宇宙科学談話会

ISAS Space Science Colloquium & Space Science Seminar

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小望遠鏡動画観測が解明する太陽系の影と閃光

有松 亘(ありまつ こう)
京都大学 白眉センター

口径0.28mの小型観測装置を用いながら、外部太陽系の小天体に関する新たな知見をもたらす2つの観測プロジェクト、OASESとPONCOTSについて紹介する。OASES(Organized Autotelescopes for Serendipitous Event Survey)は未知の太陽系外縁天体による恒星掩蔽現象の検出を目的として、沖縄県宮古島市にて小望遠鏡2台を用いて実施した可視動画モニタ観測プロジェクトである。2016年から2017年にかけて実施したOASESモニタ観測により、キロメートルサイズの太陽系外縁天体による恒星掩蔽イベント候補の検出に史上初めて成功した。このOASESの観測成果は太陽系外縁部の新たな知見を与えただけでなく、本プロジェクトが題材になった小説(オオルリ流星群, 伊与原 新 著, KADOKAWA)が刊行されるなど、一般社会にもインパクトをもたらした。
PONCOTS(Planetary ObservatioN Camera for Optical Transient Surveys)は、新型コロナウイルスの感染拡大によってOASESプロジェクトが休止して暇になったことに伴い、2021年9月に京都大学吉田キャンパス施設屋上で開始した木星動画モニタ観測プログラムである。2021年10月15日にはこのPONCOTSプログラムによって、史上9例目となる未知小天体の木星衝突に伴う閃光イベントを発見した。PONCOTS観測システムはこの木星閃光の3波長同時動画観測に史上初めて成功し、閃光の波長特性や衝突天体の質量・サイズを明らかにした。本談話会ではOASESとPONCOTSのこれまでの経緯と成果、今後の所期を概括する。

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