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宇宙科学の最前線

GEOTAIL衛星 天体ガンマ線観測始末記

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マグネターのフレアに磁気リコネクションが関与

 SGR1806-20の正体は,1000兆ガウス程度という超強磁場を持つ中性子星(マグネター)であるとする説が有力です。マグネターは普段から少量の磁場エネルギーを断続的に解放し,比較的エネルギーの低いガンマ線を放射しているため,軟ガンマ線リピーター(SGR)と呼ばれています。これまで3つのマグネターが巨大フレアを起こしたのですが(表紙の図のSGR0526-66,SGR1900+14そしてSGR1806-20),今回のフレアは過去の2つに比べて100倍以上も大きいものであったことが明らかになりました。

 マグネターは,数十年に一度ほど巨大フレアとして普段よりはるかに多くの磁場エネルギーの爆発的解放を起こすらしいのですが,詳しいことはよく分かっていません。そのメカニズムを探るためには,フレア開始直後のガンマ線の強度変化を知ることが必要です。そのためにLEPデータは大変貴重なもので,今後の理論モデル構築の手掛かりとして重要な役割を果たすことになるでしょう。特に図3上の光度曲線の0〜200ミリ秒の間に見られる凹凸の60ミリ秒ほどの時間スケールは,マグネターにおけるエネルギー解放素過程の時間スケールを反映すると考えられます。通説によれば,その素過程にも磁気リコネクションが関与しているといわれており,それが正しければGEOTAILは,地球磁気圏と天体の両方の磁気リコネクションを観測した最初の人工衛星であることになります。

 少し早めの桜が咲き始めた3月末,ほかのガンマ線天文衛星の結果と並んで,我々の結果が4月28日発行の『Nature』誌に掲載されることが決まり,取りあえずは一件落着となったのでした。


(てらさわ・としお)



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