Next: 固有時間
Up: 特殊相対性理論
Previous: 超光速運動(super-luminal motion)
Contents
これまでに、3次元の直交変換が、天球座標の間の変換や人工衛星の姿勢に応用されることを
学んだ。さらに1次元を加えて4次元時空を考えると、同様の直交変換が、
特殊相対性理論にも使えることを見てみよう。
4次元空間における直交変換を考える。あるベクトルを元の基底で表したときの成分が
、
新しい基底ベクトルで表わしたときの成分を
とする。
ベクトルの長さは不変なので、
 |
(114) |
である。変換行列を
と書くと、3次元のとき(34,
36)と全く同じように、
 |
(115) |
 |
(116) |
が成立する。ここで、2.5節で述べたように、
同じ添字については1から4までの和を取る。
を空間座標成分、
を時間とする。
ある事象をある座標系
で表わした「世界点」の座標を
する。
下図のように、時刻
で原点が
と一致し、
と相対的に速度
で移動している座標系
を考え、その事象を
で表わした座標を
とする。
を光速として、
としよう (
が形式的に「虚時間」に対応していることに注意
)。
このとき、式(114)は、
 |
(117) |
となり、これは相対的に等速運動をしている二つの座標系において、
で定義される「世界間隔」が不変量であることを示している。
式(116)で表わされる
と
の間の変換がローレンツ変換で、
式(114)で表わされるのがローレンツ不変量である。
一般に、式(114)で示されるように「長さ」が不変で、
式(116)のローレンツ変換に従うベクトルを
四元ベクトルと呼ぶ。
特に、時刻
で両系の原点を出発した光を考える。光の波面は球面上に拡がっていくわけだが、
時刻
,
における波面上の座標はそれぞれの系で、
で、
式(117)は、
 |
(118) |
 |
(119) |
を意味している。
つまり、
系と
系がどのような相対速度で動いていようとも、
どちらの系から見ても、光速は
である、という
光速度一定の原理が得られた。
具体的な例を見てみよう。
下図のように、
系の
軸(
軸)のプラス方向に、
系が速度
で
動いている場合を考える。
この場合のローレンツ変換は以下の通りである。
 |
(120) |
 |
(121) |
ここで、
 |
(122) |
は光速である。この変換行列が、直交条件、(115)を
満たしていること、転置行列が逆行列になっていること
を確認しておこう。
式(120),(121)より、
 |
(123) |
 |
(124) |
である。
系の原点は
、
系の原点は
であるが、これらを代入すると、
 |
(125) |
 |
(126) |
が得られる。
(125)は、
系の原点を
系で表わしたときの関係式、
(126)は、
系の原点を
系で表わしたときの関係式で、
どちらも自明である。
3次元の直交変換は、座標系の間の空間回転を表わすのであった。同様に、
4次元の直交変換も、仮想的な回転で表すことができる。式、(120)
を以下のように書こう。
 |
(127) |
からわかるように、ここで導入した角度
は
仮想的なものであるが、ローレンツ変換を仮想的な座標軸の回転と考えても、以下で示すように、
正しい結果が得られる。
系で、
軸に沿った、長さ
の棒を考えよう。
系から見ると、
この棒は
方向に、速度
で走っていることになる。
でこの棒の長さを測るときには、
当然同時刻で測るから、それは、
軸に沿った長さ
になる。
図から、
 |
(128) |
だから、
 |
(129) |
よって、走っている棒は短く見える( ローレンツ収縮)。次に、
系に
固定した点における経過時間
を考える。これを
系で測った時間
は、
軸に
沿って、
 |
(130) |
となる。つまり、動いている時計はゆっくり進んでいるようにみえる
。
では、
系から
系を見たときはどうなるのであろうか?
特殊相対性原理によって、互いに等速運動をしている系から、すべての
物理法則は、全く同じに見えなくてはいけない。
上図からわかるように、
系の
軸に沿った棒の長さ
を
系で測定したときの長さ
は、
 |
(131) |
となる。また、
系に固定された点が
の時間経過するとき、
系における
時間
は、
 |
(132) |
である。
式(129)と
(131)、
(130)と(132)をそれぞれ比較することにより、
から
を見ても
から
を見ても、まったく同じように見えることがわかる。
Next: 固有時間
Up: 特殊相対性理論
Previous: 超光速運動(super-luminal motion)
Contents
Ken EBISAWA
2011-05-30