No.204 |
ISASニュース 1998.3 No.204 |
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会議は所長挨拶,二つの委員会からの経過報告,惑星科学会の将来計画委員会の報告に続いて惑星内部,始源天体,惑星大気・環境,月,X線天文学,赤外線天文学,Space VLBIの各分野の将来構想が発表された。トピックスとして,現在検討が進められている水星探査と将来の大きな課題である有機物質の研究についての報告がなされた。また,現在かかえている技術課題をまとめる形で,今後の技術開発のあり方に関する提案がなされた。分野によって検討の度合いは様々であったが,それぞれの話題についてフロアーとの間で活発で遠慮のない議論がなされた。外国人にとっても会議の雰囲気は新鮮な経験だったらしく,オブザーバーの一人は「日本人もわれわれと同じだなぁ」という妙な感想をもらしていた。
「今後諸外国との競合の中でどのようにして成果を上げていくのか」というフロアーからの質問に対して壇上の若手の発表者は「大きな成果を上げようとすれば必然的に難しい技術課題を解決しなければならなくなる。われわれは難しくて人に出来ないことをやっていくつもりだ」と答えていた。この自信と気概は頼もしかった。
月・惑星の分野では現在,既に開発が進んでいる4つの計画に代表される方向を今後も追求することでおよその意見の一致を見ている。すなわちLUNAR-Aに代表される惑星内部の研究,MUSES-Cに代表される始源天体,PLANET-Bに代表される大気・環境と事業団との共同ミッションSeleneに代表される月探査計画である。しかし,現在進行中のミッションに忙しく,水星探査を除いては具体的なミッションとしての検討はまだあまり進んでいない。ASTRO-Eに続くX像天文学はより高いエネルギーへ,ASTRO-Fに続く赤外線天文学は地球の影響を避けるためラグランジュ点での観測をしたいという話であった。いずれもミッションとして実現するとなると,現在以上に難しい要素を持った衛星となることは避けられないようである。
技術開発に関する報告では,最近の衛星の大型化,高度化,惑星探査に伴う技術の多様化の実状が報告され,技術開発体制が転換点に差しかかっているのではないかとの指摘がなされた。これまで宇宙研の衛星技術は前の衛星の技術を段階的に発展させて次の衛星で使うという形で進められてきた。最近の衛星に見られるように技術の難度が高くなり,多様な技術が必要となってくると,この方式では対処しきれなくなるのではないかとの危惧である。将来必要となる技術をあらかじめ予見して衛星計画とは独立した技術開発を進めるべきではないかとの考えである。この場合問題となることは,将来必要な技術をどのようにして定義していくかということであろう。
この問題の一つの解決策として,最後の自由討論の場で私は一つの提案を行った。それは将来計画検討会でいくつかコーナーストーン的ミッションを定めて,一定期間若干の予算と人員を配していわゆるPhase-A的検討をしてみたらどうかというものである。その中でミッション開始前に済ませておく必要のある事項を洗い出して,先行して開発を行えば良いという考えである。私の提案は多くの議論を呼び,今後更に検討を要するということになった。この結論は,結果的に正しい判断であったと考えている。これまで宇宙研では,自然発生的に研究者の中から出てきた衛星計画を1年に一つずつ選定してミッションとして実現してきた経緯がある。コーナーストーン的な計画を選定することはこの過程に何らかの影響を及ぼすことは確かであり,慎重な検討が必要である。一方,ミッションに先行した開発の必要性も確かであり,今後早い時期に結論を出す必要がある。次回以降の検討課題としたい。
今回は初めての試みとして外国人オブザーバーのために同時通訳を管理部に用意していただいた。結果は大好評で外国人オブザーバーも我々の議論を十二分に理解できたようである。
(鶴田浩一郎)
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