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ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第214号

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ISASメールマガジン   第214号       【 発行日− 08.10.21 】
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★こんにちは、山本です。

 国際X線天文衛星ASTRO-H(旧称:NeXT)が、2008年10月1日より正式にプロジェクトとしてスタートしました。ISASのWebページも立ち上がっています。

詳しくは、
http://www.isas.jaxa.jp/j/enterp/missions/astro-h/index.shtml

プロジェクトサイトは、
新しいウィンドウが開きます http://astro-h.isas.jaxa.jp/

 今週は、宇宙科学共通基礎研究系の清水敏文(しみず・としふみ)さんです。

── INDEX──────────────────────────────
★01:「ひので」国際会議@ボルダーから
☆02:M-Vロケット実機展示完成!
☆03:今週のはやぶさ君
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★01:「ひので」国際会議@ボルダーから

 10月上旬に米国・ボルダーで開催された「ひので」に関する国際科学コンファレンス(会議)に参加してきました。「ひので」の科学成果を討議す る国際コンファレンスは昨年のアイルランド・ダブリンでの会議以来のものです。「ひので」観測への世界的な注目度は極めて高く、約200名の参加がありました。地元の米国はもちろんのこと、欧州各国の研究者や大学院生の参加が目だちました。日本からの参加者は、遠方での開催であったためわずか1割強でしたが、「ひので」を用いた研究・解析が世界的な規模で進めらていることを物語っています。

 昨年度は、「ひので」が高解像度の太陽画像や動画の観測を世界で初めて成功させ、今まで見たことがないダイナミックに変化する太陽表面のすがた に関する「発見」が相次ぎ、著名な科学雑誌である「サイエンス」誌が、12月8日号にて「ひので」が取得したX線太陽画像を表紙に使い、9編の科学論文を掲載し「ひので」特集号を組むなど、太陽研究のみならず広く天文学やプラズマ物理関連の研究で注目されました。また、NHKのサイエンスZeroが「ひので」に関する番組を組むなど、「ひので」の観測が一般の視聴者にとって「科学衛星による宇宙観測」に興味を持ってもらえる機会となったことは関係者としてうれしい限りです。

今回のコンファレンスには、サブタイトルが付けられていました。

 beyond discovery, toward understanding(発見の先、理解に向けて)

 「発見」は、科学研究のほんの初歩のステップでしかありません。「発見」の先に、観測によって観測的な特徴を定性的かつ定量的に掴み、そして、 理論的な検討も加え、「物理的に理解する」ことが出来て、その先に広がる未知の物理世界にさらに踏み入れることが許されます。今回のコンファレン スではサブタイトルが示すように、「ひので」や関連する観測の定量的な解析による太陽活動現象の特徴を掴む研究による成果が多数ありました。また、「ひので」の観測で捉えられた現象を3次元数値シミュレーションで再現させる研究も幾つかありました。例えば、「ひので」の可視光観測は、ダイナ ミックに変化する太陽黒点を、高解像度の動画でとらえました。これをコンピュータの中での計算で再現を試みたシミュレーションには感嘆しました。このように、「ひので」による観測結果を物理的に理解を深める骨太な研究の発表が多数あり、研究の順調な進展を感じた会議でした。

 さて、会議が開催されたボルダーは、米国のほぼ真ん中、コロラド州にある大学町です。今では、日本で良く知られた町の一つです。有森裕子さんや Qちゃんなど多くのマラソンランナーが高地トレーニングをする場所として。また、10年以上昔にワイドショーで連日話題に上がったジョンベネちゃん 事件の舞台となった場所でもあります。

 このボルダーという町は、私にとって忘れられない色々な思い出が詰まった場所です。なぜかというと、13年前に約1年間海外生活を過ごした場所だからです。1995年博士取得してすぐに1年間ポスドクとして、ボルダーにある米国大気研究センター(NCAR、エンカーと呼びます)で研究生活を送りました。初めての海外長期滞在であり、行く前は色々な不安がありましたが、滞在を始めてすぐに、米国にもこんなに素晴らしく住んで楽しい町があることを知りました。外国人に対して寛容で、ひどい英語に対しても熱心に理解をしようとしてくれる場面に多く遭遇して、米国や米国人に対する見方が大きく変わりました。また、研究に対する見方も色々あることを知りました。この経験から、若いうちに海外での研究生活を経験することは、その後の研究活動に非常に役に立つと信じています。

 今回の会議は「ひので」の会議ということで、「ひので」運用の中心メンバーの多くが日本を留守にしました。このようなときでも、「ひので」の観 測運用は毎日続けられています。数人の留守番部隊が相模原(宇宙研)に残り、毎日の衛星運用を切り盛りしてくれました。このような手薄な時には、 予想もしないことが運用では時には起きます。そのため、必ず海外にいても留守番部隊が中心メンバーと連絡を付けられるようにします。最近の海外出 張では、成田空港でレンタルした携帯電話を所持するようにしています。

 今回の出張では、ボルダーに到着した晩に早速携帯電話が鳴りました。
「ひので」運用を支援してくれている有川さんからの電話でした。

「台風15号が2日後に内之浦を直撃する予報が出ています。明日ロードする予定のオーピー(OP)を準備するために、直撃が予想される時間帯の内之浦の運用内容を相談したく...」

台風が接近する場合、暴風から地上受信アンテナを守るために、地上局での衛星運用が休止されることがあり得ます。運用休止の決定は台風接近の前日 あたりに判断が下されますが、衛星の観測運用への影響を最低限にするために、前もって対応策を準備して、衛星にコマンド(動作指令)を仕掛けてお く必要があるのです。その相談の電話でした。ちなみに、オーピーとは、地上との交信機会のない期間でも時間になるとコマンドが発行される衛星上にある仕組みで、時刻とコマンドの対応をリストにしたテーブルのようなものです。

海外にいても、衛星運用からは逃れられなあ...

(清水敏文、しみず・としふみ)

http://www.isas.jaxa.jp/j/enterp/missions/hinode/index.shtml

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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※