多くの方に愛読されているISASニュースが今回「あすか」の成果を特集することになった。1993年打ち上げ以来8年に及ぶ長期間活躍したX線天文衛星「あすか」の目覚しい成果が記されている。少々専門的な内容だが是非御一読頂きたい。
「あすか」は天体からのX線像とX線スペクトルを同時にとることのできる初めての衛星で,観測装置の性能は当時としては世界最高であった。「あすか」は世界中の研究者に利用され,その性能故に数々の新発見をもたらした。正にX線天文学史に“「あすか」時代”を画したといっても過言であるまい。「あすか」のもう一つの大きな成果は,多数の若い研究者を育てたことである。“「あすか」時代”の若者の国際的な活躍は目覚しい。本稿の執筆者の多くもその人達である。日本のX線天文学の育ての親,故小田稔先生は「あすか」の活躍を大変喜んでおられたが,今号は「あすか」と同時に世を去られた先生に捧げるレクイエムでもある。
最近,「あすか」の制作,運用に携わった多くの人達が綴った“思い出集”が刊行されたが,これを読んで成功の裏には実に大変な苦労があったこと,切なる愛情に支えられたことをあらためて痛感し,感謝の思いに堪えない。
(田中 靖郎)