宇宙科学談話会

ISAS Space Science Colloquium & Space Science Seminar

日本語

きぼう船内ドローン「Int-Ball」の飛行制御技術

巳谷 真司
JAXA研究開発部門第一研究ユニット

本講演では、2017年6月から国際宇宙ステーション「きぼう(JEM)」日本実験棟内で実験運用が行われている、宇宙船内ドローンカメラ「Int-Ball」の概要とその飛行制御技術について解説する。
現在、「きぼう(JEM)」日本実験棟内で宇宙飛行士が作業を行うときは、定点カメラによる撮影が多く用いられているが、死角が多く画質も悪いため、手持ちカメラ(ビデオ及びスチール)を使って、詳細な状況を地上で把握している。この手持ちカメラの準備や撮影自体に時間が掛かっており、現在、宇宙飛行士の実験作業時間の約10%程度を撮影タスクが占めている。
こうした撮影にかかる宇宙飛行士の作業時間を減らすため、係留位置から自律的に移動し、対象物の撮影を行う自律移動型船内カメラ「Int-Ball」の開発に2016年6月から着手した。Int-Ballは、2017年3月に開発完了し、同年6月3日にSpaceX Falcon 9によってDragon宇宙船のペイロードとして打ち上げられた。6月15日の最初の飛行制御チェックアウトを皮切りに、現在、飛行性能とカメラ機能の検証中である。Int-Ballは、無重力空間で飛行する世界最小の「ドローン」であり、いま全世界の注目を集めている。今後、Int-Ballの更なる性能向上・機能拡張を図り、JEM船内外実験の自動化・自律化を進めると共に、将来探査ミッション等に利用可能なロボティクス技術の獲得を目指すところである。
本講演では、Int-Ballの開発目的を始めとして、採用されている最新の技術について概説する。特に、当該機体に採用されている、人工衛星の技術を応用した飛行制御技術と無重力空間での飛行制御原理についてフォーカスを当てて説明したい。
発表内容は、有人宇宙活動領域でのクルーリソースの低減という課題に対して、自律移動ドローンカメラを用いてどのように解決するのかという比較的分かりやすいテーマを取り扱っている。また、超小型人工衛星の姿勢制御や、民間の地上ドローン、3Dプリント技術など最近の技術トピックスも盛り込み、広い工学一般の研究者の興味を引くような内容にしたいと考えている。

Place: 2F Conf. room / 研究管理棟2階会議場(1236号室)