No.251
2002.2

宇宙科学研究所外部評価要約  

ISASニュース 2002.2 No.251 


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- No.251 目次
- はじめに
- 「あすか」の軌跡
- X線天文学の予備知識
- 第1章 X線で探る星の世界
- 第2章 天の川銀河とマゼラン星雲
- 第3章 ブラックホール
- 第4章 粒子加速と宇宙ジェット
- 第5章 宇宙の巨大構造と暗黒物質
- 第6章 X線天文学はじまって以来の謎に迫る
- 「あすか」からAstro-E2へ
+ 宇宙科学研究所外部評価要約
- 編集後記

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2001.12.20  
宇宙科学研究所外部評価委員会  

 宇宙科学研究所が最初の評価を受けたのは1993年であった。当時は,M-3SII型ロケットで打ち上げた一連の小型科学衛星で,宇宙科学研究所が数々の優れた成果を上げた時期であった。それだけに当時の外部評価委員会は,宇宙研に高い評価を与え,その上で予算と人員を増やすよう勧告した。

 初回の外部評価から8年が経過し,宇宙研を取り巻く環境は激変しつつある。2001年初頭には省庁再編が行われ,宇宙を含む科学技術活動に関する調整機構も大きな転換期にある。このような情勢の中で,宇宙研は他の二つの宇宙関係機関と統合されることになり,新機関設立に向けた検討が始まっている。

 この時期に,宇宙研がどんな特性を持つか,宇宙研の特色を新機関でどう強化発展させるか,どこを改善すべきか,を検討することは時宜を得たことである。当委員会はこの目的に沿って,宇宙研の現状,理学及び工学プロジェクトの成果と将来計画について評価を行った。

 まず,委員会は,最初の外部評価以降8年間の成果について検討した。

 理学研究者と工学研究者が密接に協力することで達成した数々の成果を高く評価する。すなわち,

a)卓越した科学的成果
b)世界でもトップ水準の技術開発
c)M-Vロケットの開発
d)コストの安いミッションの継続的な開発と打上げ
e)大学院生や学位取得学生に対する一貫した実地での教育

がこれである。現在進行中のミッションについても,これまでのミッション同様,世界に大きく貢献すると確信する。委員会は宇宙研が世界の指導的な研究所として宇宙理学・工学の発展に寄与することを期待する。

 委員会は,日本の宇宙開発全体の中で科学ミッションの役割を次のように位置づける。

a)宇宙は,世界中の宇宙機関が積極的に取り組む,人類にとって比較的新しい活動分野である。宇宙に取り組むことは,産業競争力を高め,経済活性化,生活の質の向上,安全保障,知的資産の創造にもつながる。
b)最先端の研究という意味で,宇宙開発の中でも宇宙科学が重要な役割を果たす。宇宙科学は新しい知識を生み出し,技術革新の原動力となるばかりでなく,理学研究者や工学研究者の実地教育の場ともなる。
c)他の科学分野と同様に,技術革新が宇宙科学の大きな進歩につながる場合がある。産業界と深く連携することで,これらの技術革新や可能性を国の産業競争力につなげることができる。
d)日本の宇宙科学で新たな発見があれば,世界中の人々が日本の宇宙活動や能力に対して注目することになる。また,宇宙科学では国際協力の機会が多く,国際協力が各国の取り組みを補完・強化する。国際的な科学技術コミュニティの活動によって,各国の宇宙活動の質や透明性が向上する。
e)探検と発見という宇宙科学のミッションは,将来への展望を切り開く。その展望は,あらゆる年代の学生にとって魅力的で強い動機付けになる。大学の学生にとっては,革新的な宇宙科学ミッションに参加することで,未来を切り開くための技能と経験を身につけることになる。

委員会は,上記のような宇宙科学の基本的な役割に鑑み,宇宙科学に関する以下のような性格の研究開発部門を新機関に設置するよう勧告する。

a)ボトムアップ方式による科学ミッションの選択
b)大学と学生の広範な参加
c)理学研究者と工学研究者の密接な連携
d)ロケット,気球を含める一貫した実地教育
e)効果的な国際協力
f)適切な開発期間による定期的な打ち上げ
g)ミッションに牽引された技術開発

 委員会は,日本が世界でトップ水準の宇宙開発計画を今後とも続けるべく,科学目的のミッションに,より多くの資源を投入するよう勧告する。NASAESAも,民生部門の宇宙開発予算にしめる科学ミッション予算の割合は日本より大きいことに留意すべきである。

 さらに新宇宙機関の性格や,科学に関する研究開発部門の性格を決めるに当たって,宇宙研がより一層貢献するよう以下の点を助言する。

a)新機関における将来の輸送システム分野で,宇宙研の推進系研究者が指導的な役割を果たすべきである。
b)新機関は,大学,政府機関,産業界を含んだ宇宙工学活動の中核機関になるべきである。
c)新機関は,地球科学・スペースステーション関連のしかるべき分野でも,ボトムアップ方式を適用すべきである。
d)新機関は,広報という面でも,研究面でも,外部との関係強化に努めるべきである。


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