日本初の衛星「おおすみ」が33歳で大気圏突入
8月2日午前5時45分(日本標準時),日本最初の人工衛星「おおすみ」が大気圏に突入し,消滅しました。再突入した位置の直下は,北緯30.3度,東経25.0度で,北アフリカ(エジプトとリビアの国境の砂漠地帯)です。
内之浦の鹿児島宇宙空間観測所から,L-4Sの5号機によって日本初の衛星「おおすみ」(24kg)が地球周回軌道に投入されたのは,1970年2月11日13時25分でした。1955年のペンシル以来の日本のロケット技術が,ついに地球の空へ国産の衛星を運んだのでした。これはソ連・アメリカ・フランスに次ぐ世界で4番目の衛星自立打上げでした。もともと衛星軌道への投入のためのロケットの練習でしたから,「おおすみ」に搭載した機器は,加速度計,温度計,送信機ぐらいで,他には電源の酸化銀―亜鉛電池が載せられていました。打上げ後に内之浦の視界から消え,最初にグアム島の追跡局から「おおすみ」の電波を「受信!」の報が入った時の感動は,忘れることのできないものです。
「おおすみ」が地上と連絡をとっていた時間は14〜15時間だったのですが,投入された軌道が,近地点337km,遠地点5,151kmという長楕円軌道だったために,かなり長生きしたものです。もちろん大気圏に突入した「おおすみ」は,跡形もなく消滅して,自らを葬りました。
私個人にとっても青春の喜びの頂点に位置する「おおすみ」の誕生は,多くの関係者にとっても「宝の思い出」でもあります。あのころの湧き上がるような団結の力を,日本の宇宙開発が再び取り戻すことができる日を願って,10月1日の宇宙航空研究開発機構(JAXA)の誕生を迎えたいと思います。
(的川泰宣)