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ISASメールマガジン 第413号
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ISASメールマガジン 第413号 【 発行日− 12.08.21 】
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★こんにちは、山本です。
8月も残り10日になりました。まだまだ残暑が続く相模原キャンパスですが、絹雲がかかった空は、すっかり秋の色です。
9月に能代で開かれる【銀河フェスティバル in 能代】は、能代ロケット実験場開設50周年と銀河連邦交流25周年を記念して開催されます。
能代ロケット実験場は、1962年10月に開所されたのですが、分かったのはそこまでで、具体的な日にちが分かりません。知っていそうな人に聞いてまわってみたのですが……
能代ロケット実験場長のYさんも、調べて分からなかったとのこと
誰か ご存知の方は いるのでしょうか
今週は、科学衛星運用・データ利用センターの岡田尚基(おかだ・なおき)さんです。
── INDEX──────────────────────────────
★01:衛星データの交通整理
☆02:銀河フェスティバル in 能代(9月8〜9日)
☆03:宇宙学校・たけお【佐賀県立宇宙科学館】(9月17日)
───────────────────────────────────
★01:衛星データの交通整理
ひので・すざく・あかりから得られた太陽や天体の画像。
はやぶさが送ってきたイトカワの画像。
そういったものをニュースでご覧になった方はいらっしゃるかと思います。
でも、実際にはもっとたくさんのデータが、科学衛星や探査機から日々取得されています。
「そうは言っても、宇宙に関わりのない一般の人は、簡単に衛星のデータを見ることはできないんでしょう?」
先日の相模原キャンパス特別公開でも、訪れた方からそんな声をいただきました。
実は、科学衛星や探査機から得られた科学データは、人類共通の知識として、インターネットから誰でも見ることができるようになっています。
それが、私の所属している科学衛星運用・データ利用センターで整備している、DARTS(⇒
http://darts.isas.jaxa.jp/index.html.ja )というシステムです。
ただ、ごめんなさい、このページは世界の科学者をターゲットにして、彼らに研究してもらうことを目的に作られているので、私も含めて専門でない方にはとっつきにくいと思います。
特別公開では、比較的わかりやすく、見栄えの良いデータをピックアップして、DARTSからデータを探す体験をしていただきました。
さて、「私も含めて」などと無責任な書き方になってしまったのは、私の担当がDARTSではないからです。科学衛星運用・データ利用センターでは、衛星の運用からデータ利用までを幅広くサポートしています。
私の主な業務は、衛星から送られてきたデータ(テレメトリデータと呼びます)を生データのまま整理し、保管・提供している、SIRIUSというデータベースの整備です。
DARTSから公開されているデータのほとんどは、SIRIUSを経由して作られています。このSIRIUSが何をしているかを知っていただくには、衛星の出すテレメトリデータがどういうものなのかを知っていただく必要があります。
一つの衛星の中には、いろいろな機器が載っています。天体を撮影するだけでも複数の波長の機器が用意されていますし、衛星を動かし続けるためにもバッテリや姿勢制御を行う機器など複数の機器が搭載されています。これらの機器は個別にデータを出していて、衛星は全てのデータをとりまとめて順番に電波に乗せて地上に送り出しています。
テレメトリデータの受信は衛星がアンテナの上空にある限られた時間にしか行えないため、取ったデータをしばらく衛星内部で保管して、受信できるときにまとめて送ったり、世界各地のアンテナを使い、なるべく多くのデータを受信できるようにしたりといったことを行います。
そのため、データの受信順序は必ずしもデータが作られた順序にはならず、また重なりのある状態で各アンテナから届きます。
このままでは、いつどこのアンテナで受信したデータなのか覚えておかなければデータを探すことができません。けれど、テレメトリデータを検索するときには、「この機器がこのときに取ったデータ」のように探せる方が便利です。
そこで、SIRIUSの出番となるわけです。
SIRIUSでは、複数のアンテナで取得したテレメトリデータを全て集め、機器ごとのデータを取り出し、重複のない状態で、それらが作られた順番になるよう整理します。SIRIUSはいろんな道を通ってやってくる衛星データの交通整理をしているのです。整理されたテレメトリデータは、機器ごとに作られたデータ処理プログラムを通って公開データとなり、最終的にDARTSから世界へ向けて公開されます。
私たちの部署は、衛星運用やその後のデータ処理に用いる、衛星共通のシステムを提供しています。SIRIUSも一つの衛星のために作られたのではなく、多くの科学衛星・探査機を包括的に扱っています。
このようなことが比較的容易にできるのは、衛星のテレメトリデータがCCSDS(Consultative Committee for Space Data Systems)という組織で世界的に標準化され、それに準拠するように日本の科学衛星・探査機が作られるようになったからです。
JAXA宇宙科学研究所では、1990年代からテレメトリデータのCCSDS勧告への準拠を進めてきました。それでも、スケジュールや予算などの都合もあり、完全に準拠したものになっていないこともあるので、「共通」システムを維持していくことは一筋縄にはいきません。
衛星個別の事情を考慮しつつ、一つの共通システムによる実現解を探していくことが、この仕事の大変なところでもあり、やりがいのあるところでもあると感じています。
今回の説明では触れませんでしたが、通信プロトコルに興味のある方は、CCSDSのページ(⇒
http://public.ccsds.org/default.aspx )にあるSpace Packet Protocolや、AOS(Advanced Orbiting Systems)Space Data Link Protocolを見て、インターネットなどの通信プロトコルと比較してみると楽しいかもしれません。
(岡田尚基、おかだ・なおき)
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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※
ISASメールマガジン 第413号 【 発行日− 12.08.21 】
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★こんにちは、山本です。
8月も残り10日になりました。まだまだ残暑が続く相模原キャンパスですが、絹雲がかかった空は、すっかり秋の色です。
9月に能代で開かれる【銀河フェスティバル in 能代】は、能代ロケット実験場開設50周年と銀河連邦交流25周年を記念して開催されます。
能代ロケット実験場は、1962年10月に開所されたのですが、分かったのはそこまでで、具体的な日にちが分かりません。知っていそうな人に聞いてまわってみたのですが……
能代ロケット実験場長のYさんも、調べて分からなかったとのこと
誰か ご存知の方は いるのでしょうか
今週は、科学衛星運用・データ利用センターの岡田尚基(おかだ・なおき)さんです。
── INDEX──────────────────────────────
★01:衛星データの交通整理
☆02:銀河フェスティバル in 能代(9月8〜9日)
☆03:宇宙学校・たけお【佐賀県立宇宙科学館】(9月17日)
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★01:衛星データの交通整理
ひので・すざく・あかりから得られた太陽や天体の画像。
はやぶさが送ってきたイトカワの画像。
そういったものをニュースでご覧になった方はいらっしゃるかと思います。
でも、実際にはもっとたくさんのデータが、科学衛星や探査機から日々取得されています。
「そうは言っても、宇宙に関わりのない一般の人は、簡単に衛星のデータを見ることはできないんでしょう?」
先日の相模原キャンパス特別公開でも、訪れた方からそんな声をいただきました。
実は、科学衛星や探査機から得られた科学データは、人類共通の知識として、インターネットから誰でも見ることができるようになっています。
それが、私の所属している科学衛星運用・データ利用センターで整備している、DARTS(⇒

ただ、ごめんなさい、このページは世界の科学者をターゲットにして、彼らに研究してもらうことを目的に作られているので、私も含めて専門でない方にはとっつきにくいと思います。
特別公開では、比較的わかりやすく、見栄えの良いデータをピックアップして、DARTSからデータを探す体験をしていただきました。
さて、「私も含めて」などと無責任な書き方になってしまったのは、私の担当がDARTSではないからです。科学衛星運用・データ利用センターでは、衛星の運用からデータ利用までを幅広くサポートしています。
私の主な業務は、衛星から送られてきたデータ(テレメトリデータと呼びます)を生データのまま整理し、保管・提供している、SIRIUSというデータベースの整備です。
DARTSから公開されているデータのほとんどは、SIRIUSを経由して作られています。このSIRIUSが何をしているかを知っていただくには、衛星の出すテレメトリデータがどういうものなのかを知っていただく必要があります。
一つの衛星の中には、いろいろな機器が載っています。天体を撮影するだけでも複数の波長の機器が用意されていますし、衛星を動かし続けるためにもバッテリや姿勢制御を行う機器など複数の機器が搭載されています。これらの機器は個別にデータを出していて、衛星は全てのデータをとりまとめて順番に電波に乗せて地上に送り出しています。
テレメトリデータの受信は衛星がアンテナの上空にある限られた時間にしか行えないため、取ったデータをしばらく衛星内部で保管して、受信できるときにまとめて送ったり、世界各地のアンテナを使い、なるべく多くのデータを受信できるようにしたりといったことを行います。
そのため、データの受信順序は必ずしもデータが作られた順序にはならず、また重なりのある状態で各アンテナから届きます。
このままでは、いつどこのアンテナで受信したデータなのか覚えておかなければデータを探すことができません。けれど、テレメトリデータを検索するときには、「この機器がこのときに取ったデータ」のように探せる方が便利です。
そこで、SIRIUSの出番となるわけです。
SIRIUSでは、複数のアンテナで取得したテレメトリデータを全て集め、機器ごとのデータを取り出し、重複のない状態で、それらが作られた順番になるよう整理します。SIRIUSはいろんな道を通ってやってくる衛星データの交通整理をしているのです。整理されたテレメトリデータは、機器ごとに作られたデータ処理プログラムを通って公開データとなり、最終的にDARTSから世界へ向けて公開されます。
私たちの部署は、衛星運用やその後のデータ処理に用いる、衛星共通のシステムを提供しています。SIRIUSも一つの衛星のために作られたのではなく、多くの科学衛星・探査機を包括的に扱っています。
このようなことが比較的容易にできるのは、衛星のテレメトリデータがCCSDS(Consultative Committee for Space Data Systems)という組織で世界的に標準化され、それに準拠するように日本の科学衛星・探査機が作られるようになったからです。
JAXA宇宙科学研究所では、1990年代からテレメトリデータのCCSDS勧告への準拠を進めてきました。それでも、スケジュールや予算などの都合もあり、完全に準拠したものになっていないこともあるので、「共通」システムを維持していくことは一筋縄にはいきません。
衛星個別の事情を考慮しつつ、一つの共通システムによる実現解を探していくことが、この仕事の大変なところでもあり、やりがいのあるところでもあると感じています。
今回の説明では触れませんでしたが、通信プロトコルに興味のある方は、CCSDSのページ(⇒

(岡田尚基、おかだ・なおき)
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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※