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ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第478号

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ISASメールマガジン   第478号       【 発行日− 13.11.19 】
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★こんにちは、山本です。

 国立天文台のすばる望遠鏡に新しく搭載された超広視野主焦点カメラHSCが、アイソン彗星の姿を捉えました。長く延びる尾を鮮明に写し出しています。
(⇒ 新しいウィンドウが開きます http://subarutelescope.org/Topics/2013/11/17/j_index.html

 先週、今週と「はやぶさ」の話題が続きます。(今回は「はやぶさ2」ですが…)

 「はやぶさ2」の打ち上げは、2014年度に予定されていて、開発も急ピッチで進んでいます。

 今週は、宇宙飛翔工学研究系の佐伯孝尚(さいき・たかなお)さんです。

── INDEX──────────────────────────────
★01:色々と満足でした
☆02:新星爆発の瞬間の観測に成功ーMAXIが「火の玉」をとらえたー
☆03:宇宙講演会 〜子どもから大人まで宇宙に夢中!〜
    【お茶の水女子大学】12月1日(日)
☆04:宇宙学校・いさ【大口ふれあいセンター】12月14日(土)
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★01:色々と満足でした

 こんにちは、はやぶさ2プロジェクトで「衝突装置」という機器を担当している 佐伯(さいき)と申します。今回はその衝突装置について書かせていただきます。


 2011年の6月14日配信のメールマガジン(第351号)で、「小惑星を穿つ」というタイトルで、「はやぶさ2」の衝突装置の紹介をさせていただきました。あれから既に2年以上の月日が経ちました。本当に月日が経つのは早いものです。あのメールマガジン以降、衝突装置の開発を急ピッチで進めてきて、幾つもの開発試験を実施してきました。先日NHKのニュースで衝突装置の試験の様子が放送されたのを受けまして、執筆依頼をいただきました。


 まずは、「はやぶさ2」と衝突装置についてのおさらいですが、「はやぶさ2」は言わずと知れた小惑星探査機はやぶさの後継機です。

今回「はやぶさ2」が向かう小惑星は1999JU3という小惑星です。衝突装置は、その小惑星に、人工クレータを作るための装置です。人工ク レータを作り、その中を観察することで、小惑星の表面だけでなく内部の情報を得ることができるようになりますし、更にクレータ近傍でサンプリングをすることで、小惑星内部のサンプルを取得することが可能となります。


 人工クレータを作る方法としては、高速な金属の衝突体を小惑星にぶつける方法を採用しています。衝突体を加速するためには、高性能の爆薬を使用します。爆薬を使用することで、2000m/sというスピードまで、超短時間(1/1000秒以下)で加速することが可能となります。 これにより、加速のための距離をとる必要がなくなり、シンプルなシステムで小惑星に衝突させることが出来るのです。


 今回ニュースで取り上げられたのは、その衝突体を加速する部分の試験でした。爆薬を使用したこの部分のことを我々は爆薬部と呼んでおります(安易なネーミングですね)。

この試験の目的は、実機と同等の爆薬部に点火した際に生成される衝突体の、速度、形状、飛翔方向精度が設計通りであるかを確認するというものでした。試験は、大量の爆薬を使用するということで、一歩間違えば大変なことになるため、非常に緊張しました。もちろん安全には細心の注意を払っているのですが、やはり全ての試験が終わるまでは緊張しっぱなしでした。ただ、この様に書いているものの、爆薬は非常に安定ですし、点火系については安全機構をもっているのでご安心ください。


 話を戻して、試験結果についてですが、大変良好で、速度、形状についてはほぼ設計通り、飛翔方向性度についても、100m先の的を的確に射抜くことができ、非常に満足できるものでした。この爆薬部については、私も経験のなかった部分で開発には色々と苦労を重ねました。それが今回の試験で成功したことで開発をほぼ完了することができました。試験終了後はメーカーの担当者さんと抱き合って喜びました。


 満足できたのは、試験結果だけではありません。今回の試験は、岐阜県の飛騨市神岡町というところで実施したのですが、この街が非常に満足でした。神岡町はスーパーカミオカンデで知られるように、宇宙ともつながりが深い町ですし、水も綺麗で自然もとても豊かです。

更に、飛騨という名前でお分かりの通り、美味しいお肉もありますし、富山から近いため海の幸もいただくことが出来ます。試験隊の皆で食事に行く際に、美味しい海の幸、山の幸を頂く機会もあり、この点で特に満足しました。

また、規模の大きな試験でしたので、多くの試験隊の皆様と色々語り合えたのも良かったです。皆様も是非、神岡に足を運んでみたらどうでしょうか?


 爆薬部については開発終了ですが、その他の部分では、幾つか試験が残っておりますし、打上げ後の運用についても色々検討すべきことが盛り沢山です。今回の試験結果に浮かれること無く、打ち上げに向けしっかりと準備を進めていきたいと思いますので、皆様どうぞこれからも、「はやぶさ2」と衝突装置のことをよろしくお願いいたします。

(佐伯孝尚、さいき・たかなお)

ISASメールマガジン 第351号【小惑星を穿つ】
http://www.isas.jaxa.jp/j/mailmaga/backnumber/2011/back351.shtml

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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※