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はやぶさ近況 近赤外線分光器で見た小惑星イトカワ


「はやぶさ」

 探査機「はやぶさ」が小惑星イトカワに滞在中に,ホームページなどで公開された取得画像は,皆さんの注目を集めました。その理由は,画像というのは人間の感覚になじみやすく,また対象を直感的に把握することのできるものだからです。しかし,我々は画像の情報だけでは満足できず,画像に映っているものが何でできているのか,表面の状態はどうなっているのかを,さらに詳しく知りたくなります。

 そのために,「はやぶさ」には近赤外線の分光器が搭載されていました。Near InfraRed Spectrometerを略してNIRS(ニルス)と呼ばれています。NIRSでは,具体的には0.8ミクロンから2.0ミクロンの波長を約24ナノメートルごとの波長の光に分けて小惑星からの光の強さの違いを調べました。図は,装置が測定した観測結果の一例です。横軸が波長,縦軸が波長ごとの光の強さ(スペクトル)です。ただし,縦軸は波長ごとの太陽の光の強さを考慮して補正してあるので,具体的には小惑星イトカワの反射率のスペクトルになっています。この図からまず分かることは,1ミクロン付近と2ミクロン付近に反射率の低下があることです。これはイトカワの表面物質を構成する鉱物にかんらん石と輝石が含まれていることを示しています。スペクトルを詳しく調べることにより,さらに,かんらん石と輝石の含まれている割合や,表面の粒子サイズ,表面の変成の程度などを知ることもできるので,現在結果を詳細に検討しているところです。これらの情報は,小惑星イトカワがどのような環境で形成され,また形成された後どのような変化を受けたのかを考える上で重要な情報になります。NIRSは,イトカワ滞在中に8万点以上のスペクトルの取得に成功しています。

探査機「はやぶさ」に搭載された近赤外線分光器のスペクトルの一例。1ミクロン付近と2ミクロン付近の反射率の低下は,イトカワの表面にかんらん石や輝石が存在することを示している。

(安部 正真) 


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ISASニュース No.299 (無断転載不可)