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ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第28号

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ISASメールマガジン   第028号        【 発行日− 05.03.15】
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★ こんにちは、山本です。
 花粉の飛散量が多くなり、ISASでも立体マスクの人が増えました。
玄関ホールですれ違ったマスクのKさんが大事そうに買い物袋を持っているので、「お弁当を買ってきたの?」と尋ねたら、「保湿ティッシュとマスクですよ。必需品ですから」と返事が返ってきました。
 今週は、宇宙輸送工学研究系の安部隆士(あべ・たかし)さんです。

―― INDEX――――――――――――――――――――――――――――――
★01:大気球を使った飛行実験〜チームでの研究開発〜
☆02:「はやぶさ」遠日点通過!
☆03:宇宙科学講演と映画の会のお知らせ
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★01:大気球を使った飛行実験〜チームでの研究開発〜

 多少旧聞になりますが、昨年9月大気球を使った実験をしました。これは、ある機体を大気球で高々度まで持ち上げ、そこから落下させて飛行実験をしたものです。高々度と言っても40キロメートルぐらいですが、航空機が航行する高度約10キロメートルと比較すると大分高いことになり、飛行速度はマッハ数約1程度までなります。機体は、特殊な布地でコーン型をつくり、その裾には金属リング、頭頂部には金属製の鍋様の観測機器容器をつけたものです。一見するとこんなものが飛行するのかと言った代物ですが、空気力学的には立派に飛ぶ。しかも、金属製の鍋様の観測機器容器だけの空気抵抗に比べて、格段に抵抗を大きくすることが可能となり、効果的な減速手段となるため大変いいことがあります。付加するのは構造物の布状のものと、金属性の軽量リングなので、全体的な重量増も極力抑えられることをねらったものです。

 実は、この実験は、学生を主体として実行したもので、学生諸君にもよい勉強の場になったと密かに自負しているものです。といいますのも、この程度の実験でも、本格的な飛行実験と同様のさまざまな要素が含まれていて、この実験を通じて、それらを多少なりとも感じとれたハズだからです。実際のところ、参加した学生は、私のところの学生を含めて皆気体力学を専門としていますが、このような実験を行うには、気体力学を知っているだけでは、話になりません。例えば、機体の姿勢などのデータを計測しようとすると、姿勢センサーが必要となるし、もちろん、それを働かせる電気回路も必要になります。また、機体が飛行中のデータを無線で伝送して地上で取得するには、テレメトリの知識がないといけません。だいたい、大型気球でこの「へんてこ」な機体をつり下げるには、それなりの乗り物を作製する必要があるのです。このためには、構造物に対する知識も必要となります。

 結果的にみますと、約10名ほどの大学院学生が約半年の準備で立派に実験を行い、飛行データも取れ、解析して成果をまとめました。最初の頃こそ、いかにも自信なさげで、「ちぐはぐ」だった学生チームもこの過程で自信を得て、最後には立派な開発チームになっていたと思います。わずか半年の間でここまで成長するとは、予想していなかったので、想定外の成果といえます。

 飛行実験時には、機体に搭載したカメラで上向きの画像が地上に伝送されており、リアルタイムで観測することができました。40キロの上空では、ぎらぎらの太陽、そして、落下して雲の層を超える様子など、学生たちも興奮の面持ちでした。

 大学院での研究指導はどうしても、個人個人の研究テーマについての指導になりますが、このような研究チームとして研究開発を進めていくようなスタイルも捨てがたいものがあります。

http://www.isas.jaxa.jp/j/snews/2004/0909.shtml
http://www.isas.jaxa.jp/j/snews/2004/0913.shtml

(安部隆士、あべ・たかし)


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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※