No.186
1996.9


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S-310の打ち上げ



 S-310-25,26号機は2機で1つの実験となっており,通称SEEK( Sporadic-E Experiment over Kyushu )ロケットと呼ばれています。このロケットは夏場に良く発生するスポラディックE層が夜間になると周期的に波打つ事が有るようだと言う事が数年前にレーダーによる観測により明らかになった為,この発生原因などを調べる為に計画されました。
 26号機にはTMAと呼ばれる発光雲を作る為の薬品が搭載してあり,TMAの作る発光雲は地上4点( 高知,宮崎,内之浦,種子島)から写真観測を行う事になっていました。この為,打ち上げ条件は地上観測点の2点以上が晴れている事(26号機),月明りが無い事(26号機),現象が出ている事(両号機),と大変厳しい物となりました。
 26号機は8月21日0時30分に打ち上げられました。15分後に打ち上げを予定していた25号機の方は打ち上げ直前になって肝心の現象の方が消えてしまった為打ち上げを延期し,8月26日23時丁度に打ち上げました。両号機で同一の現象を観測するという事は出来ませんでしたが,TMAは地上3地点が快晴,残り1地点も雲は有るものの発光雲自身は観測ができ,当初予想していた10〜15分と言う観測時間よりも長く20分に渡って観測する事が出来ました。また,宮原に新しく作られた精測レーダーによる計測もうまく行き,観測としては両号機共に申し分の無い観測が出来ました。今後は25,26号機の双方に積まれていた,電場計測器と電子密度計測器のデータから両号機のデータをつなぎ合わせて解析を行う事になります。
 最後になりましたが,度重なる打ち上げ時刻の変更(実に32回たぶんタイトルホルダーでしょう)で,実験各班は基より関係各位には大変お手数をお掛けしました。おかげ様で,大変貴重で良質のデータを得る事が出来ました。皆様の御協力と御理解を感謝致します。

(早川 基)

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第2回 日米 月・惑星会議

 昨年に続いて本年も,宇宙研,Planetary Society の共催による,第2回日米 月・惑星会議が,8月5日から7日の3日間の日程で宇宙研において開催された。ホストは,もうすっかり宇宙研におなじみとなった,元JPL所長の,カリフォルニア工科大学教授 Bruce Murray 博士で,宇宙研の惑星科学を代表する水谷教授と共同で企画されたものである。今年も,S. Gulkis, C. Pieters, R. Binzel, D. Stevenson ら米国から著名な科学者の参加があり,会議はまことに盛況であった。特に,今年はJPL の副所長格である,C. Elachi 博士も参加され,特に小惑星探査計画である MUSES-C における,NASAとの協力関係についても,会議と併行して突っ込んだ討論の機会があり,まことに有意義であった。折しも,斎藤(宏文)先生のもとで滞在されているJPLの New Millennium 計画の推進者である Ross Jones 氏も加わり,理工両面での議論も活発であった。会議は,初日が月探査,2日目が小惑星サンプルリターン計画,3日目が水星探査計画という内容で,米国参加者のために3日目夕方には,所内の施設ツアーも盛り込まれ,米国科学者の方々もみな一様に満足いただけたものと思う。偶然にも,彼らの到着された8月3(土)には,所内一般公開があり,「百聞は一見に如かず」ということで、宇宙研の何たるかを存分に理解いただいたことが,幸いであった。
  Bruce Murray 博士の意気込みに圧倒されたかの感があるこの会議,早くも来年の企画やら,ロッジの手配やら,既に始動しているところがコワイところである。

(川口 淳一郎)

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エド・ストーン氏来訪

 先月の19日,JPL所長 Edward C. Stone氏が来訪されました。氏はボイジャー計画の科学主任としてこの壮大な計画を成功に導いたことで有名ですが,1990年よりJPL所長としてガリレオ,ユリシーズやマジェランなどの大きな計画の指揮をとってこられました。所長室での懇談の後,所内の主な施設をご案内しましたが,たまたまC棟にはMUSES-B,LUNAR-AそれにPLANET-Bの熱構造モデルがあり,これからM-Vを中心に展開する宇宙研の活動を見ていただくにはよい機会だったと思います。C棟では水谷さんのペネトレーター開発にまつわる苦労話に耳を傾けられ,同じくPLANET-Bの電磁干渉試験を実施中のシールド室ではシールド室そのものに大変興味を持たれた様子でした。最後は,今や定番となった「ようこう」運用室での日米協力の実際をご覧になりこれも大変満足された様子でした。 所長室での懇談の折,後のスケジュールを気にしてそわそわしているわれわれを前に,お持ちになった木星の衛星ユーローパの最近のクローズアップ写真で明らかになった高速道路のようにみえる氷の割れ目の中にみえる白い線や,これもはじめて磁場を持っていることがわかった衛星ガニメデの写真を示しながらいかにも嬉しそうに説明されるStone氏を見ていると,「アメリカの宇宙」健在なりという感じを受けました。

(鶴田 浩一郎)

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MT-135-64号機 噛み合わせ

 MT-135-64号機は、7月30日に電波監理局によるレーダーの検査を受けた後,机上での測定系のチェック,タイマー試験の後,振動,衝撃試験を終え,最後にパラシュート系とオゾン測定系に100Gの衝撃を加える試験を行なって順調に飛翔前試験を終えた。64号機の発射日は,米国の成層圏モニター衛星SAGA-が内之浦に最接近する9月13日が選ばれている。40H以上は化学反応の影響が明瞭に現れる高度領域で,これまでのMT-135号機の観測で,オゾンの変化がフロンによるものか,太陽活動によるものか,分離出来る可能性が出てきた。MT-135ロケットによる観測は,ADEOS衛星に搭載されているオゾン観測機の検証にも役立つものである。

(小山 孝一郎)

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