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恒例の標記懇談会が,さる3月3日に,霞ヶ関ビルの会場にて開かれた。新聞社・テレビ局の科学論説委員,解説委員等15社17人の方々が出席された。
西田所長による宇宙研の全体的な現況報告に続き,M-V(小野田),はるか(平林),あすか(井上),GEOTAIL(星野),MUSES-C(川口)の各プロジェクトについて紹介があった後,活発な質疑応答が行われた。各担当教官の説明には,本来難解な科学・技術の内容を解り易く話す努力が伺われ,好評であった。論説委員の方々からは,省庁統廃合や予算の頭打ちという外部状況の中で,宇宙科学の広報活動を活発化していく重要性についての助言を頂いた。
(中谷一郎)
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日本時間2月27日未明,カリブ海を中心とする地域に皆既日蝕が見られた今世紀,最後から2番目の皆既日蝕である。地上観測隊が束の間のカリビアン・ナイトを楽しんでいる頃,「ようこう」も,皆既帯こそ逸したが,7年にならんとする観測期間の中で一番深い部分蝕に遭遇することができた。
大変な精度で太陽を自動追尾している衛星に,日蝕を観測させることは実に難しい。姿勢系には欠けて暗くなりゆく太陽を太陽とは思わせず,観測系にはあれこそが太陽だと思わせる必要があるからだ。1995年10月24日の時も観測はうまくいったものの,最後になってだまされ続けていた姿勢系が「太陽を見失しなった」と騒ぐことがあった。今回はその経験も生かして慎重な準備を重ね,全てがうまくいく結果となった。
X線で部分蝕を観測するメリットは,一つには観測望遠鏡の散乱光特性の確認であり,もう一つは月の運動を利用して,本来観測器の持っている空間分解能を上回る観測ができることである。更に今回は,初めて「SOHO」衛星との共同観測が実現し,大いにその成果が期待できる。地上観測も成功したようだ。活動の極小期を通過した太陽面には,新周期起源の活動領域が中高緯度に点在し,軟X線分光観測との協力により,それらの活動領域の温度構造についても情報が得られるものと期待している。
(国立天文台・渡邊鉄哉)
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昨年10月27日より始まった標記試験が,宇宙研の飛翔体環境試験棟にて進行中である。
PLANET-Bは,今年の夏期にM-Vにより打上げが予定されている火星探査機である。各サブシステムの組付けと各種試験が続き,2月には温度試験,3月には振動・衝撃試験が行われ,担当者達は,自分の愛児がいじめられているような苦しみ(?)を味わうこととなった。
4月上旬には,次の「いじめ」,熱真空試験が始まる。表紙の写真は,スペースチェンバに入れた直後,扉を閉じる直前の探査機の様子を示す。扉を閉じた後,チェンバ内を真空に引き,熱サイクルの試験を約10日間にわたって行う。その後,5月下旬まで各種試験が続き,内之浦のフライトオペに向けての移動は,6月初め,打上げウインドーの初日は,日本時間7月4日である。
(中谷一郎)
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現在新聞・テレビ・雑誌各社で直接宇宙科学・宇宙開発の取材にあたっている記者(現役記者)のみなさんに,宇宙科学研究所の活動についてよりよく知っていただくことを目的とした懇談会が,さる3月19日に霞が関ビルの東海大学校友会館で開かれました。27名の記者が出席され,宇宙研からも西田所長他18名が出席しました。
所長の挨拶の後,昨年2月にデビューしたM-Vロケット(小野田),はるか(平林)について説明し,現在活動中の衛星のうちあすか(井上一),GEOTAIL(星野)の主要な成果を報告,さらに将来計画の中からPLANET-B(鶴田),MUSES-C(川口)が紹介されました。
つづく質疑・懇談では,それぞれのプロジェクトについての立ち入った質問がなされたり,所長が冒頭の挨拶で述べた行政改革・宇宙科学研究所予算の問題について,さまざまな議論が展開されました。この試みは,長い間構想されていたもので,今回初めて実施にこぎつけました。出席した記者の側からは,「記者会見の時のトピックだけを追う情報だけでなく,宇宙科学研究所の日常業務や射程距離の長いプロジェクトなど生きた姿を知ることができて本当によかった」との感想が寄せられ,宇宙科学研究所の一同も,今後のジャーナリズム対応に大きなヒントが得られたものと確信しています。
(的川泰宣)
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今年の7月に火星へ向けてPLANET-Bを打ち上げるM-V-3号機のKSCでの準備作業が3月10日から始められました。今回のオペから打上げ準備作業の効率化を図るため,TVCまわりの単体動作確認,ロケット各段の組立やノーズフェアリングの整備と,これらに伴う各種計測や計装の準備を中心とした第1組オペとして実施され,動作チェックや地上系のチェックなど搭載計器全体に火を入れて行う作業は4月後半から行われる第2組オペが初めてとなります。前回の1号機では初めての機体を扱う上での予期しない出来事が数多く発生しましたが,さすがにその反省が生かされ,今回のオペでは不具合は2件を数えるにとどまり,スムーズに次のオペにつなげることができたと思います。以後5月中旬までの第2組オペでの各段の結合とロケット全段での動作チェック,6月前半にはPLANET-BのKSCへの搬入,6月後半からロケットのフライトオペと作業は続きます。
(稲谷芳文)
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宇宙実験・観測フリーフライヤ(SFU)は1995年3月に宇宙開発事業団のH-IIロケット3号機によって種子島宇宙センタから打ち上げられ,翌1996年1月にスペースシャトル「エンデバー号」によって回収され,ケネディ・スペース・センタに帰還した日本で初めての再利用型宇宙プラットフォームである。
この衛星の設計・製作,地上で行われた数々の試験,打上げ,運用,回収,研究成果の発表までの全過程を分かりやすく説明したビデオ「再利用型衛星「SFU」−人類の果てしなき挑戦」が,(財)機械産業記念事業財団主催,通商産業省,(社)経済団体連合会,(社)映像文化製作者連盟が後援する「'98年TEPIAハイテク・ビデオ・フェスタ」に於て200作品の中から奨励賞を受賞した。審査員は,映像評論家,科学評論家,技術系大学・美術大学・教育研究所の専門家,後援団体代表者で審査の基準は,企画・演出・構成・映像表現が優れているかという一般総合的な判断の他に,ハイテクの役割・重要性・存在意義の伝達力があるか,演出技術の水準が高く視聴者が理解しやすい工夫をしているか,ハイテクを建設的な視点でアピールしているか,が問われた。第1次審査結果講評の一部を紹介すると,「今回も前回同様,不況を反映してか企業関係に意欲的な作品が少ない。特に時代の先端を走っているはずの「電子」「機械」の分野では全く見るべきものがない。そこで結果的に「ハイテク総合」から選出が多くなった。」と手厳しい。その上で「この分野は業種分類の枠を越えてハイテクの意味を様々に捕らえている作品が集まっているので,その中でも人間とハイテクが良き共存共栄を築いていることを表現した作品に目が向いた。」と評している。そう言えば今回受賞した作品の中に,「SFUは故障しても,身が半分になっても必ず帰還することが最優先の要求である」が図らずも実践された太陽電池パドルの宇宙空間での切り離し,その作業を行う宇宙飛行士や相模原運用センタの緊迫した映像,切り離し成功の人々の歓喜,宇宙から帰還した衛星をいたわる関係者の姿などを映像として取り入れた。ひょっとしてこの様なシーンが評価されたのか,あるいは回収を終えた宇宙飛行士からお土産をもらっている嬉しそうな共和小学校児童の表情が評価されたのか?
今回のビデオ製作で筆者が一番注意したのはビデオ作りの基本の「迷ったら切る」で,いかに短い作品に仕上げるかであった。これは本来の目的であるSFUプロジェクト全体を記録として残す事と判りやすく簡潔にまとめる事との妥協点を決める事である。作品の中では割愛され映像化されていない様々な苦労や困難がこのプロジェクトを成功に導いた事を特筆し,全てのSFUプロジェクト関係者と暖かく見守っていただいた宇宙科学研究所全職員を代表して授賞式に参加した。
SFUプロジェクトとビデオ編集に深く関係した者として今回の受賞は個人的にも本当に嬉しく関係者全員に感謝したい。このビデオは貸し出し用が用意してあるので,希望者は遠慮なく申し出て戴ければよい。写真は3月20日に行われた表彰式の様子。
(清水幸夫)
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