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宇宙科学の最前線

JAXA長期ビジョンと宇宙科学

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長期ビジョン策定の二つの成果

 半年間,副理事長から「寝る時間があると思うな」と叱咤激励され,長期ビジョン策定作業に従事してきた。長期ビジョンの中身の評価とは別に,長期ビジョン策定には二つの成果があったと思っている。

 一つ目は,策定作業を通じて,ほかの本部の若い人たちがどんなことを考えて研究・開発業務をこなしているか,互いの理解が深まったことである。検討委員会のもとに組織された作業チームは30〜40歳代の若い職員を中心に構成され,半年にわたって週に何回も,厳しいが意味のある議論が交わされた。このことは“One-JAXA”に大いに貢献したと思うし,ここでの議論が参画したメンバーの今後に良い影響を与えるに違いない。

 二つ目は,議論を巻き起こす土壌が作れたことである。長期ビジョン策定の過程において,ISAS全体討論,理学委員会,工学委員会,運営協議会,宇宙科学評議会,宇宙科学シンポジウム,システム計画研究会など,公式・非公式の集まりにおいて,たくさんの議論があった。今後もJAXA長期ビジョンについて,時々に議論が巻き起こるだろう。一部に「選択も集中もされていない総花的内容」という批判もあるが,そのための基準が整理できたことは,それ自体一つの成果と考えている。

 JAXA内での選択と集中は必要だが,JAXA予算内で“ゼロサムゲーム”に終始することなく,全体を広げる努力が今期待されている。いろいろな議論はあったが,JAXAが長期ビジョンによりその方向性を示すことによって,宇宙開発・航空研究への理解が進み,結果としてJAXAも含めた宇宙関連予算が増えていくのであれば,宇宙科学にとってもプラスとなることが期待される。

 長期ビジョンは何度も見直すものである,といわれている。今後,これを柱にしつつ,時代の変化に応じて見直しを図っていくことになる。記載されたすべてをこなせるのか,それとも明確な選択と集中が起こるのか,結果として今回のJAXA長期ビジョン策定に意味があったかどうかは,今後のJAXA経営に委ねられた。同時に私たちも,自らこれを意味あるものにする努力をしなければいけない。

 宇宙科学は,JAXA宇宙科学研究本部の大学共同利用という性格を活かし,国内外の各分野の研究者一丸となって進めるものである。長期ビジョン策定に当たっては,上記各種委員会をはじめJAXA外の方々にも協力いただいた。この場を借りて,皆さまに感謝の意を表したい。

(ふじい・こうぞう,たかはし・ただゆき,やまかわ・ひろし)




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