開発・運用状況 | 小型月着陸実証機 SLIM | ISAS/JAXA

SLIM
開発・運用の状況

日没に伴う再休眠

SLIMは月面での３回目の夜に入ったことに伴い活動を休止しました。着陸後、ここまでに撮影した航法カメラ撮影画像（圧縮・非圧縮）を重ねてみました。画角は一定で南を向いています。SLIMは南から進入してきていることから、写真奥の稜線（約30kmの距離）の上空を飛び越えて着陸したと推定しています。

日照に伴う活動再開

月面での2回の夜を越え、高温になる昼を経て、この日、SLIMとの通信を再度確立しました。仕様外の過酷な温度環境によってバッテリや一部温度センサが不調になり始めていることを確認しました。なお、バッテリは着陸後に電気的に切り離していますので、運用そのものには影響が出ないようになっています。

日没に伴う再休眠

この日、SLIMがいる「しおり」クレーター周辺は日没を迎えました。太陽電池の発電で活動しているSLIMは日没後は電力が得られなくなるため、再び休眠に入りました。

日照に伴う活動再開

月の14日間の夜を経て、夜が明け真昼を過ぎ、太陽電池が向いている西に太陽が傾き始めたタイミングでSLIMは活動を再開しました。夜間の低温と昼間の高温という、設計範囲を超えた非常に厳しい温度環境のため、SLIM機能喪失も懸念されましたが、無事に電波の送受に成功しています。写真をクリックするとそのときの管制室の様子を表示します。

日没に伴う活動休止

月面上の世界では14日間続く昼と引き続く14日間の夜が交互に訪れます。日没直前のこの日、改めて周囲の風景を撮影しました。着陸直後と比較すると太陽光線が当たらない暗い領域が拡がっています。日没に伴い、活動に必要な電力が得られなくなるため、SLIMは休眠に入りました。なお、着陸後の観測運用を含めて、ここまでの一連の電源系の動作は正常でした。
また、日没直前の月面画像は非圧縮です。

月面観測運用

SLIMが着陸した姿勢では太陽電池が西を向いていたため、着陸直後に一旦電源をオフしました。その後、太陽電池に日光が当たるのを待って月面での観測運用を本格的に開始しました。写真は分光カメラ(MBC)による科学観測の一例です。着陸直後の周辺撮像で識別された観測候補のうち、「トイプードル」と名付けた対象を10バンドで撮影しました。
著作権：JAXA/立命館大学/会津大学

着陸降下運用

SLIMは日本標準時間2024/1/20午前0時頃、高度約15km、目標地点から800km程度手前の地点で着陸に向けたメインエンジンの逆噴射を開始し、約20分後、高度約50mの段階で4m以下程度の精度で目標地点上空に差し掛かりました。その後、障害物回避をしつつ着陸をする予定でしたがオンボードで異常を検知したため、SLIMは自律的な判断に基づき東の方向に流れていく機体の水平位置の維持に努めながら降下を継続、最終的に目標地点から東に55m程度離れた地点で接地しました。
【注】「ギャラリー」ページもご覧下さい。

2023.12.25

月周回軌道投入（動画）

SLIMは月表側の北極付近、高度約600kmの場所（上記撮影写真参照）でメインエンジンを逆噴射し、月周回軌道に入りました。上の画像をクリックするとこの運用のテレメ画面を8倍速で見ることができます。

最遠点通過

SLIMは月に入る前に一旦地球から離れます。この日、SLIMと地上局の距離は138万km。軌道の最遠点を通過しました。このタイミング前後で通信系健全性確認を実施しています。

月スイングバイ

SLIMでは一旦、月の近くを通過し、その際に月の重力を利用した軌道変換（スイングバイ）を行い、宇宙空間を航行してから月周回軌道に入ることで推進薬の節約をします。写真は月の近くを通過する際に搭載カメラで撮影した月面の様子です。

月遷移軌道投入

ロケットで打ち上げられたときは、地球周回の楕円軌道を航行していたSLIMは徐々に軌道高度を上げながら、この日、メインエンジンを約39秒噴射して月に向かう軌道に入りました。

2023.09.22

航法カメラチェックアウト（動画）

SLIMの着陸時に使用する航法カメラの動作確認をしました。上記はその際の取得画像例です。画像をクリックするとこの運用を実施したときの探査機動作実績アニメーションが流れます。スピン姿勢からスピンを止めて、姿勢制御をしている様子がわかります。

ロケットから分離された後、宇宙に飛び立った衛星・探査機と最初に交信する運用を第1可視と呼びます。SLIM第1可視時のJAXA相模原キャンパスSLIM管制エリアの様子です。JAXAマスパロマス局を使ってSLIMと通信しました。

飛翔実験計画書リリース

SLIM軌道上運用は宇宙空間を使った大規模な実験です。その計画書を関係者向けにリリースしました。表紙は学習帳をリスペクトしました。

XRISM/SLIM打ち上げ

SLIMは、HII-Aロケット47号機にて、2023年9月7日8時42分11秒（日本標準時）にXRISMと相乗りで打ち上げられました。

ロケット機体移動

打上に向けてロケットが射点に移動しました。XRISMがフェアリングの上側で、SLIMは下部フェアリングの中にこぢんまりと納まっています。

射点への移動

H-IIAロケット下部フェアリングに収缶されたSLIMは、ロケットが待っている射点近くのVABと呼ばれる大きな建物（写真左奥）に運ばれました。

フェアリングへの収缶

SLIMはH-IIAロケット下部フェアリングに収缶されました。写真はフェアリング収缶直前のSLIMです。

ロケットへの引き渡し

推薬充填後の加圧作業、ノンフライト品外し作業や審査会を経て、SLIMをロケットに引き渡しました。

SLIMに推進薬（燃料・酸化剤）を充填しました。

射場に運び込まれたSLIMが正常に動作し、機能に異常がないことを確認しました。

種子島宇宙センターにSLIMが搬入されました。種子島の島間港から上記のトラックで運ばれてきました。運搬中の温度・湿度・加速度環境は正常でした。

三菱電機鎌倉製作所

システム機能試験（熱真空試験）

組み立てられた状態のSLIM全体を真空チャンバ内に入れた上で熱環境を加えて、熱設計・熱艤装に問題ないことを確認しました。

三菱電機鎌倉製作所

システム機能試験（音響試験）

SLIM全体が組み立てられた状態でロケット打上時の環境を模擬した音響を加えて、異常が生じないことを確認しました。

三菱電機鎌倉製作所

システム機能試験（正弦波振動試験）

SLIM全体が組み立てられた状態で正弦波振動を加えて、異常が生じないことを確認しました。

三菱電機鎌倉製作所

システム機能試験（PAFフィットチェック）

ロケットと正常に結合できることを確認しました。

システム機能試験（最終電気試験）

電気機能的な妥当性を検証しました。この後、SLIMは三菱電機鎌倉製作所にて残りの試験を実施、その後、射場に輸送されることになります。

システム機能試験（着陸シーケンス模擬）

着陸シーケンスの健全性を確認しました。画像照合航法をするタイミングでは想定する地形を印刷したタペストリーを搭載カメラが撮影しています。

システム機能試験（航法カメラ試験）

航法カメラに月面画像のタペストリーを次々に見せることでSLIMが正常に月面上空を移動していると判断することを確認しました。

システム機能試験（LRF単体試験）

着陸直前に高度を計測するレーザ測距センサの性能・動作を試験を実施しました。

太陽電池発電特性試験

太陽電池にあたる太陽光線が急激に変動したときの発生電力の変化特性を確認しました。

衝撃吸収材　電子照射試験

衝撃吸収材に有害な帯電や放電が生じないことを確認しました。

NASA DSN局とのRF適合性試験

重要な運用で使用するNASA DSN局との通信の適合性を確認しました。

小型プローブ分離試験（動画）

SLIM着陸直前に分離予定の小型プローブ(LEV)の分離試験を実施しました。

臼田64m局とのRF適合性試験

使用する地上局との通信の適合性を確認しました。地上局は軌道上にある各衛星・探査機と通信をしており、その「すきま時間」を使って試験をしました。

SLIMを打ち上げる射場である種子島宇宙センターの現地調査を実施しました。

航法カメラAT試験

航法カメラ実機の健全性確認試験を実施しました。写真は温度耐性を確認しているときの様子です。

衝撃吸収材洗浄試験

アルミ製の衝撃吸収材は３Dプリンタで製造しているため、気を付けないと細かい金属破片が出てくる可能性があります。十分な洗浄をして、その懸念がなくなることを確認しました。

SAP温度試験

太陽電池パネルの温度サイクル耐性を確認しました。

衝撃吸収機構の実機大落下試験

SLIM実物大の構造試験モデルに衝撃吸収材を取り付けた状態で落下させ、意図通りの挙動となることを確認しました。

バッテリ組立AT試験

実機搭載バッテリの健全性確認試験を実施しました。写真は温度耐性を確認しているときの様子です。

ダイヤフラム素材クリープ試験

SLIMタンクに使用するダイアフラムが、想定される長期的な荷重に対して十分な性能を有することを確認しました。

画像航法支援系試験

SLIMは着陸降下時に月面を撮影して自分の位置をチェックします。基本的にはSLIM自身で画像認識しますが、念のために地上から画像処理を支援する仕組みも用意しています。

バッテリ単体機械環境試験

バッテリのロケット機械環境耐性を試験しました。軽量化のためバッテリパッケージはラミネートのため、変形する可能性があり、バッテリ全体を真空引きした容器に入れて、容器ごと加振しました。

航法カメラ用センサ素子試験

航法カメラに使用する受光センサ素子がSLIMの軌道上環境に耐えられることを確認しました。

バッテリ保持部クリープ試験

SLIMバッテリはラミネートタイプで通常の宇宙用バッテリよりも軽量ですが大きく変形します。そのため保持構造にも工夫が必要です。保持する材料が時間と共に有害な変形しないか確認しました。

通信系追従試験

打上後の通信ではSLIM姿勢変動で通信強度が変動したり、地球方向を向いているアンテナが切り替わったりします。こういったことがあっても通信に問題ないことを確認しました。

スロッシング特性取得試験

SLIM推進系タンク内には多くの液体推進薬が入っています。推進薬がどのように揺動するのか、その特性を取得しました。

推薬弁サージ圧試験

推進系についている推薬弁を開閉したときに有害な圧力波が配管内部に伝播しないことを確認しました。この試験はJAXA研究開発部門2Uの推進系グループ（筑波）主体で実施されています。

2019.12.04

ダイアフラム旋回腕試験（動画）

推進系タンク内の樹脂膜であるダイアフラムがロケット打上荷重に耐えられることを確認しました。

IHIエアロスペース相生試験場

システム燃焼試験（動画）

実機と同等設計の推進系全系を組み上げて燃焼試験を実施しました。

SLIM搭載機器同士が相手の電磁ノイズで誤動作しないことを確認しました。

着陸レーダ機能試験

着陸前に月面との相対関係を計測する着陸レーダの機能・動作を確認しました。

SAP超高速衝突試験

太陽電池に小球を高速衝突させて、それでも機能喪失しないことを確認しました。

慣性航法センサ振動試験

慣性航法センサの設計検証の一環として、振動耐性を確認しました。

ダイヤフラム動作試験

ダイヤフラムはSLIMタンク内で液体推進薬と押しガスを隔てています。液体推進薬（燃料と酸化剤）のうち、酸化剤にも使えるダイヤフラムを試作して動作を検証しました。

サブスケール落下試験

SLIMのスケールモデルの落下試験を実施しました。

単体落下試験

衝撃吸収材の落下試験を実施しました。

タンクダイアフラム試験

推進系タンクで液体推進薬を保持するダイアフラムの機能試験を実施しました。

スラスタプルーム解析（動画）

SLIM着陸直前、エンジンからの噴射ガスが月面の影響をどのように受けるか、長期に亘って継続的に検討しました。本解析はJAXA研開本部3U (JEDI)主体で実施されました。

MHI諫早工場

OME地上燃焼試験（動画）

メインエンジン(OME)の地上燃焼試験を実施しました。連続燃焼試験（上記写真）に加えて間欠的に噴射するパルス燃焼試験（クリックして現れる動画）も実施しています。

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