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ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第164号

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ISASメールマガジン   第164号       【 発行日− 07.11.06 】
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★こんにちは、山本です。

 今週は、「かぐや」・「はやぶさ」・「PLANET-C」・シンポジウムと多彩な内容になりました。

 いつもとは一味違ったシンポジウムのお知らせは、宇宙探査工学研究系の橋本樹明(はしもと・たつあき)さんに書いていただきました。

── INDEX──────────────────────────────
★01:東大〜JAXA学際理工学20周年記念「大学と宇宙科学」公開シンポジウムのお知らせ
☆02:「かぐや」LMAGマスト、LRSアンテナなどを展開
☆03:「はやぶさ」復路第1期軌道変換を完了!
☆04:「JAXAインタビュー」金星探査で惑星気象学の確立を
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★01:東大〜JAXA学際理工学20周年記念「大学と宇宙科学」公開シンポジウムのお知らせ

 このシンポジウムのご案内をすると、まず「学際理工学とは何ですか」と聞かれます。20周年なんだから、話は20年前に遡ります。JAXA宇宙科学研究本部の前身が文部科学省宇宙科学研究所であることは、このメルマガ読者の方のほとんどはご存じだと思いますが、そのまた前身は東京大学宇宙航空研究所(宇航研)でした。当時駒場にあった宇航研には、東大大学院の理学系、工学系の教員がいて、その研究室では東大大学院の学生達が研究をしており、そこはまさしく「東大の駒場キャンパス」でした。

 その後、宇宙理工学研究の進展によって、科学衛星やロケットを用いた観測事業が1つの大学の研究所である規模を越えるようなり、1981年に大学共同利用機関である宇宙科学研究所(宇宙研)として独立することになります。宇宙研は大学共同利用機関ですから、全国の大学の教員、学生はそこを利用することが可能であり、JAXAとなった今日に至るまで、大学とともに宇宙理工学の研究をすすめ、その発展に貢献してきました。

 それでは、学際理工学と大学共同利用機関は何が違うのでしょうか。
答えは、同じと言えば同じですし、違うと言えば違います。具体例を示さないとわかりづらいと思いますので、興味がある方は、ぜひシンポジウムを聴きに来てください。でも、何が何だかわからないと、シンポジウムに来る気にもならないと思いますので、簡単に説明したいと思います。

 現在、宇宙研(JAXA宇宙科学研究本部)で大学院研究をしたい場合、主に4つの方法があります。ISASメールマガジン第161号で後藤先生が総合研究大学院大学(総研大)教員の立場で説明していますが、私は東大学際講座の教員として解説します。

 1つ目は、宇宙のことについて研究している大学院の研究室に進学し、その研究室の教員の指導を受けながら、宇宙研を「利用」して研究する方法です。この場合、「特別共同利用研究員」の手続きをすることになりますが、講義は所属大学院で受け、所属大学院から修士あるいは博士の学位を受けます。(もちろん、しっかりと勉学に励まないと単位も学位も得られませんが!)実際の実験やデータ解析を行う場所として、宇宙研の研究室に長期に滞在することもあり、大学に行くより宇宙研の相模原(または筑波)キャンパスにいる時間の方が長い人もいます。実質的には「宇宙研の大学院生」なのですけど、本籍はあくまで所属大学院なのです。

 2つ目の方法は、宇宙研全体が(厳密には、下記の東大学際講座に入っている教員は含まれません)参画している総研大の物理科学研究科宇宙科学専攻に進学することです。宇宙科学専攻の教員は宇宙研の職員であり、研究室は相模原または筑波にあり、講義は相模原で行われます。正真正銘の「宇宙研の大学院生」です。

 3つ目の方法が、今回話題の、「東京大学大学院学際講座」です。宇宙研には、東大大学院を併任している教員がいます。理学系の物理学専攻、天文学専攻、地球惑星科学専攻、化学専攻と工学系の航空宇宙工学専攻、電子工学専攻、マテリアル工学専攻、化学システム工学専攻の8専攻に28名(2007年11月現在)の教員がいて、その研究室に配属になれば、所属大学は東大大学院でありながら、研究室は相模原ということになります。つまり宇宙研は、「東大の相模原キャンパス」でもあるのです。この場合、本籍は1つ目の場合と同様、東大大学院となるので、学位は東大大学院から受けることになるのですが、指導教員は東大の教員であると同時に宇宙研の職員でもあります。講義や演習は、相模原で行われることもあります。

 4つ目は、宇宙研に限らずJAXAの全ての組織で可能な制度で、連携大学院制度というものがあります。JAXAと各大学院が協定を締結した上で、JAXA職員が当該大学院の客員教員となり研究指導を行うもので、2007年4月現在で21の大学・大学院と協定が結ばれています。協定の内容によって異なるようですが、JAXA職員が実質的には研究指導しつつも、客員の立場なので、当該大学院側にも指導教員がつくようです。

 ここまで説明すると、余計わからなくなったかも知れません。要は、「東大学際講座」は、宇航研時代の流れを受けて、東大大学院のいくつかの研究室が相模原にもある、という状態なのです。ではこの制度、どういうメリットがあるのでしょうか。それが今回の記念シンポジウムのメインテーマなので、続きは11月26日に本郷キャンパスの安田講堂に来ていただきたいのですが、以下、私の考えを述べたいと思います。

 宇宙開発プロジェクトとして必要な研究テーマが明確であり、その研究をしている教員がわかっている場合には、上記4つのケースどれでも有効な連携ができるでしょう。しかしながら、宇宙開発の中で問題に直面するとき、必要な研究をやっている人がどこにいるかわからない、あるいは誰もやっていない新しい研究テーマもあります。また逆に、大学で行っている研究テーマが宇宙にどう使われるのか思いつかなければ、その成果が宇宙に応用されることはありません。学会活動などを通じて、JAXA担当者と大学の研究者がうまく出会うことができれば良いのですが、そうでない場合はどうするか。

 その一つの答えが、JAXA担当者=大学の教員である場合です。総研大と東大学際講座がこれにあたります。総研大の場合は宇宙研に閉じているのに対して、学際講座は、まさに「際」であって、東大側は必ずしも宇宙のことを主に研究している専攻ではありません。私の所属する電子工学専攻では、宇宙研の4名以外で宇宙分野の研究を主としている教員はいません。しかし、電気・電子工学の技術でつながっているのです。学際講座の意義は、研究開発だけではありません。そこで育った人材が、宇宙開発分野で活躍することもあります。シンポジウムにビデオレターで出演予定の土井隆雄宇宙飛行士も、東大学際講座(正確には、移行期なので、その前身)の卒業生です。

 では、安田講堂でお会いしましょう。
詳しくは、
新しいウィンドウが開きます http://www.s.u-tokyo.ac.jp/event/UT-JAXA/pc.html
をご覧下さい。

(シンポジウム実行委員:橋本樹明、はしもと・たつあき)


東大〜JAXA学際理工学20周年記念公開シンポジウム「大学と宇宙科学」

【日にち】2007年11月26日(月)
【時 間】9時30分〜17時30分(開場9時00分)
【場 所】東京大学本郷キャンパス 安田講堂
     (東京都文京区本郷7-3-1)

詳しくは
http://www.isas.jaxa.jp/j/topics/event/2007/1126_ut-jaxa.shtml

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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※