No.301
2006.4

ISASニュース 2006.4 No.301

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NASA月惑星科学会議「はやぶさ」特別セッション 

会津大学コンピュータ理工学部 出 村 裕 英 


 2006年3月は、記念すべき節目の一つとなりました。アポロ計画以来連綿と続いてきたNASA・LPI(Lunar and Planetary Institute)主催の第37回月惑星科学会議において、初めて日本深宇宙探査プロジェクトの特別セッションが組まれたのです。日本からは運用・解析に携わった私たち若手研究者・ポスドク・大学院生が大挙して乗り込みました。会議初日の小惑星サイエンス一般のセッションでも「はやぶさ」を意識した発表や議論が見られ、前夜のポスターセッションを経て大きく盛り上がり、当日は「はやぶさ」の成果を13人でリレーしながら午前いっぱい語り、そのたびに万雷の拍手とどよめきがありました。夢のような1週間を振り返ります。


3月12日(日)

 現在進行中の深宇宙探査は、多かれ少なかれNASA深宇宙局ネットワークの恩恵を受けており、米国内プロジェクトだけでなく国際協力ミッションの成果をアピール・議論するために世界中から人が集まってきます。この月惑星科学会議LPIレセプション会場は、プロジェクトをまたぐ年1回の再会の場でもあり、あちこちで「お久しぶり、元気?」という光景が見られます。


3月13日(月)

 会期中の成果発表で群を抜いて多いのは「火星探査」。全43セッション中、火星絡みは13もあり、小天体関係はそれに次ぐ7つが組まれました。そこでは、「はやぶさ」を意識した質問が何度かありました。昨秋、ウェブで公開したイトカワの素顔が瞬く間に世界を駆け巡りましたが、画像がみんなの共通理解の基盤となっていることをあらためて実感しました。


3月14日(火)

 「はやぶさ」メンバーの“ほっと一息”。JAXAヒューストン駐在事務所の山本さん、土井宇宙飛行士、そして海外共同研究者であるAbell、Zolensky両博士のセッティングで、NASA施設の特別見学ツアーがありました。Stardustミッションの分析室は、「はやぶさ」キュレーション施設(回収試料の初期分析、分類、カタログ化、保管などを行う施設)を想起させ、印象的でした。


3月15日(水)

 ディナー・イベントに向かうバスで、海外生活の長い日本人研究者のご家族とたまたま同席に。専門外であっても聴きに来たいとのこと。「はやぶさ」の注目度の高さに、少しうれしくなりました。


3月16日(木)

 「はやぶさ」合同サイエンス会議。川口プロジェクトマネージャーより復旧運用に至る経過と現状が説明され、次いでデータの取り扱い、論文成果公表について確認がなされました。直後から「はやぶさ」のポスターセッション。芋を洗うような大混雑、大盛況でした。


3月17日(金)

 冒頭に述べた通り、歴史的なセッションとなりました。川口プロジェクトマネージャーのコメントを引用することで、この文章を締めさせていただきます。

 「400人も入る大きなホールは聴衆でいっぱいになりました。(中略)藤原先生は別として、こちら側の発表者はみな若い。これは、とても良いことだと思います。みな物おじせずに、堂々として素晴らしかった。質問にはこの分野の著名な研究者、小惑星研究の大御所が次々と立ち、こちらの若手発表者にとっては、教科書や文献でしかお目にかからない人もたくさんいたはずです。逆に彼ら専門家にとっても、疑問がいっぱいで、面白くて仕方ない様子でした。質問に織り交ぜて、“beautiful work”“great achievement”と賛辞を頂きました。会場からは拍手が起き、私は理学者ではありませんが、非常に誇らしく思いました。観測をしてデータを手にした者だけが語れる、真実のみが語れる迫力があったと思います。時として、観測データや精細画像に息をのみ、聴衆が静まり返る瞬間もありました。こちらの発表者は、事実を背景に自信に満ちていたと思います。(中略)観測器を搭載できて、本当によかったと思います」

 皆さま、本当にありがとうございました。

「はやぶさ」特別セッション会場の様子

(でむら・ひろひで) 


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