第31回コスパー 総会に出席して
長瀬文昭
宇宙空間科学研究委員会(COSPAR:Committee on Space Research) が主催する第31回コスパー 総会( 31st Scientific Assembly of COSPAR )は1996年7月14〜21日の1週間英国のバーミンガム市で開催された。このコスパー総会は2年に一度開催されるもので,地球表面・気象・気候,地球・月・惑星および太陽系,地球大気・惑星大気,惑星磁気圏・太陽系プラズマ,天体物理,生命科学,材料科学等多技にわたる研究分野の世界中の研究者が参加し,宇宙からの(または宇宙における)研究の成果が発表される。バーミンガム総会には2,000名近い研究者が参加し,ポスター論文を含めて約2,200編の論文が発表された。1週間の間に毎日20以上のシンポジウムが平行して開催されるマンモス総会である。
私の出張は自身が組織委員会委員でもある“X-ray Timing”と“Radio Pulsar”のシンポジウムに出席し,講演を行うことが主な目的であった。ところが,私が現在このCOSPARの国内対応委員会である学術会議・宇宙空間研究連絡委員会の幹事であることから,西田所長(COSPAR副会長,宇宙空間研連委員長)からどうせ行くなら各々2回づつシンポジウムの前後で開かれる Bureau meeting (理事会)および Council meeting (加盟各国および各研究分野の代表者会議)に同席するよう指示され,渋々(おっと失言!喜んで)これらの会議にも同席した
それというのも,次期の第32回コスパー総会は日本が主催国となり,名古屋の国際会議場で開催することに内定しており(バーミンガムの Council meeting に於いて,1998年7月に名古屋で第32回コスパー総会を開催することが正式に決定された),その準備のために諸事見聞しておくことが目的であった。Council meeting に同席して,このCOSPARを取りまとめていくことの大変さを痛感し,会長,事務局長の調整能力と理事会・事務局の懸命な努力に敬服した。ところでこの会議で,名古屋の次の2000年総会はポーランド・ワルシャワに内定した。私はさらに研究会期間中夕刻より各科学分科会毎に開催される Business meeting 出席するためにあちこち駆けずり回る羽目になり,ずいぶん多忙な研究会出席であった。
ただ今回幸いであったのは,バーミンガム大学の知人である Mike Church, Monika Church 夫妻(共にX線天文学者で宇宙研に滞在したことがある)のお世話になったことである。まずバーミンガム大学特約の代理店からレンタカーを大学割引で予約しておいてくれた。おかげで滞在中機動力があって助かった。到着翌日の日曜日早朝には小田稔先生を Heathraw 空港にお迎えに上がるのに役立った。先生は日本の宇宙科学研究発展に寄与されたことでコスパー賞(COSPAR Award )を受賞されることになっており,その授賞式に臨むためにおいでになった。ご夫妻で大きなスーツケースを3個持っておいでになったが,なんとその内の1つは山登り道具が入っていたとか。何でもバーミンガムの後はスイスへ避暑に出かけ,山歩きを楽しむとおっしゃっていた。
このレンタカーのおかげで,会議やシンポジウムの合間に(?本当は合間などない!),バーミンガム市近郊のウォービィック城やシェークスピア生誕地といわれるストラトフォード・アポン・エイボン,最もイギリスらしい田舎といわれるコッツウォルズの村々などへ出かけることが出来た。Mike はまた彼のオフィスにわれわれ専用のワークステーションを用意してくれた。私は一度これを使って宇宙研に入り私宛の e-mail を読み,返事を書き始めたのであるが,日本とヨーロッパ間の回線があまりに遅く反応が鈍いのに辟易して,一度限りでこの端末を使うのは止めた(おかげで帰ってから溜まった100通以上の e-mail を処理する羽目に落ち入ったが)。堂谷君(彼はこの総会で若手研究者に与えられるゼルドビッチ賞を受賞した)はこの端末で毎日夜な夜な e-mail を読んだり,論文原稿を書いたりしていたようだ。