宇宙科学談話会

ISAS Space Science Colloquium & Space Science Seminar

日本語

宇宙人存在問題(Question on Alien Civilization Existence)

福島 登志夫(Toshio FUKUSHIMA)
国立天文台

宇宙人存在問題とは、「なぜ、我々は宇宙人と出会っていないのか?」という素朴だが難解な問題を指し、フェルミの矛盾とも呼ばれる。これに関して度々引用されるのがドレイク方程式である。しかしながら、単純に理学の範疇内でドレイク方程式の精密化を試みても不毛な議論となる可能性が高い。その大きな理由は、「知的生命は理学的発想だけでは行動しない」からである。大航海時代を引用するまでもなく、文明が未知域への探検に巨額の投資を行う背景には、軍事・政治・経済・宗教あるいは知的好奇心など何らかの文化科学上の行動原理が重要である。また、具体的な宇宙航行技術や宇宙環境情報の吟味など、工学的検討もカギとなる。一方、最近のAIの進展を見ると、知的生命が生物である必然性は薄らいでいるようにも思える。実際、「光速の壁」を克服するためには自己複製可能なクローンあるいはロボットのみが広い宇宙を席巻できるとすると、もっと違った工学的・文化的考察が必要かもしれない。いずれにしろ、宇宙人存在問題を深く議論するためには、理学・工学・文科系学問など広範囲の知識・技能・方法論を総動員することが必要であろう。本講演では、これまでの研究を概括するとともに、筆者が総研大文化科学研究科の研究者と交わした議論に基づく新しい回答案をいくつか紹介する。

Place: 2F Conf. room(1236) / 研究管理棟2階会議場(1236号室)