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ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第504号

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ISASメールマガジン   第504号       【 発行日− 14.05.20 】
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★こんにちは、山本です。

 22日(木)にNHKでコズミックフロント「飛べ!日本の夢〜イプシロンロケット開発秘話〜」が放送されます。

本放送:5月22日(木)22時〜22時59分
(再放送:5月26日(月)23時45分〜24時44分)

お見逃しなく!

 また、24日(土)には 新しい「きりん座流星群」の出現が予想されています。きりん座は天の北極に近いので、北極星を目安に空を見るのが良いそうです。

 出現予想時刻は 16時40分頃なので、薄明かりの中流星を見ることができるでしょうか?余裕のある方は頑張ってみてください。

 今週は、ASTRO-Hプロジェクトチームの飯塚亮(いいづか・りょう)さんです。

── INDEX──────────────────────────────
★01:あつまれ〜あつまれ〜エックス線
☆02:「だいち2号」(H-IIA-24号機)打上げパブリックビューイング
    【JAXA相模原キャンパス】
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★01:あつまれ〜あつまれ〜エックス線


ASTRO-Hプロジェクトチームの飯塚亮といいます。初投稿でとても緊張していますが、できるだけゆるい感じを目指して書いてみたいと思います。


せっかくなので、まずは自己紹介してみます。神奈川県生まれ・育ちで(伊勢原市というところです)、天文・宇宙が大好きな少年でした。小学校高学年ぐらいのときに、宇宙研が相模原市に移転したのがきっかけで(だと思いますが)、「宇宙科学研究所」「宇宙研」という名前をちらほら目や耳にしていたような気がします。もしくは、同じ神奈川県にあったから、何か気になっていたのかもしれません。


ですが、宇宙研の詳しいことはよく知らず、しばらく時が過ぎます。となりの淵野辺公園には時々遊びにきていたのに、宇宙研は得体の知れない特殊機関みたいなイメージがあったような。

しかし、何かのきっかけで、一般公開のことを知り、高校生のときに宇宙研に入りました。内容は全然覚えてないのですが(記憶力がなくてほんとすいません)、とある理由があって衛星を作る必要があって、装置を自分たちで作って、衛星をロケットで打ち上げて、宇宙を観測し、研究している人がいるんだ、ということを知りました。


「そんなの当たり前でしょ」と思うかもしれませんが、当時の自分にはこの認識はなくて、特にやっていることが「一貫」しているのに感動したんだと思いますが、いろいろすげーって思った記憶があります。


このきっかけで、いつか自分も宇宙研で、自分たちで作った衛星をあげて、宇宙を研究してみたいと思いました。大学では物理、天文、物作りのことを学んで、大学院では、宇宙研に籍を置ける研究室を選んで受験して、宇宙研に入ることができました。

5年間、大学院生でありながら、衛星に実際に載せる望遠鏡を作って、衛星をあげて、観測をして、という自分が思い描いていた「一貫」した研究をして、卒業できたことは、今思うととても幸運だったと思います。そのあと、いろいろ転々としましたが、縁あって、昨年度の4月から宇宙研で働いています。宇宙研にまた身が置けていることに感謝をしつつ、今は、日々ASTRO-H衛星と格闘をしています。


さて、すごい長い自己紹介になってしまいましたが、何度もでているASTRO-Hとは何か。ASTRO-Hは、日本で6番目のX線で宇宙を調べる衛星で、2015年打ち上げを目指して、今、いろいろな人がものすごくがんばって開発が進めてられています。

X線で宇宙を調べる?と、いきなりクエスチョンマークがでてしまうと思いますが、今回はここは深入りしません。一言で言えば、X線は極限状態にならないと天体からでてこないので、大爆発とか超高温とか、宇宙のそれはそれは「やばい」世界を見ることができます。1つの例が少し前の回の499号などにあるので、ぜひそちらもご覧ください。


そんなやばい世界を見るためには、一般的に天体観測をするのと同じで、X線を集める望遠鏡とカメラが必要です。自分は、特に、ASTRO-Hに載せる望遠鏡の開発と測定をしていますので、その話をしてみたいと思います。


X線を集める望遠鏡は、お店で売られている望遠鏡とは全然違っていて、もし、望遠鏡をお見せできる機会があったら、さぞかしびっくりすると思います。「え、これが望遠鏡?」って。ではどんな形なのか、メルマガで説明するのは難しそうですが書いてみます。


望遠鏡として使えるためには、光を曲げて集める必要がありますが、X線は、レントゲン写真などに使われるように透過力が強いため、普通の反射望遠鏡や屈折望遠鏡は使えません。どうするかというと、X線は金属などに非常に小さい角度で当てると反射をするようになるので、その原理を利用します。

例えるならば、バーククーヘンみたいな感じです。バームクーヘンって、層が同心円にいっぱい並んでますよね?あんな感じで、1つ1つ丸い茶色い薄いところが、鏡になっています。


バームクーヘンと違うところは、鏡のところにはできるだけX線を集められるように、アルミニウムの丸い薄い板に、金やプラチナがコーティングしてあります。あと、その1つ1つの層が円筒ではなく、メガホンみたいな円錐型に若干角度がついていて、そこに当たると、X線が遠くに集まるようになっています。そして、本当にあのバームクーヘンぐらいの間隔で、薄い反射鏡が多数入っています。


このような構造のため、視力はあまりよくありませんが、軽量ながら、たくさんのX線を集めることができます。どのぐらいの鏡を使っているかというと、1枚1枚ばらして並べていくと、およそ新聞紙150枚程度です。想像がつかないと思いますが、口径8メートルのすばる望遠鏡の鏡と同じぐらいになります。しかし、薄い角度で当てるように並べているので、口径は45センチしかありません。うーむ、形、なんとなく伝わりましたかね。


もっと大きいの作らないの?
ってと思うかもしれませんが、これ以上を大きくしても、外側は曲がる角度が大きくなって、X線が反射しなくなるので、意味がありません。しかし、天体からやってくるX線はとても少ないので、できるだけ多くのX線を集めるために、ASTRO-Hでは望遠鏡を4台載せます。4台それぞれ集まるところに、カメラを載せるという仕組みになります。詳しくは、以下のところに写真などがありますので、ぜひごらんください。
(⇒ 新しいウィンドウが開きます http://astro-h.isas.jaxa.jp


形の説明はそんなところにして、ASTRO-Hに載せる望遠鏡4つは、数年をかけて、昨年度すべて完成しました。

そして、今現在は何をしているかというと...

望遠鏡ができたら終わりではありません。宇宙研にあるX線を出す装置を使って、実際に望遠鏡にX線を当てて、ほぼ毎日、望遠鏡の性能を調べています。多数の鏡が入っているため、普通の望遠鏡と違って複雑な応答を示します。打ち上げて天体を観測するときに困らないように、あらかじめいろいろなことについて測っておいて、望遠鏡の個性を知っておくのが目的です。


そのため、1台あたり半年ぐらいの時間をかけます。ほぼ毎日測定です。大学院時代は、5番目のX線天文衛星「すざく」の望遠鏡を作ったり、測ったりしましたが、そのときの望遠鏡は5台もあって、全部測るだけで数年かかりました。 そんな長丁場の測定ですが、望遠鏡が示す測定データに、日々、
「おっいいね!」
「うーんだめだ!」
「なんだこれは?」
「あれ失敗した!」
「測定おわらん!」
とか、一喜一憂しながらも、がんばっています。


それもこれも、今まで見たことがないさらなる「やばい」世界をいつかASTRO-Hが見せてくれるに違いない!という気持ちが日々がんばれる原動力です。というわけで、ASTRO-H、ぜひご期待ください。応援よろしくお願いします。

(飯塚亮、いいづか・りょう)

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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※