No.301
2006.4

ISASニュース 2006.4 No.301 


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衛星の声を届けるJAXA第1期生

システム開発部情報システム開発グループ 関 妙 子  

せき・たえこ。
1979年、神奈川県生まれ。
東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻修士課程修了。
2004年、システム運用部情報処理グループ。
2006年4月、システム開発部情報システム開発グループ。
科学衛星データベースシステムSIRIUSの開発・運用、ロケットテレメータの受信・解析、小型テレメータの開発・試験などを行う。


 dash   JAXA第1期生ですね。宇宙研への配属を希望していたのですか。
関: はい、希望通りでした。大学では磁気圏観測衛星「あけぼの」のデータを使って磁気圏の研究をしていましたから、データ処理など宇宙科学に携わる仕事をしたいと思っていたのです。
  
 dash   どういう仕事をされているのですか。
関: SIRIUSという科学衛星テレメトリデータベースシステムの運用と構築がメインの仕事です。SIRIUSには、宇宙研の科学衛星から送られてきたデータがすべて、ほぼそのまま収録されています。しかし、SIRIUSは表に出るデータベースではないため、誰もが知っているわけではありません。私自身、大学で「あけぼの」のデータを使っていながら、SIRIUSの存在を知りませんでした。皆さんが使っている理学データベースDARTSと工学データベースのEDISONは、SIRIUSに収録された生データを処理したものです。
  
 dash   SIRIUSを運用していると、科学衛星から送られてきたデータを、いち早く手にしていることになりますね。
関: 科学衛星からのデータは内之浦宇宙空間観測所や海外の受信局で受信し、一度別のサーバーに保存されます。私たちの仕事の一つは、毎朝そのサーバーからデータを受け取り、時刻の修正などを行った上でSIRIUSに収納することです。その場でデータを解析するわけではないので内容は分かりませんが、極端にデータ量が減ったり増えたりすると、その衛星に何かあったという程度のことは分かります。「あけぼの」は1989年に打ち上げられた長寿衛星です。海外で受信した「あけぼの」のデータは週に一度送られてくるのですが、データを確認できると、“ああ、生きている”と安心します。通信が途絶えていた「はやぶさ」からのデータが久しぶりに届いたときは、うれしかったですね。「はやぶさ」からデータが届いたことを、運用している研究者と同じように喜ぶことができたのが、とても印象的でした。
  
 dash   ISASメールマガジン71号(1月17日発行)では、「ドンガラ出張記」と題して、オーストラリア・ドンガラでのテレメータ受信試験の様子を紹介されています。ロケットから送られてくるデータを受信する仕事もされているのですね。
関: そうなんですよ。私の上司がSIRIUSを開発したのですが、その方がロケットのテレメータについてもやっているので、成り行きで私も参加することになったのです。正直に言うと、ロケットにはまったく興味がありませんでした。でも、やってみたら、これが面白い。

 ものすごいスピードで飛ぶロケットを追尾して信号を受信するのは、とても大変。新米の私は毎回ヒヤヒヤです。実はこの仕事をするまで、ロケットというのは打ち上げたら、あとはただ飛んで行くだけのものだと思っていました。実際は、ロケットから送られてくる信号を受信して、それを解析し、制御や誘導の信号をロケットに送る、ということをリアルタイムでやっている。驚きました。希望通りデータ処理の仕事ができて満足していましたが、意外なところで新しい世界が広がりました。

  
 dash   子どものころの夢は?
関: 幼稚園のとき、将来の夢は“科学者”と書いた覚えがあります。白衣を着てかっこいい、というイメージがあったのでしょう。
  
 dash   実際、宇宙科学に携わる仕事に就いて、どうですか?
関: 作業着を着て力仕事をしています。ずいぶんイメージと違いますね。SIRIUSやテレメータは、主に室内の仕事です。でも、宇宙研の特色というか、それがいいところなのですが、現場で実際に物に触る機会も多いのです。昨年、ペンシルロケットの再現実験に参加したことは、とても勉強になりました。能代多目的実験場での予備実験では、猛暑の中、作業着にヘルメット、軍手という姿で朝から晩まで汗だくになって走り回っていました。こんなことをしている女の子って……とも思いましたが、嫌いじゃない。性に合っているのでしょう。
  
 dash   この先の夢は?
関: SIRIUSをより使いやすいものに改良していきたい。「あけぼの」やGEOTAILに続く磁気圏の科学衛星ミッションにも携わりたいです。データを処理するという立場で参加する人がいることも、ミッションにとって必要だと感じています。
  
 dash   今年も宇宙研に新しい仲間が加わりました。後輩たちに期待することは?
関: 2年前に私が入ったとき、JAXAの名前はほとんど知られていませんでした。でも、「はやぶさ」が活躍し、ロケットの打上げも連続で成功し、新しい衛星が順調に動き始めているおかげで、日本の宇宙開発も一般の人から注目されるようになってきました。今では、JAXAあるいは宇宙機構という名前を、多くの皆さんが知ってくださっています。日本の宇宙開発を支えていくぞ、という意気込みのある人に、どんどん入ってきてほしいですね。私も頑張ります。


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