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MUSES-C DHUインターフェイス試験

 3月13日〜31日の日程で,DHUインターフェイス試験がC棟クリーンルームおよびチェックアウトルームで行われました。この試験は,従来の衛星のPM総合試験に相当します。DHU(データ処理装置)を中心にデータレコーダ,姿勢軌道制御装置,各観測機器などのPM(試作モデル)を電気的に接続し,地上系の衛星管制装置,クイックルック装置を含めたコマンド・テレメトリの送受信機能の確認を行いました。

 MUSES-Cのデータ処理系は新規の機能を多く採用しています。データレコーダは多くのパーティションに分割可能で,最優先に見たいデータの入った領域から再生することによって,深宇宙ミッションでの通信容量の制約に対処します。また可変長パケットを採用することによって通信容量の有効利用をはかり,リアルタイムのテレメトリとデータレコーダ再生データをバンド波に混在させてダウンリンクすることが可能です。

 このような新規機能のためトラブルも発生しましたが,これらを現在製作中のフライトモデルに反映することができ,大変有意義な試験でした。

(橋本樹明) 


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MUSES-C用マイクロ波イオンエンジン/通信系の電磁干渉試験

 小惑星サンプルリターン衛星(MUSES-C)の惑星間航行用エンジンとなるマイクロ波イオンエンジンと通信系の電磁干渉試験が3月9日から17日の間,飛翔体環境試験棟の電波無響室において行われた。この試験はイオンエンジンがプラズマ生成のために使用するマイクロ波が衛星の通信周波数(約7.16GHz)に対して通信の妨げとなるような干渉を起こさない事を確認するために実施された。試験の結果,通信系担当者から通信系の性能を損なうような通信周波数への漏洩は無いとの技術評価がなされた。合わせてこの試験ではMIL-STD-462C規格で電磁適合性試験が行われ,14KHzから10GHzまでの電磁雑音の周波数特性が計測された。写真は電波吸収体で覆われた電波暗室内にガラス製真空容器を持ち込み,イオンエンジンを運転しながら通信系周波数帯の雑音レベルを測定している様子である。右側のガラス製真空容器の上部にイオンエンジンとマイクロ波電源部を置き,真空容器下側にクライオ真空ポンプが配置してある。真空容器の内部ではイオンエンジンからキセノン推進ガスが上から下へ高速で排出されている様子が判る。左側の装置はイオンエンジンの推進剤供給装置である。

(清水幸夫) 



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「はるか」が観た3C273とM81の中心核

クェーサー3C273の光,電波の映像(左)と,
1000倍にスケールアップした中心部のVSOP映像(右)


 電波天文衛星「はるか」は,世界の電波望遠鏡群,トラッキング網,3ヵ所の相関センターと結んで,VSOP観測を続けています。

 2000年1月VSOP国際シンポジウムの集録が出版されました。その中から,2つだけトピックを紹介しましょう。

 3C273というクェーサーは星のように輝いてみえる,約3億光年かなたの天体ですが,ここから光のジェットが出ているのでも有名です。このジェットは電波望遠鏡でもはっきりととらえられます。表紙の左図(縦軸スケール25秒角)のカラーはハッブル宇宙望遠鏡の映像で,等高線表示が電波(イギリスMERLIN電波望遠鏡)の明るさを示します。ジェットはシンクロトロン輻射で輝いているのですが,電波を出す電子のほうがエネルギーを失いかけた,言いかえれば古い時代の電子によって放射されており,このため電波ジェットは光ジェットよりぼんやりと広がっています。

 さて,このジェットの根元,クェーサーの中心を観たのが,VSOPの波長6cmの映像(表紙右図,縦軸スケール1000分の23秒角)です。左右の図のスケールは約1000倍の違いです。ジェットの方向は根元で緩やかに曲がり,最後に大きなスケールで方向が一致するように見えますね。この根元での電子は加速されたばかりで,根元でもシャープなジェットです。しかし,VSOPのここまでの解像度(1000分の3秒角)で観ると,ジェットは真っ直ぐではありません。うねうねとしています。Kelvin-Helmholtz不安定性によるものかなどと言っています。さらによくみると,山脈のようなジェットの峰は二筋に見えます。いままでVLBIでは,VLBIスケールのジェットの成分が光速の10倍ぐらいで飛び出しているように見えていました。今や,ジェットのパターンがこのように詳しく見える時代に入りました。

 2つ目のトピックです。今では,ほとんどの銀河の中心に巨大ブラックホールがあると思われる観測が増えています。わたしたちの銀河Sgr A(中心まで2万光年ほど)も,アンドロメダ銀河(220万光年)もしかりです。約1000万光年遠方の(宇宙スケールではとても近い!)銀河M81の中心にも怪しげに輝く電波天体があります。VSOPは,この電波天体が銀河回転軸にそろった12000天文単位の長さのジェット様に見えることを波長6cmの観測で見出しました。この電波天体の強さはわたしたちの銀河中心Sgr Aの一万倍ほどの強さです。

 それでは,わたしたちの銀河の中心もVSOPで観測して,銀河ブラックホール周辺に迫ったらいいではないかということになりますが,わたしたちの銀河中心方向を銀河面をとうしてみると濃いプラズマの影響で,VSOPの波長18cm6cmではぼんやりとしてしまいます。波長7mmより短い必要があります。VSOPの次の計画では,波長7mmまでも観測できるようにしようということでは,共通の希望といっていいでしょう。

(平林 久) 

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臼田の低雑音増幅器,役目を終える

 臼田の64mアンテナの機器室に入ったことのある方は,構内に,源がどことも分からず,ヒュールン,ヒュールンという音が鳴り続けていたことを覚えておられると思います。この音の源であったSバンドの低雑音増幅器(LNA)を,去る3月30日に停止させました。ガスヘリウム冷却の,極低温の低雑音増幅器で,1984年秋の臼田宇宙空間観測所開設以来,「さきがけ」からの電波の初受信に始まって,約15年にわたって働き続けてきたものです。

 臼田の深宇宙探査局を建設するに当たって,低雑音増幅器の開発は,一つの大きな課題でした。当時のわが国の技術で実現が期待できるものとして,パラメトリック増幅器を採用することとし,雑音温度10K以下を目指しました。製作を担当されたNECマイクロ波衛星通信事業部の技術者の方々のたいへんな努力の結果,単体で雑音温度5K台冗長構成としたときに8K,という目標を上回る性能のものが実現しました。極低温で動作することから,保守や運用上の安定性もはじめは気懸かりでしたが,15年間,途切れることなく働き続けました。

 私の手元の古い資料をめくってみましたところ,この低雑音増幅器の開発着手を決めた会議を,1982年3月30日に開いていました。月日の偶然の一致!

 丁度18年という歴史をもったことになりました。増幅器の本体部分にはまだ何の不安もないのですが,冷却機械系を維持していく上で負担が生じてきており,また,この装置として役目も果たし終えたことから,停止させたものです。始めに述べた音は,冷却機の間欠的な運動に同期しており,コンプレッサーまでの長い配管全体が鳴っているように聞こえました。シンボル的であった音がなくなり,アンテナ機器室には一抹の寂しさが漂っています。

(廣澤春任) 



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ATREXエアインテーク制御実験について

 1月31日〜2月21日に,フランスONERAS3超音速風洞において,ATREXエンジン用軸対称エアインテークの自動制御実験を行った。エアインテークは大気をエンジンに適切に取り込む装置であり,主流速度の変動に対応して形状を制御する必要がある。

 ONERA S3風洞は気流のマッハ数(M1.5〜3.7)を短時間でスイープできる点が最大の特長であり,本実験にはおあつらえ向きな設備であった。幸運なことに,風洞をこの様に広い範囲でスイープさせて使用することは初めてのことらしく,現地スタッフも本実験に対して相当の興味と情熱を持って対応してくれた。手渡された詳細な計画書と事前に何度もチェックされたであろう風洞のデータがそのことを物語っている。数々の問題が生じながらも,予定よりも多くの実験を行い,最終的に目標を達成できたのは,全員の協力と強運のおかげ。それにしても,イタリアとの国境付近にあるスキー場に囲まれたこの巨大な試験場が1940年代に作られたのもさることながら,2000m級の山の上にある水瓶から高低差850mの水力を利用してペルトンタービンをまわし,88MWの大型風洞を直接運転するスケールの大きさには驚かされる。最後になりましたが,この実験へご支援くださった関係者の皆様に厚く感謝いたします。

(佐藤哲也) 



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第19回講演と映画の会


 さる4月22日(土),千駄が谷駅前の津田ホールにおいて,講演と映画の会が催されました。これは,宇宙科学研究所の創立記念日である4月14日前後に毎年行っているもので,宇宙科学研究所のプロジェクトの中から,理学と工学のそれぞれからホットなトピックスを選んで,参加者に講演する催しです。併せて映画やビデオも上映します。

 今年は,松尾弘毅所長の挨拶に始まって,小野田淳次郎,水谷 仁,井上 一の三教授の講演が続き,その直後に所長と3教授に対する質疑応答をまとめて行ってから,ビデオ『のぞみ・・・日本初の火星探査』を上映しました。 

 まず小野田教授は,M-Vロケット開発の経緯と機体の概要を説明した後,さる2月10日M-V-4号機によるASTRO-E衛星の打上げ失敗の原因について言及しました。件のノズルスロートの今後の対策についても,原因究明決着後に早急に着手すると表明されました。落ち着いた自信に満ちた話しぶりが,会場に信頼に満ちた雰囲気を作り出しました。次のM-Vロケットの打上げは2002年7月の小惑星探査機MUSES-Cになります。この打上げでM-Vの完全復帰と行きたいものです。

 水谷教授からは,MUSES-C(小惑星サンプルリターン:2002年7月),LUNAR-A(月ペネトレータ・ミッション:2002年度後半),SELENE(宇宙開発事業団との共同による月ミッション:2004年度)と続くこれからの日本の惑星探査計画の紹介がなされました。いつもの論旨明快で分かりやすく噛み砕いた説明に大勢のうなづく顔々。次いで井上教授から,M-V-4で軌道に運ぶ予定だったASTRO-E衛星(5代目線天文衛星)が目的とした重要な観測についての紹介と,今後できるだけ早く再チャレンジしたい旨の意志表明,そしてASTRO-F(日本初の赤外線天文衛星:2003年度),SOLAR-B(「ようこう」に継ぐ太陽物理学衛星:2004年度)などの天文衛星と長期的な観点からの宇宙科学の観測計画について深く新しい内容の解説がなされました。

 約350名の参加者からは,活発な質問が出されました。

(的川泰宣) 

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