宇宙航空研究開発機構 サイトマップ

TOP > レポート&コラム > ISASメールマガジン > 2013年 > 第455号

ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第455号

★★☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ISASメールマガジン   第455号       【 発行日− 13.06.11 】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

★こんにちは、山本です。

 先週イプシロンロケット1段目を積んだ特殊車両が故障して 内之浦宇宙空間観測所目前でストップしていましたが、5日無事に搬入されました。

 ISASのある相模原市では、6月9日〜16日までを「相模原はやぶさウィーク」として、いろいろなイベントが開催されます。
(⇒ 新しいウィンドウが開きます http://pr.city.sagamihara.kanagawa.jp/topics/026314.html

特に「はやぶさの日(6月13日)」には、市内の小中学校で「はやぶさ給食」が実施され、相模原市役所6階の食堂では、「はやぶさランチ」が販売されます。(100食限定、1食500円)

 今週は、ASTRO-Hプロジェクトチームの小川美奈(おがわ・みな)さんです。

── INDEX──────────────────────────────
★01:運動会 〜 競技用トラックと衛星追尾の関連性? 〜
☆02::JR淵野辺駅にギャラクシーパネルが登場
───────────────────────────────────

★01:運動会 〜 競技用トラックと衛星追尾の関連性? 〜

 わたしが子どもの頃には、運動会と言えば秋の風物詩だったが、近年は春に行う学校が増えてきたようだ。

 宇宙科学研究所のすぐ近くの小学校でも、我が家の長男の通う中学校でも長女の通う小学校でも運動会は春に行われ、わたしは2週連続で土曜日に運動会の応援に出かけた。忘れてはいけない持ち物は、弁当、水筒のほかに、カメラとビデオカメラ(もちろん、両方デジタル)。


 長男が小学校にあがったばかりのころは、ビデオを撮るとデータ整理をほったらかしにする自信があったので(この自信は今もある)、単純なデジカメで静止画だけ撮っていた。

が、自分の子どもではなく、後を走る子どもしか写っていなったり、ひどいときは何もない空間が写っていたり。とくに、ゴールの瞬間は静止画では撮影できない!という実績に裏付けられた自信がついたので、いまでは、徒競走、リレー、ダンス、組体操など動きがある種目のときには、ビデオカメラで動画撮影。

 実家に送る写真やはがきに加工するには、デジカメの静止画がお手軽なので(メモリカードをプリンターにつっこんでボタン1つ!)、出場前に保護者席に向かってポーズをとってくれるような時にはデジカメでパチリ。


 徒競走や、リレーでは、トラックを回っても視野におさまるように、ビデオを向ける方向と最適倍率の目安を付けて予行演習。自分から見て、どれぐらいの距離をどれぐらいの速さでどちらに動いていくかを事前に予測しようとしていると、自分が人工衛星・探査機を追尾(tracking)しようとするアンテナになった気分になる・・・・のは一種の職業病だろうか。それとも、単に単語が似ているからだろうか。

 トラックの内側から走者を撮影するプロのカメラマンは、地球を回る人工衛星を地上から追尾するアンテナ。トラックの外側から撮影する保護者は・・・月などの他天体を回る探査機を地球上から追尾するアンテナ。

 走者も人工衛星も、一定の動きでうごいてくれれば撮影は楽だが、その動きは変動する。
 風/大気抵抗に影響されるのは、走者も人工衛星も同じ。

 人工衛星の場合は、予測期間が長いし、ちょっとした力でも将来の動きに影響するので、太陽の輻射圧、諸天体の重力、太陽活動なども計算にいれる。より正確に計算しようとすると、手計算では大変で、コンピュータまかせだ。

 走者の場合は、動きの変動の主な要因は、やる気、根気、負けん気あたりのような気がするので、撮影者の勘が頼りか?!

 走者は、後ろや横を見て走れば遅くなる。リレーで、バトンの受け渡し時に後ろを振り返りながら走れば、スピードダウン、ついでにコースも若干ずれたりする。

 人工衛星も、姿勢を変えようとしてスラスタで姿勢制御すると、動くコース(軌道)も若干ずれる。


 長男の通う中学校のリレーでは、バトンの代わりに生の大根をつかう。重さのせいか、太さのせいか、普通のバトンリレーよりも、受け取ったとたんによろけたり、転んだりする走者が多いように思われる。どのぐらいで立ち上がれるか、立ち上がったあとも前と同じはやさで走れるかは予測不可能。

 走者も転ぶが、人工衛星も転ぶ。
 何らかの原因で(他の人工衛星から渡された大根が原因で、なんていうことはもちろん無いが)、もともとの姿勢を保てなったりして、「もっとも安全な姿勢」をとる。

たいていは、太陽電池パドルを太陽に向けて、地上からの指令をじっと待つ。そういう事態を、人工衛星が転んだ、と呼ぶ。もしかしたら、そう呼ぶのは、宇宙業界でもわたしの周りだけなのかもしれない。宇宙慣用句集とか、宇宙隠語集があったら確認してみたい。

 転ぶときにも、元の姿勢に戻るのも、たいていスラスタ噴射で姿勢制御する。人工衛星が自動で噴射すると、その後の軌道変化も予測はむずかしい。予測はむずかしいので、後で測定する。測定するためには、アンテナで追尾することが必要で・・・追尾できないぐらい軌道がずれてしまったら、アンテナを振って人工衛星を探す。ビデオ撮影中に対象者を見失った時に、きょろきょろとグラウンド中を探すのと同じ。


 さて、2週連続の運動会での、撮影結果は。

 長女の80m走は、スタートダッシュも、練習ではずっと2位以下だったのに1位でテープを切る瞬間の笑顔までばっちり撮影成功。前のレースで撮影練習しておいた成果かな。踊る位置を事前に聞いていたエイサーもばっちり。

 長男の大根リレーは、わたしから奪い取るようにして長女が構えたビデオには長男は全然写らず。長女によると「おにいちゃん、はやすぎ!」。全速力で目の前を疾走する姿に追いつけなかったそうだ。私が撮影しようとした騎馬戦も、途中で姿を見失って断念。事前に動きを予想ができない競技を撮影するのはやはり難しい。


 運動会でのビデオ撮影も、地上局からの衛星追尾も、自分から見た動き(方向やスピード)の予測と、事前の練習が大事。

 もうすぐイプシロンロケットの打上げ。初めての打上げだけに(事前練習できないから)、打上げの瞬間やその後の動きをビデオ撮影するのは・・・大変そうだなぁ。

(小川美奈、おがわ・みな)


‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※