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ISASメールマガジン 第425号
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ISASメールマガジン 第425号 【 発行日− 12.11.13 】
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★こんにちは、山本です。
週明けの相模原キャンパス、ロッジの前から トーンの高い英語が聞こえてきます。若い外国の方が十数人 楽しそうに話しています。その中に広報の見学者担当のNさんを見つけました。
ちょうど見学が終了したところだったので Nさんに話を伺いました。
「本当は日本語で説明すればいいってことだったんですよ
でも説明していると英語が返ってくるので結局は英語で説明して……」
私には…… 無理だ。
今週は、宇宙物理学研究系の白旗麻衣(しらはた・まい)さんです。
── INDEX──────────────────────────────
★01:天文学者の心躍るとき
☆02:宇宙学校・みずなみ(12月2日(日))
☆03:総研大アジア冬の学校2012参加者募集
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★01:天文学者の心躍るとき
観測の日。夕方に起きる。真っ先に外に出て空を見上げる。快晴!!。こんな時のわくわく感はちょっと他では味わえないかもしれません。欲しかったデータがついに手に入る!という興奮。いざ決戦の時! という緊張感。よ〜し、頑張るぞ! という気持ちの高揚。山頂に向かって車を走らせながら絶景だなぁと感じる幸せ。言葉で表そうとするとこんな表現になってしまうのですが、この瞬間のわくわく感は、私が天文学者として感じるわくわく度No.1です。
私は、今、宇宙科学研究所に所属する研究員ですが、ハワイのマウナケア山頂にあるすばる望遠鏡を使った観測で博士課程の学位を取得しました。昨年度はハワイに住み、このすばる望遠鏡の装置開発の仕事をさせてもらっていました。ですから、とても幸せなことに、もう何回も、このわくわく感を味わわせて頂いています。そして、何度経験しても本当に、とってもわくわくするのです。
天文学者が望遠鏡を使って観測するというと、みなさんはどのような光景を思い浮かべますか?おそらく、細長い筒のような望遠鏡を片目で覗き込む、そんな光景を思い浮かべるのではないかと想像します。
すばる望遠鏡は、日本で一番大きな望遠鏡です。世界中で見ても最大級の大きさで、たくさんの高度な技術がつまった高性能な望遠鏡です。実は観測のとき、私たちは、望遠鏡や観測装置を動かすコンピューターの前に釘付けになっています。観測制御室は、外に光が漏れることのないように、窓のない部屋です。部屋の中には蛍光灯がついているので、観測の間はずっと明るいところにいます。
夕方、まだ外が明るいうちに観測制御室に入って、観測準備をする。夜の間、刻一刻と変化する空の状況を判断しながら必死に観測データを取り続ける。明け方、取れたデータの整理やデータ解析に必要な情報をかき集めて、観測の後片付けをする。こんなふうに観測が順調なときには、部屋の外に出る暇がないこともあります。ですから、満天の星空のもと、完璧なデータが取れたのに、実際に自分の目では夜空を見上げていない、なんてことも、たまにはあります。
山頂は空気が薄く、観測は徹夜仕事になってしまうため、頭痛と睡魔と戦いながら、一晩を過ごすことになります。観測が終わって観測制御室の外に出た時、疲れきってぼーっとする頭で明るい朝日ときれいな朝焼けを見た時、なんとも不思議な気持ちになるものです。本当に夜は来たのだろうか??
それでも、観測に出発するとき、とってもわくわくするのです。
ここまで、天文学者にとって望遠鏡を使って夜空を観測するということが、このうえないわくわく体験です! というお話を書きましたが、もちろん一番うれしく一番しあわせな時です! と言い切るつもりはありません。天文学者の嬉しい瞬間は、他にもいっぱいあります。
観測で取れたデータを解析して素晴らしい結果が出たとき。観測結果について、共同研究者とあれこれ議論をして、解決の糸口が見つかったとき。研究会で観測成果をうまく発表できたときや、必死にまとめた論文が出版されたとき。こんなときはもちろん、天文学者として、喜びもひとしおです。
私はこれまで、赤外線天文衛星「あかり」や、次世代赤外線天文衛星「SPiCA」の装置開発の研究もさせていただきました。装置開発をしていても、実験がうまくいった時やいろんな工夫をして良いデータが取れた時など、やったぁ! と思う瞬間はたくさんあります。
プロジェクトメンバーと大掛かりな実験をしている時、多くの人が一生懸命に人工衛星を開発している現場に自分も参加させてもらっていることに、感謝の気持ちがあふれてきます。ウキウキして、よーーし、私も頑張るぞ〜!、と思わず駆け足になってしまったりもします。
「あかり」の打ち上げの時も、自分が衛星開発に携われた喜びと、その衛星の打ち上げ現場に参加させてもらっていること、こんな機会に恵まれたことが、とってもとっても嬉しかったのです。
打ち上げの日の早朝。
ロケットがゆっくりと傾いていくのをみんなで眺めていたこと。
カウントダウンの声をドキドキしながら聞いていたこと。
ロケットが分離する軌跡をずっとずっと見上げていたこと。
今でも打ち上げの日のことはとても鮮明に覚えています。
笑。でも、なぜでしょうね。観測の日の出発のときは、ドキドキ感でいうと、瞬間最高わくわく度がダントツNo.1なのです。
私はこの4月から、ロケットを使った観測で、宇宙で一番最初に誕生した星からの光を検出しよう!、というプロジェクトに参加しています。ロケット打ち上げの日、私はどんな気持ちで打ち上げの成功を見守っているのかな。今からとても楽しみにしています。
(白旗麻衣、しらはた・まい)
すばる望遠鏡ホームページ:
⇒ http://subarutelescope.org/j_index.html
「あかり」衛星ホームページ:
⇒ http://www.ir.isas.jaxa.jp/ASTRO-F/index-j.html
SPiCA衛星ホームページ:
⇒ http://www.ir.isas.jaxa.jp/SPICA/SPICA_HP/index.html
観測成果:
⇒ 「あかり」、遠赤外線で宇宙の果てに迫る
⇒ 赤外線でせまる巨大ブラックホールを持つ活動銀河核のまわりの分子ガス
⇒ レーザーガイド星補償光学での遠宇宙観測が本格始動〜10倍になった視力で初めてみえた重力レンズ銀河〜
ロケット実験CIBERプロジェクトホームページ:
⇒ http://www.ir.isas.jaxa.jp/~matsuura/darkage/index_da.html
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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※