宇宙航空研究開発機構 サイトマップ

TOP > レポート&コラム > ISASメールマガジン > 2013年 > 第464号

ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第464号

★★☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ISASメールマガジン   第464号       【 発行日− 13.08.13 】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

★こんにちは、山本です。

 昨日から 相模原キャンパスの人口が少ないような感じです。
廊下を歩く人の数も、普段よりグッと減っています。

 今日は 旧暦の7月7日・七夕です。2011年から始まった「伝統的七夕ライトダウン」の当日です。

 明かりを消して夜空を見上げて、上弦の月と土星が並んでいるところ眺め織姫と彦星を探して、アルビレオを見つけましょう。

 本当は、今日の未明がピークのペルセウス座流星群ですが、あと1週間程度は、普段より多くの流星を見ることができるそうです。夜中過ぎに 北東の空を眺めてみましょう。

 今週は、宇宙物理学研究系の大井 渚(おおい・なぎさ)さんです。

── INDEX──────────────────────────────
★01:特別公開:宇宙への思いを一つに
☆02:「はやぶさ2」応援企画展
     片道から往復へ〜新たな宇宙時代の到来〜【相模原市立博物館】
☆03:惑星分光観測衛星(SPRINT-A)打上げ延期について
───────────────────────────────────

★01:特別公開:宇宙への思いを一つに

 今年のJAXA相模原キャンパス特別公開が7月26日(金)、27日(土)に開催されました。当日は雷雨の心配がありましたが、天気が大幅には崩れることなく、また気温もすごく高くなることはなく過ごしやすかったのではとおもいます。この2日間で1万4千人程の方が来場してくださいました。


 そんな今年の特別公開の中で私は「赤外線天文学ブース」の代表を務めることになりました。去年までとは志向を変え、2022年頃の実現化をめざして現在精力的に検討を基礎技術開発を行っている「次世代赤外線天文衛星SPICA(スピカ)」を体感してもらえるような演出を行いました。


 去年から宇宙研の赤外線グループに参加しはじめた駆け出しの研究員である私が「赤外線天文学ブース」をまとめるということで、責任とプレッシャーを感じることも多々ありました。しかしその分、来場者の方々の笑顔は何物にも代えられない喜びとなり、さらにISASメールマガジンにこうやって思いを書き綴ることの出来る機会を頂けてとても嬉しくおもっています。


 私は小学生の時に宇宙の壮大さに魅せられたのですが、生まれ育った場所は都会に近く、星の光を捉えることが難しく、夜空を見上げる人はそれほど多くありませんでした。

なので「淡い星の声まで漏らさずに聞き、その魅力をみんなに伝えられる人」になりたいと思い続けてきました。幸せなことにその思いは色褪せること無く、今でも私の研究のモチベーションとなっています。


 さて「天文学者が普段行っているコト」というと、みなさんは何を思い浮かべますか?
夜な夜な望遠鏡を持ち出しては星を見続けている、多くの方がそんな光景を思い描いたのではないかと思います。

 もちろん、(目で直接見るわけではありませんが)望遠鏡や衛星を使って天体を観測することは観測天文学の醍醐味です。この瞬間の為に綿密な観測計画を立て、晴天を祈り、コンピュータに転送されてきた今観測したばかりのデータを確認し、そこに予想通りに映し出されていたときは検出器に天体が映し出されていたときは
「ぃよしっ!」
ってつぶやいたりします。

しかし観測を行うのは一年間のうちの数夜、多くても10夜程度。観測日以外の普段の生活では、観測で捉えた光から天体の性質を理解するための解析を行い、小さな小さな宇宙創世の手がかりを一つ一つ集めています。時にはその確証は、理論予想値からのほんのわずかなズレを精密に議論することで得られるものだったりします。

つまり(研究者も含め)みんなが知りたい宇宙の謎と、研究者が本当に普段行っている研究は、細い糸でつながっているけれども、実は大きなギャップがあったりします。

私はそのギャップを埋めることで、研究者が感じている宇宙の魅力をみなさんに伝えられるのではと思っていて、特別公開はそんなギャップを埋めるとても良い機会だと感じています。


 特別公開などで研究を紹介するポスターは、研究内容を出来るだけ噛み砕きシンプルにすることで、わかりやすく書くことを努めています。しかしそれは言い換えるなら、
「とてもあっさりしたポスター」
になっているともいえます。

そういうポスターを貼っているだけだと、来場した方がそれを眺め、
「ふーん・なるほど」
と思い、次のポスターに行くだけになってしまいます。これではとても味気ないですし、宇宙の謎に迫る天文学の魅力なかなか伝わらないと思います。

特別公開は、普段の研究の内容を展示するのはもちろんですが、やっぱりその醍醐味は研究者と直接対話できることなのではないでしょうか。


 私たちのブースではそんなそのギャップを埋めるべく、毎年積極的に来場者のみなさんい声かけを行っています。


 でも話しかけるのってやっぱり緊張しますね(笑)
私たちの緊張が伝わってか来場者の方も緊張していてしまい、最初はどちらもポスターや模型の方を向いて話してるんです。でも、そんな緊張の中でも私たちの話に耳を傾けてくれ、そこから生まれた素朴な疑問を質問してくれると、とても嬉しくなるんです。

すごく嬉しいから、質問に答えるだけでなく、もう少し掘り下げた内容を説明したくなる。すると聞いている方の好奇心が高まっていって、次から次へと質問が湧いてくる。またその質問に答えようと、次のポスターの場所に移動する。

まるでブース内のツアーに参加しているかのように、あっちこっちを一緒に練り歩きます。

いつのまにか最初の頃の緊張が嘘のように、お互い向き合って好奇心に目を輝かせ、深くうなずき合っている。みんなが知りたいことと、普段私たちが行っている研究内容が結びつき、共に壮大な宇宙に思いを馳せる。

そこには言葉では言い表せない一体感が生まれてます。これぞ特別公開の醍醐味なのではないでしょうか。


 来年の特別公開では、どんな志向でみなさんと宇宙の魅力を共有できるでしょう。

特別公開は、JAXA職員と来場してくださった皆様の全員で作るあげるイベントで、同じ特別公開はありません。

今年来てくださった方も来られなかった方も、ぜひ来年の夏に相模原キャンパスに足を運んでいただき、壮大な宇宙を体感しませんか?

(大井 渚、おおい・なぎさ)

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※