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カーナビ用から転用した宇宙用超小型GPS受信機
「れいめい」の新技術


 今回は,「れいめい」のために開発された,超小型GPS受信機をご紹介します。

 衛星用のGPS受信機は従来からありましたが,重量が10kg以上,価格は1億円に手が届きそうなものでした。一方では,カーナビ用のGPS受信機は重量数十g,サイズは2×4cm程度,価格は数万円程度です。カーナビ用GPS受信機を衛星に搭載すると,どうでしょうか? 残念ながら,それでは動作しません。衛星の軌道運動による毎秒約7kmという速度のために,ドップラー効果によって受信GPS信号の電波の周波数が大きくずれてしまうからです。

 そこで私たちの研究室では,軌道上でのドップラー周波数を統計的に計算して,受信機がGPS電波を探す周波数範囲を広げるようソフトウェアを一部変更してくれないかと,カーナビメーカーに頭を下げてお願いしました。改修後のGPS受信機は宇宙研で引き取って,研究室の学生とGPSシミュレーターを用いた試験を精力的に実施しました。放射線にも堅固であることが放射線照射試験で判明し,トータルドーズ耐性20krad,200MeVプロトンに対してSEL(シングルイベントラッチアップ:放射線の影響で回路に過大電流が流れて永久損傷になる可能性がある障害)は起きません。こうして「れいめい」の超小型GPS受信機は完成し,現在では軌道上から毎秒ごとの衛星位置を知らせてくれています。軌道上での試験データでは,測位位置のランダム雑音は0.5m程度です(地上試験からは絶対精度は10m程度だが,GPS測位よりも精度の高い位置決定方法はないので軌道上では確認はできない)。

 今では,衛星製造メーカーやJAXA筑波のグループからの経済的な支援が出るようになり,このGPS受信機は宇宙ステーション,SERVIS-2号や多くの小型衛星に搭載される計画になっています。


FM-GPS受信機

(齋藤 宏文) 


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ISASニュース No.296 (無断転載不可)