宇宙科学談話会

ISAS Space Science Colloquium & Space Science Seminar

日本語

筋維持・萎縮機構の研究:宇宙から学ぶこと

瀬原 敦子
京都大学ウイルス・再生医科学研究所

筋発生・筋再生を研究しているうちに、筋萎縮とは何か、ということを考え始めた。手足のない魚の骨格筋も無重力環境では萎縮するのだろうか、と。
運動しないと骨格筋は著しく萎縮するが、それは可逆的なものである。一方、筋ジストロフィーのように骨格筋自身に原因のある疾病や筋萎縮性側索硬化症(ALS)のように骨格筋を支配する神経系に原因のある疾病、あるいは加齢・癌などの疾病に伴って筋肉量・機能が低下するサルコペニアは、不可逆な筋萎縮とされ、これらの萎縮機構の解明と、その早急な解決が求められている。宇宙飛行士の筋萎縮から、重力もまた、骨格筋維持に重要な要因であることが示され、以来骨格筋萎縮は長期宇宙滞在において解決すべき大きな課題のひとつとなっている。微重力による筋萎縮は、地上での廃用性萎縮と同様に回復可能で可逆的と考えられているが、実は未解明なところが多い。
私は、これまで細胞間シグナリングや細胞間接着のプロテアーゼ制御から発生を研究してきた。その視点で骨格筋を捉える時、神経支配を受け、血管網が走り、腱を介して骨とつながる臓器の再生や萎縮のメカニズムの中で、それらの関わりについての知見が乏しいことがわかる。筋再生や宇宙滞在による筋萎縮機構をそのような観点から解明したい、私達の研究を紹介したい。

Place: 2F Conf. room / 研究管理棟2階会議場(1236号室)