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ISASメールマガジン 第355号
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ISASメールマガジン 第355号 【 発行日− 11.07.12 】
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★こんにちは、山本です。
梅雨が明けて ついに夏本番。毎日 猛暑の相模原 『天気予報』ならぬ『電気予報』をチェックする毎日です。
計画停電が始まらないように セッセと節電に励むしかありません。
今週末16日(土)〜18日(月祝)の3日間は、相模原キャンパス展示室は臨時休館です。お間違えの無いように お願いします。
今週は、固体惑星科学研究系の大竹真紀子(おおたけ・まきこ)さんです。
── INDEX──────────────────────────────
★01:月周回衛星「かぐや」のデータ解析はもう終わり?
☆02:「はやぶさ」カプセル等の展示スケジュール
───────────────────────────────────
★01:月周回衛星「かぐや」のデータ解析はもう終わり?
私は月周回衛星「かぐや」に搭載された観測機器(マルチバンドイメージャと呼んでいる分光カメラ)の開発や運用(衛星や観測機器にコマンドを送信したり、逆にデータを受信するなどして、予定する観測を行うこと)に携わらせていただいていましたが、その「かぐや」衛星の運用が2009年に終了してから早くも2年と少し経ちました。
私にとってはあっという間の2年でしたが、最近、久しぶりに会う知人から
「もう「かぐや」のデータ解析は終わったのでしょう?今は何をやっている(研究している)の?」
と訊かれることがよくあります。訊かれるたびに私は、
「いえいえ、「かぐや」のデータを使った研究は、むしろやっと始まったところで、今から本格的になるんです!」
と答えています。
ハードウェアとしての衛星の運用が終了すると その探査衛星の目的が達成され、お仕事は終わるように思われる方が多いかもしれませんが、実際には衛星運用期間中に取得した観測データに対してさまざまな作業をしていく、いわばソフトウェアとしての運用(データ処理という方がイメージはしやすいでしょうか)は衛星運用終了後も引き続き行われます。
さらに、探査衛星によって取得した観測データを使って研究をするというのは、そのデータ処理でも一番最後の方になってやっと可能となることなので、私を含めてそれらデータ処理に携わる人にとっては、まだまだやることはたくさんあるというのが現状です。
もう少し具体的にデータ処理の中身をお話しするために、まずは観測データの量(容量)を紹介しましょう。
約1年半の「かぐや」運用期間に取得した観測データは膨大で、例えば私が主に用いている分光カメラの画像だけでも約50万セットあり、1セットのデータは9枚の画像から構成されているので、画像の枚数だけで言うと約500万枚にもなります。
次に、それら大量な観測データはそのままでは研究に使う事ができないため(画像の場合太陽光の入射方向など異なる観測条件で取得したさまざまなデータが含まれているので整理が必要です)、観測データに対して単位変換する、規格化する(データ補正、データ校正と呼びます)などの処理を行います。それら、データ補正とデータ校正を終えたデータが作られて、初めてそれを使って研究することができるようになるのです。
そして、このような研究に取り掛かる前に行うデータ処理に加え、研究を始めてからも、取得した観測データ(例えば画像)のせっかくの高い空間分解能を生かすために画像1枚の中での場所による比較を行うような詳細な研究もありますので、研究の目的や内容にもよりますが、ある程度の時間が必要です。
そのため、これまでに研究に使われている画像は、まだ全体のうちの一部です。
多分(これは最初からそのように予測していたわけですが)、「かぐや」の全てのデータを使って研究をやりつくすのには何十年もかかるでしょう(反対に、何十年も研究に使うことができる、充実したデータだと言うことができます)。そして、何十年もかかるとなると当然ながら、今自分達が研究するためのデータ処理を行うだけでなく、将来「かぐや」データを使って研究をする人達のためにも、精度のよい、かつ使いやすいデータを残して行く必要があると思っています(ちなみに、「かぐや」データのいくつかがすでにwebで公開されていて、誰でも利用することができます)。
そういうわけで、
「かぐや」で取得した観測データの処理やデータの公開や、これらを使った研究はもう終わったのか?
というと、むしろこれからが重要だと思っているところです。もちろん、私も「かぐや」が忘れられてしまう前に、もっともっと面白い成果を出して行きたいと思っています。
「かぐや」のこと、まだまだ忘れずに応援をお願いします。
(大竹真紀子、おおたけ・まきこ)
「かぐや」プロジェクトサイト
⇒
http://www.kaguya.jaxa.jp/ja/index.htm
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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※
ISASメールマガジン 第355号 【 発行日− 11.07.12 】
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★こんにちは、山本です。
梅雨が明けて ついに夏本番。毎日 猛暑の相模原 『天気予報』ならぬ『電気予報』をチェックする毎日です。
計画停電が始まらないように セッセと節電に励むしかありません。
今週末16日(土)〜18日(月祝)の3日間は、相模原キャンパス展示室は臨時休館です。お間違えの無いように お願いします。
今週は、固体惑星科学研究系の大竹真紀子(おおたけ・まきこ)さんです。
── INDEX──────────────────────────────
★01:月周回衛星「かぐや」のデータ解析はもう終わり?
☆02:「はやぶさ」カプセル等の展示スケジュール
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★01:月周回衛星「かぐや」のデータ解析はもう終わり?
私は月周回衛星「かぐや」に搭載された観測機器(マルチバンドイメージャと呼んでいる分光カメラ)の開発や運用(衛星や観測機器にコマンドを送信したり、逆にデータを受信するなどして、予定する観測を行うこと)に携わらせていただいていましたが、その「かぐや」衛星の運用が2009年に終了してから早くも2年と少し経ちました。
私にとってはあっという間の2年でしたが、最近、久しぶりに会う知人から
「もう「かぐや」のデータ解析は終わったのでしょう?今は何をやっている(研究している)の?」
と訊かれることがよくあります。訊かれるたびに私は、
「いえいえ、「かぐや」のデータを使った研究は、むしろやっと始まったところで、今から本格的になるんです!」
と答えています。
ハードウェアとしての衛星の運用が終了すると その探査衛星の目的が達成され、お仕事は終わるように思われる方が多いかもしれませんが、実際には衛星運用期間中に取得した観測データに対してさまざまな作業をしていく、いわばソフトウェアとしての運用(データ処理という方がイメージはしやすいでしょうか)は衛星運用終了後も引き続き行われます。
さらに、探査衛星によって取得した観測データを使って研究をするというのは、そのデータ処理でも一番最後の方になってやっと可能となることなので、私を含めてそれらデータ処理に携わる人にとっては、まだまだやることはたくさんあるというのが現状です。
もう少し具体的にデータ処理の中身をお話しするために、まずは観測データの量(容量)を紹介しましょう。
約1年半の「かぐや」運用期間に取得した観測データは膨大で、例えば私が主に用いている分光カメラの画像だけでも約50万セットあり、1セットのデータは9枚の画像から構成されているので、画像の枚数だけで言うと約500万枚にもなります。
次に、それら大量な観測データはそのままでは研究に使う事ができないため(画像の場合太陽光の入射方向など異なる観測条件で取得したさまざまなデータが含まれているので整理が必要です)、観測データに対して単位変換する、規格化する(データ補正、データ校正と呼びます)などの処理を行います。それら、データ補正とデータ校正を終えたデータが作られて、初めてそれを使って研究することができるようになるのです。
そして、このような研究に取り掛かる前に行うデータ処理に加え、研究を始めてからも、取得した観測データ(例えば画像)のせっかくの高い空間分解能を生かすために画像1枚の中での場所による比較を行うような詳細な研究もありますので、研究の目的や内容にもよりますが、ある程度の時間が必要です。
そのため、これまでに研究に使われている画像は、まだ全体のうちの一部です。
多分(これは最初からそのように予測していたわけですが)、「かぐや」の全てのデータを使って研究をやりつくすのには何十年もかかるでしょう(反対に、何十年も研究に使うことができる、充実したデータだと言うことができます)。そして、何十年もかかるとなると当然ながら、今自分達が研究するためのデータ処理を行うだけでなく、将来「かぐや」データを使って研究をする人達のためにも、精度のよい、かつ使いやすいデータを残して行く必要があると思っています(ちなみに、「かぐや」データのいくつかがすでにwebで公開されていて、誰でも利用することができます)。
そういうわけで、
「かぐや」で取得した観測データの処理やデータの公開や、これらを使った研究はもう終わったのか?
というと、むしろこれからが重要だと思っているところです。もちろん、私も「かぐや」が忘れられてしまう前に、もっともっと面白い成果を出して行きたいと思っています。
「かぐや」のこと、まだまだ忘れずに応援をお願いします。
(大竹真紀子、おおたけ・まきこ)
「かぐや」プロジェクトサイト
⇒

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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※