No.288
2005.3

JAXA長期ビジョンと宇宙科学

ISASニュース 2005.3 No.288 


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- No.288 目次
特集 第5回宇宙科学シンポジウム
- 宇宙科学ミッションの新しい出発
- 特集によせて
- 将来計画
- 宇宙科学を支えるテクノロジー
+ JAXA長期ビジョンと宇宙科学
- 編集後記

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 現在,JAXAでは,日本の新しい宇宙機関としての「長期ビジョン・中長期戦略」を策定する作業が進められています。宇宙科学は,このJAXA長期ビジョンの中で,当然ながら重要な部分を占めるべきと考え,長期ビジョン策定作業には宇宙科学研究本部から何人かのメンバーが加わり,重要な貢献をしてきています。また,その作業の内容は,折に触れ宇宙科学を支える研究者コミュニティーに伝えられ,その声を作業に反映する努力も試みられてきています。

 今回のJAXA長期ビジョン策定の根幹には,「これまでの宇宙開発が,『国として,ロケット技術・衛星技術を確立する』との目標のもとで進められ,一定の予算が保障されてきたのに対し,今や日本の宇宙開発は一応のレベルに達し,民間に引き渡す部分は引き渡し,今後,国としては何を推進していくべきかを整理し,明確にしていく必要性がある」との認識があります。宇宙科学も事情は変わらず,これまで固体ロケット開発・衛星技術開発の旗のもとで,一定の保障された予算の恩恵を被ってきましたが,今後は,「JAXAとして進めるべき宇宙開発の新しい目標」のもとで,その重要な一部を担っていく方向性を見せていかなければなりません。

 今,JAXAに求められるものは,科学技術立国の表看板の一つとして,国際的に確固たる存在感を示し,人類の将来を開く先進的宇宙技術を開発していくことと思われます。そのためには,世界第一級の「科学」を進展させ,世界最先端の「技術」を飛躍させていかなければなりません。そしてそれらの進展・飛躍には,発想の自由さ・奇抜さが重要であり,宇宙にはそれを引き出す広さ・深さがあります。

 「長期ビジョン・中長期戦略」には,具体的な目標が示され,着実な段階を踏んでいくことが示されなければならないでしょう。しかし同時に,自発的で多様な方向の研究開発が進められる包容力と,一定規模の挑戦的試みを許していける柔軟性とを,併せ持たなければなりません。宇宙科学は,全人類的・普遍的な成果を挙げていくだけでなく,自発的で挑戦的な試みの機会を提供し,創造的なJAXAを作っていく看板としても,大いに貢献していけるものと信じます。

(井上 一[研究総主幹/ISAS/JAXA]) 


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