.isas.jaxa.jp/home/showcase/hayabusa/

国際科学映像祭ドームフェスタショートプログラムコンテスト審査結果
新しいウィンドウが開きます http://image.sci-fest.net/ja/contest-result.html

DARTS(Data ARchives and Transmission System)のサイトより
小惑星イトカワの形状モデル
新しいウィンドウが開きます http://darts.jaxa.jp/planet/project/hayabusa/shape_ja.pl

ISASメールマガジン254号
http://www.isas.jaxa.jp/j/mailmaga/backnumber/2009/back254.shtml

(三浦 昭、みうら・あきら)

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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※