No.183
1996.6


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MUSES-B振動試験から熱真空環境試験へ

 昨年11月より始まった第16号科学衛星(工学実験衛星)MUSES-Bの総合試験の一環として,3月28日から4月6日まで振動・衝撃試験が,宇宙研の環境試験棟で行われました。振動・衝撃試験は,10日程度ですが,試験のための準備作業は3月6日から始まりました。アンテナ部と衛星本体が結合され,打ち上げ時の姿を総合試験では初めて現しました。振動試験は,衛星が打ち上げ時のロケットのゆれに耐えられるかどうかを試験するために行います。横振動(2方向),縦振動を,M-Vロケットで予想される大きさで振動をかけました。見た目は細かく振れているだけですが,非常に大きな音が試験室に鳴り響きました。従来のロケットと比較すると,ロケットの打ち上げ能力が高まったために振動が大きく,口径約8Eのパラボラアンテナを作るための伸展マストが飛び出さないか,衛星の外側に付いている太陽電池パドルやKuバンド用のリンクアンテナは破損しないかなど,心配な箇所はいくつもありましたが,衛星に大きなダメージは与えずに試験は終了しました。その後,リンクアンテナや太陽電池パドルの展開試験,ロケットとのインターフェース試験,伸展マストの(微小)伸展試験等を経て,アンテナ部は再分離され,工場に戻り,最終調整に入っています。また,衛星本体は5月上旬より6月上旬からの熱真空環境試験の準備作業を行っています。

(村田泰宏)

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PLANET-B JWG

 PLANET-Bは1998年に火星に向けて打ち上げられる予定の宇宙科学研究所の18番目の科学衛星です。この衛星には14種類の観測機器が搭載されますが,その中の5つの機器は海外との協力により開発されています。協力国は,米国・カナダ・ドイツ・スウェーデン・フランスです。5月13日より3日間に渡り,フランスを除く4ヶ国と日本の関係者が宇宙研に集まりJWG(合同会議)が開催されました。今年度末から始まる搭載モデルの地上試験に向けての設計仕様の最終確認と地上支援系仕様の議論,科学観測の検討が主なる議題でした。国内外からの約60名の参加の元に活発な議論が展開されました。特に科学観測の検討では多くの観測提案がなされ,衛星計画に対す る期待と情熱が感じられる会議となりました。中日の夕刻には宇宙研カフェテリアでささやかなパーティーも持たれ,関係者間の国際的な親睦を深める事が出来ました。PLANET-Bは1998年打ち上げに向けて今年度末より地上試験が始まります。同時期には欧米諸国でも火星探査衛星計画が実施される予定です。PLANET-B計画は衛星規模としては小さいながらも,搭載機器関係者の努力によりその内容は決して見劣りするものではありません。日本も国際協同の中で惑星探査に参加する訳で、今後の国際協力の推進・国際舞台での活躍が期待されます。

(山本達人)

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宇宙研ビデオ
 「ブラックホールをさぐる」第9回日本産業文化映像祭第2位,
 「私たちの太陽系」文部省選定となる

 宇宙科学研究所では教育と啓蒙を目的としたビデオを平成3年度から作成して参りました。このたびその第4巻「ブラックホールをさぐる」が第9回日本産業文化映像祭にて,教育部門第2位となりました。表彰式は5月17日(金)に行われ賞状が授与されました。  日本産業文化映像祭は,(財)経済広報センター及び(社)経済団体連合会が,我が国の産業活動に対する国外理解を促進するために映像祭を毎年開催しているものです。今年度の応募総数は141件,その中からの受賞で,宇宙研にとっては大変喜ばしいことです。なお,これまで,第2巻「母なる太陽」はTEPIAハイテクコンクール優秀作品賞,第3巻「オーロラのふるさと」は経団連会長賞に選ばれています。  また平成7年度制作第5巻「私たちの太陽系」が文部省選定となりました。この選定を受けたことによって宇宙研の目指している教育と啓蒙を目的としたビデオ制作が認められたと思います。

(佐々木英俊)

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ISOの第一回成果報告会

 昨年11月に打ち上げられた宇宙赤外線天文台ISOは,衛星,観測器ともに正常に働いており興味深い観測を出し続けている。初期の2ヵ月ばかりの試験観測に続いて,現在は世界中の研究者から提案された観測プログラムを順調に消化している。5月末には3日間にわたってオランダにある欧州宇宙技術センター(ESTEC)において第一回の成果報告会が行われた。会議には,ISOの開発担当者,衛星・観測の運用担当者やISOを使って観測した研究者など,世界中からおよそ260名が集まり,口頭,ポスターを含めて120編以上にのぼる観測が次々と発表されて会場は興奮と熱気に包まれた。

 ISOは,サーベイ観測を中心としたIRASとは異なり,汎用多機能の赤外線衛星で観測は多岐にわたっている。例えば赤外線カメラを使った観測では衝突銀河の中で活発な星形成が行われている模様を示す映像や超新星残骸の中の宇宙塵の分布図などが観測された。また,ISOは本格的な分光器を積んだ初めての赤外線衛星であるが,木星や土星の大気の中に,PH3,NH3或いは重水素分子(HD)等の吸収を発見したり,星,星間電離雲,星間分子雲,さらには様々な銀河の中に,多数の原子,分子の出すスペクトル線を続々と発見している。特に,大気中の水蒸気のために地上からは観測できなかった水(H20)のスペクトル線が広い波長帯で数多く見つかった。その他,今まで検出が難しかった水素分子のスペグトル線の観測が可能になったため従来はCO電波の観測などから間接的にしか推定できなかった宇宙における水素分子の存在を直接見ることが出来るようになった。また,IRTSの観測でも見つかった有機物質の宇宙塵から放射されていると考えられているスペクトルバンドが様々な天体から出ているという観測も相次いで報告された。

 日本の研究者から提案された観測も次々と行われている。例えば,進化の末期にある星の周りに宇宙塵のリングを見つけた。これはこの星が息をつぐように間欠的にガス放出を行っていることの証拠である。筆者らが地上観測によって見つけた赤外線の五つ子星の分光観測を行った結果,そこに今まで知られていなかった二酸化炭素(CO2)の氷(ドライアイス)の吸収線を見つけたりもしている。

 これらの報告はまだまだ予備的なものであり,ここで紹介したものはほんの一部にすぎない。それでも,ISOが赤外線天文学研究の新しいぺ一ジを確実に開き,天文学研究に新たな展開をもたらすであろうことは会議の出席者全員の共通の思いであった。

(奥田治之)

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