TOP > トピックス > トピックス > 2007年 > S-310-37号機観測ロケット実験速報
S-310-37号機観測ロケット実験速報
実験の概要
下部電離圏 のSq電流系 中心付近に発生する高電子温度層の生成メカニズム解明を主目的とした観測ロケットS-310-37号機は、2007年1月16日(火)午前11時20分に内之浦宇宙空間観測所から打ち上げられた。 ロケットは当初の目的通りSq電流系中心付近に存在する高電子温度層を通過し、世界で初めて電子温度上昇が生じている領域で電子密度擾乱、エネルギー分布関数、電場、磁場のプラズマ総合同時観測を行った。 図1は実験のイメージ図。地上での磁場観測により、Sq電流系中心がロケットの軌道に近い位置にある事を見極めて打上げを行った。ロケットは高度100km付近に高い電子温度の層があることを観測した。
主な観測結果
- 電子温度測定器により高度97〜101 kmに高い電子温度層の存在を確認。
温度上昇幅は背景に対し最大500〜600 K(ケルビン )。(図2左側) - 電子密度擾乱測定器は、電子温度が上昇している領域からさらに高い高度(97〜120km)までに強い電子密度擾乱(小さな空間スケールで変化する密度のゆらぎ)を観測した(図2右側)。
これはプラズマ不安定現象の存在を示唆するものである。 - 100km付近の高度において、他の搭載機器が温度変化に対応する電場と磁場の変化を観測。
電子加熱が電磁場と深い関係をもつことを示唆している。
今後の詳細な解析により、その物理過程が解明されるであろう。 - Sq電流系中心において、これらのプラズマ総合同時観測を行ったのは世界で初めてである。
- ロケットに搭載された観測機器の中で、超熱的プラズマエネルギー分布計測器と3軸電場測定器という世界的にもユニークな2つの観測機器がいずれも成功裏にデータを取得した。
搭載機器名 | 観測項目 | 担当機関 |
---|---|---|
超熱的プラズマエネルギー分析器 | 電子エネルギー分布 | ISAS/JAXA |
ラングミューアプローブ | プラズマ(電子)温度・密度 | ISAS/JAXA、東京理科大学 |
電子密度擾乱測定器 | 微小スケール電子密度擾乱 | ISAS/JAXA、京都大学 |
電子温度測定器 | プラズマ(電子)温度 | ISAS/JAXA |
電場・中波帯測定器 | DC電場、中波帯電波 | 富山県立大学、ISAS/JAXA、京都大学 |
磁力計 | 磁場 | 東海大学 |
太陽センサー | 太陽角 | 東海大学 |
地平線センサー | 地平線方向 | SAS/JAXA |
場所 | 観測項目 | 担当機関 |
---|---|---|
芦別(北海道)、女川(宮城県)、久住(大分県)、沖縄 | 磁場 | 九州大学宙空環境研究センター 情報通信研究機構 |
2007年2月8日