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宇宙科学の最前線

月の重力場地図を作る〜SELENEの小型衛星Rstar/Vstarの活躍に向けて〜

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月惑星の重力場は,その表面の地形からはうかがい知れない内部の様子を知らせてくれます。月は,地球のほかでは最も我々人類に身近な天体であり,重力場も地球以外では最も詳しく調べられていますが,月周回衛星SELENE(図1)では月の重力場地図をさらに飛躍的に改善する計画です。では,そのお話の前に,月の重力場の観測から何が分かるのかを見てみましょう。

図1
図1 SELENEの小型衛星分離前の軌道上予想図と,リレー衛星(Rstar)の質量特性計測中の写真(右上)。



重力場で調べる内部構造


図2
図2 月の重力場モデルLP165Pによるフリーエア重力異常の地図。左半分は地球から見えている表側,右半分は裏側。
(Konopliv et al. 2001からSugano 2004が改良)


 図2は,NASAのコノプリフ博士らによって2001年に発表された,月の重力場の地図です。Lunar OrbiterやApolloから最新のLunar Prospectorに至る米国の探査機が取得したデータを総合的に解析した結果です。左半分は地球から見えている表側,右半分は裏側です。重力場の地図は,月の重力の等ポテンシャル面であるセレノイド上の標準重力からの差として表され,これを重力異常と呼びます。重力を測定した点の高度を補正して得られた重力異常をフリーエア異常,重力測定点とセレノイドとの間の物質の影響を補正して得られたものをブーゲ異常と呼びます。大きなクレータなど地殻均衡(アイソスタシー)が成立している場所ではブーゲ異常が高くなり,地殻均衡のない小さなクレータではフリ−エア異常が低くなるので,地殻の厚さなどの内部構造を知ることができます。

 月の表側に見られる丸くて色の濃い領域(図2)は特に重力が大きい場所で,内部に質量が集中していると推定されていることから,マスコンと呼ばれています。重力異常の地図と地形図とを比較すると,マスコンの位置がちょうど大きなクレータに一致していることが分かります。このような様子から,月の進化の初期に巨大な隕石によってクレータが形成された際に,高密度マントル物質の貫入や盆地への溶岩の集積が起きたことを表しているものと考えられています。

 重力場の地図は,球面調和関数の展開係数として表すこともでき,月については推定モデルにも依存しますが,150次ほどまでが推定されています。次数が高いほど細かい構造に対応し,逆に低次では大局的な内部構造を表します。特に2次の項C22の値から月の慣性モーメントを求めることができ,地震計のデータなどから月のコアのサイズが決まっていればコアの密度が求まり,コアを構成する物質を推定して地球と比較することができます。

 では次に,重力場がどのように測られるのかを見てみましょう。



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