No.288
2005.3

将来計画

ISASニュース 2005.3 No.288 


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- No.288 目次
特集 第5回宇宙科学シンポジウム
- 宇宙科学ミッションの新しい出発
- 特集によせて
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- 宇宙科学を支えるテクノロジー
- JAXA長期ビジョンと宇宙科学
- 編集後記

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大気化学・雷観測小型静止衛星GOAL


 高度10km以下の対流圏は,我々が生活し,気象現象や大気汚染などを通じて,身をもって体験している空間です。静止気象衛星のように10km程度の解像力で対流圏を常時観測することで,これまで不可能であった各種の科学研究や利用が可能となります。大気化学・雷観測小型静止衛星(GOAL)は,対流圏の広域大気汚染と雷科学という2つの非常に重要なテーマについて,静止衛星からの連続的な観測を,世界で(あるいはアジアで)初めて試みようという提案です。

 対流圏で注目されている現象に,過去100年にわたる北半球の地表面オゾン(O3)の継続した増加があります。これは光化学スモッグのような現象が北半球の広い地域で常に発生しているためと考えられています。20年後には地表面O3が100ppbを超えて,北半球全域で穀物収率が30-40%減少すると予測されています。国際的な防止策を今後検討しなければなりませんが,このような広域の現象を把握するためには,大気汚染監視ステーションが不足しているアジア域を静止衛星から常時観測することが効果的です。そのために,すでに周回衛星で実現済みの紫外可視分光計などを組み合わせて,光化学大気汚染の解明に役立つ二酸化窒素(NO2),一酸化炭素(CO),二酸化硫黄(SO2)そしてO3を,10kmの解像度で観測します。欧米で同じような衛星が提案されており,全世界を4機の静止衛星で観測すると,世界各所で毎日どのように光化学大気汚染が起きており,どのように全体として北半球の地表面O3を増加させているかについて,科学的理解が進歩するでしょう。

 雷の衛星観測は1995年に初めて成功し,気象学の研究や,集中豪雨や竜巻など気象災害の回避,航空管制などへの利用が可能です。そのために必要な静止衛星からの常時観測を,GOAL衛星は世界で初めて試みます。

(鈴木 睦[EORC/JAXA]ほか) 


  JAXA:宇宙航空研究開発機構
  EORC:地球観測利用推進センター


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