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ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第498号

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ISASメールマガジン   第498号       【 発行日− 14.04.08 】
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★こんにちは、山本です。

 週末の【春の嵐】で、花びらの小道が相模原キャンパスのあちこちに出現しています。今年のサクラも もう見納めでしょう

 月曜なのに展示室に大勢の見学者が……某大学の団体がガイドのHさんやNさんと屋外へ出て行っても、親子連れの見学者が残っていました。まだ新学期が始まっていない学校もあるようです。

 帰りがけにNさんたちに玄関ホールで会いました。
これからまだ仕事があるとのことです。次の相手は、JAXAの新人さんたちです。ご苦労様です。

 今週は、学際科学研究系の山本幸生(やまもと・ゆきお)さんです。

── INDEX──────────────────────────────
★01:アポロ月震計のデータで遊ぶ
☆02:宇宙科学講演と映画の会【新宿区四谷区民ホール】4月12日(土)
☆03:君が作る宇宙ミッション参加者募集(締切:6月2日(月))
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★01:アポロ月震計のデータで遊ぶ

 アポロ計画はケネディ大統領が1961年に人類を月に送る発言をしたことから始まりました。冷戦さなか、はじめての宇宙飛行をソ連に奪われてしまった米国の、プライドから発せられた言葉でした。


 その後数十年の月日が経ち
「アポロ計画は嘘だった」
「人類は実は月に行っていない」
という、にわかには信じられないような報道が世界中を駆け巡りました。もちろん日本のテレビ番組でも取り上げられ、宇宙研の同僚とともに、そんなばかな、と思いながらも、欠かさず見ていたことを記憶しています。


 アポロ計画は月面有人探査ミッションが有名ですが、科学的にも重要な実験を幾つか行っています。その中でも11号から16号まで搭載されたのが「地震計」です。月の内部構造を調べるために搭載され、宇宙飛行士が設置しました。月の地震、すなわち月震(げっしん)の測定を、複数の異なる場所で同時観測を行うことにより、地球同様、震源を決定することができます。


 アポロ計画は有人探査ミッションということで安全が最優先でした。そのため着陸地点は月の表側かつ赤道付近に集中しています。したがって震源を決定するには、制約の多い条件で設置されました。


 2年ほど前に、宇宙研のウェブサイト
(⇒ 新しいウィンドウが開きます http://darts.isas.jaxa.jp/planet/seismology/)から、このアポロ月震計のデータを公開しました。これは1990年にテキサス大学から宇宙研に送られてきた、8mmカセットテープ(VIDEO8;通称V8)をDATドライブを使って吸い出して、ハードディスクに保存したものです。


 このアポロ月震計のウェブサイトは、
「なぜ宇宙研からNASAのデータを公開しているの?」
と良く尋ねられます。

こと月震計に関しては、宇宙研が深く関与しています。40年前にアポロが取得した月震データは、テキサス大学の中村吉雄先生によって整備されました。その20年後に、元宇宙研の水谷仁先生の協力の元、7-trackテープから8mmカセットテープへと移されました。このコピーが宇宙研にも送付され保存されていたという訳です。


 最初にそのテープを読み出したとき、劣化したために読み出せないテープが数本見つかりました。これを補うため、送付元であるテキサス大学に行き、オリジナルのデータをコピーさせて頂きました。こうして人類が保有する月震のデータを完全な形で保存することができました。


 アポロで取得した月震データは、NASAのデータセンターであるNSSDCや、米国の地震研究所IRISからもダウンロードすることができます。しかしアポロ11号のデータはなく、また15号や16号のデータがごっそり抜けています。したがって完全な形でダウンロードできるのは、今のところ宇宙研のウェブサイトだけです。国際学会などで外国の研究者から「使ってるよ」と聞くと嬉しくなります。


 最後に、ミーハーな話題で締めくくりたいと思います。アポロ11号の月震計は、初めて月面に降り立った実験的な装置であったこともあり、科学研究には不向きです。熱対策が十分にされておらず、かなりノイズの大きい装置でした。

それでも「アポロ計画は本当にあったのか?」ということを検証するお遊び程度には使えるだろうと考えています。アポロ11号のタイムライン
(⇒ 新しいウィンドウが開きます http://history.nasa.gov/SP-4029/Apollo_11i_Timeline.htm)と比較しながら月震計の波形を見ると、新しい発見があるかも知れません。ちなみにデータを見た私の結論は「アポロ計画はあった」です。

(山本幸生、やまもと・ゆきお)

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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※