No.201
1997.12

ISASニュース 1997.10 No.201

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新スペースVLBI入門 (5)
干渉計の画像処理

村田泰宏

 前回は,仮想レンズを作って大きな仮想望遠鏡を作って高解像度の画像を作るお話をしました。この仮想望遠鏡,いいことばかりではなく,欠点もいくつかあります。そのうちの1つは,衛星の運動や地球の自転を利用してレンズ面を作っていくのですが,軌道運動や地球の動きは制限されていますので,どうしてもレンズ面を完全に形成することができません。レンズ面のあちこちが汚れていて,光が遮断されているようなものです。

 図1にUV図というものを示します。これが作られた仮想レンズ面をほぼ示しています。黒線の部分が実際にデータがとられている部分です。内側の部分が地上の望遠鏡同士でとられたデータ,左右の大きな弧が,「はるか」と地上の望遠鏡の間でとられた部分です。線のないところはデータがないところで,レンズ面のほとんどは隠されています。このような,不完全なレンズで見た場合は,焦点で作られる像に強いゴーストイメージが立ちます。
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 図2:画像処理前の天体像
    (+ゴースト)

図2に,この仮想望遠鏡で見たときに焦点に写る天体(クェーサ1156+295)の像を示します。これが本当の天体の像,ではなく,たくさんゴーストが立っているために,どれが本当の像でどれが,ゴーストか全くわかりません。このような像では,天体のことを調べることができません。

 ここで,干渉計の画像処理技術が威力を発揮します。図1から,「もし,相手が構造を持たない点状の天体であれば,どのようにゴーストが立つか」ということが計算できるのです。それを計算した結果が図3です。中心の一番強いところが,点状の天体で,あとは全てゴーストです。

図3:天体が点状のときの  
ゴーストの現れ方  

 相手の天体がもっとも単純な構造でも,こんなにゴーストが現れてしまいます。図2はほとんど嘘の像です。しかし,ゴーストの立ち方はこれでわかりました。あとは,いちばん強いところはゴーストではないのですから(ゴーズトは,本物より必ず弱いから),図2のなかから強いところを探しだし,それは本物だと思ってそのゴーストを取り除きます。また,その次に強いところをさがしては,そのゴーストを取り除く,ということを繰り返して行くと,ゴーストの影響がどんどんとれて行きます。最後には,図4のような像が得られます。これがほんとうの天体の像です。右下の黒いところが銀河の中心部で,そこから左上のほうに伸びているのが,銀河から吹き出している銀河ジェットからの電波です。

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 図4:画像処理後の天体像
(1156+295,HALCA+VLBA)

 このような画像処理を,デコンボリューションといいます。不完全なレンズしか作れない干渉計では,このような画像処理が重要な役割を果たします。デコンボリューションのやりかたも幾つかの方法があり,このほかに,できた画像をつかって,焦点の位相の補正をかけ直したり,個々のアンテナの利得を補正したり,いろいろな処理技術が開発されています。

(むらた・やすひろ)



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