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ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第398号

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ISASメールマガジン   第398号       【 発行日− 12.05.08 】
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★こんにちは、山本です。

 今年のゴールデンウィークは大荒れの天候でしたが、皆さんがお住まいの地域はいかがでしたか?

 連休後半(3日〜6日)の相模原キャンパス見学者数は、2835人でした。
特に、5日は934人が来場されたそうです。

桜美林大学の『プラネットふちのべフェスタ』との相乗効果で 1000人近い見学者数になったようです。

 今週は、きみっしょん事務局・宇宙飛翔工学研究系の久本泰慶(ひさもと・やすよし)さんです。

── INDEX──────────────────────────────
★01:君が作る宇宙ミッション 〜ジュニアセッション体験記〜
☆02:きみっしょん参加者募集中(締切:6月4日)
☆03:きみっしょん 進路追跡調査実施中
☆04:石英質の塵粒が輝く恒星を発見、惑星形成の途上か
☆05:2012年度の「宇宙学校」共催団体が決定
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★01:君が作る宇宙ミッション 〜ジュニアセッション体験記〜


 はじめまして、こんにちは。ISASでイオンエンジンをテーマに研究しています博士課程2年の久本です。

 ここISASに所属する大学院生が主体となり、高校生を対象とした研究体験プログラム「君が作る宇宙ミッション(通称;きみっしょん)」を毎年夏に開催しています。3月に京都で開催された日本天文学会春季年会・ジュニアセッションにおいて、第9回と第10回の「きみっしょん」参加高校生が研究発表を行いましたので、報告を兼ねて活動をご紹介します。


 「きみっしょん」とは、ISASに泊まり込み数人のチームで1つのミッション計画を作り上げる研究体験型の教育プログラムです。問題を発見し、問題解決のアイディアを出し、その妥当性を検討するという研究者が日々行っている作業を高校生が自分たちで行います。


 「きみっしょん」は夏休み期間の5日間でミッションを作り上げますが、議論を深めるにつき次から次へと出てくる新たな課題を全て網羅することは日程的に困難です。研究発表会を終えた高校生たちからは「納得できるまでミッション作りを続けたい」といった意見が出てきました。

そうした熱心な宇宙好き高校生たちは、「きみっしょん」終了後も全国各地へ戻ったチームメンバーとさらに議論を重ねました。電子掲示板やインターネット電話を駆使しながらのミッション作成です。もちろん「きみっしょん」期間中のように朝から夜まで議論漬けになることは出来ません。授業や定期考査、部活や習い事の合間を使ってミッションを作り続けました。そのため、話し合いの時間を調整することや資料調査の作業分担など、議論とは違うマネージメントの重要性に気づくことにもなりました。期間中のこうしたマネージメントは大学院生が主に行いましたが、今では大学院生の出ていく場面はありません。


 こうして半年間ほど自主的に議論を続けた高校生たちは、期間中よりさらに洗練されたミッションを対外的に提案する場としてジュニアセッションに参加することになりました。ジュニアセッションとは天文学会の春季年会において、中高生が天文学に関する日頃の学習や研究成果を発表する機会として設けられており、今回で14回目になります。昨年は未曽有の大震災に見舞われ、筑波で予定されていた年会がキャンセルになったことから、昨年発表する予定だった「第9回きみっしょん」の一班も参加しました。


 各班の発表内容は以下のようになっています。

第9回きみっしょん

A班 「月面天文台『MoooooooN』 〜ファーストスターを探れ〜」
月の南極表面に口径50mの赤外線天文台を作りファーストスターを観測するもの


第10回きみっしょん

A班
「宇宙発電所の建設 〜MADE IN SPACE〜」
地球軌道上の宇宙太陽光発電所間でネットワークを作り、発展途上国に電力エネルギー問題を解決するもの

B班
「宇宙船内における循環システムの開発〜目指せ!100%リサイクル!〜」
将来の有人惑星間飛行のため、既存システムよりさらに発展させた農業を取り込んだ循環システムを提案したもの

C班
「Return-E 〜エンケラドスでの生命探査〜」
独自のサンプル採取装置を提案し、Eリング上の噴出物から生命の存在の確認を目指すもの

D班
「Fresh Space Cooking」
長期宇宙滞在の生活向上のため、宇宙環境に適した食材の調理と保存を検討したもの


 発表会場はざっと見て200人は入る階段教室でほぼ満席状態。発表が近づくにつれてスタッフの方が緊張してきます(発表する高校生たちは緊張なんてどこ吹く風)。それもそのはず、発表に向けて前日から打ち合わせを兼ねて、何回も発表練習を行いました。初見の人にも興味を持って理解してもらえるよう、見せ方や説明順番、フォントや文字の大きさまで夜遅くまで手直ししました。その効果もあって、発表は堂々としたもの。質疑応答でも熱心な議論が繰り返されました。

時間の限られた口頭発表だけでは説明しきれないミッションの細部を聞こうと、ポスター発表の場にも多くの方に足を運んでいただきました。その中には過去「きみっしょん」に参加した高校生もちらほら。こうして歴代の参加高校生とジュニアセッションで再会できるのも引率してくるスタッフの秘かな楽しみです。


 参加した高校生からは「研究した成果を発表できる機会が得られていい経験となった」「これからも衛星設計まで続けたい」と嬉しくそして頼もしい感想を貰いました。「きみっしょん」を通した一連の経験が高校生たちの将来の糧に少しでもなってくれたらと願うばかりです。

(久本泰慶、ひさもと・やすよし)

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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※