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ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第343号

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ISASメールマガジン   第343号       【 発行日− 11.04.19 】
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★こんにちは、山本です。

 相模原キャンパスのサクラは、週末の強風で散って、すっかり葉桜になってしまいました。他の落葉樹も新芽が伸びて、新緑がきれいな季節になりました。

 昨年の猛暑で、8月中に葉が変色して落葉した駐車場の『アメリカハナミズキ』、枯れてしまったのかと心配していましたが、他のハナミズキと比べると頼りない感じですが、日々新芽が緑を濃くしています。

 今週は、基盤技術グループの加藤輝雄(かとう・てるお)さんです。

── INDEX──────────────────────────────
★01:印・サイン・花押
☆02:JAXA特集:次期X線天文衛星ASTRO-H 宇宙の謎への挑戦
☆03:「あかつき」の現状について
☆04:2011年度 君が作る宇宙ミッション 参加者募集(締切:6月6日)
☆05:「「はやぶさ」カプセル等の展示スケジュール
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★01:印・サイン・花押


 まだ役職に在ったころ、年度末から年度当初にかけて大量の書類にサインをする事に往生していた時期があった。

 そもそも印では無く何故サインを求められるのか?

 人気が有るからではない。理由はこうである。例えば、セキュリティがらみの、具体的には部屋や建物への電子キーによる出入り許可で、担当責任者自らが許可した証としてサインをせよとの事であった。そう言う意味で印は信用が無いようである。その信用の無い印を公式文書では認め印でよしとして要求される。三文判でも許可されるのに自筆の署名だけではだめである。ご丁寧にも自署捺印のケースも多かろう。


 まだ宇宙科学研究所が目黒区の駒場に在ったころ、英文用のサインのゴム印を作られた偉い先生がいらした。押されたサインは自筆のものと区別出来ないほど良くできていた。押印の習慣の無い欧米諸国では、ゴム印など無くても秘書さんとかが上手にサインを真似出来るのかもしれない。こう見ると印とかサインは形式的に必要な場合と絶対的な効力を持つ行為として必要な場合とが有るようである。サインは本人が居ないともらえないのに対し、印は管理している者が居ればもらえると言う大変便利なところがある。


 便利な故に必要も無い印を形式的に押しすぎないであろうか。押印の欄がずらっと並んだ書類を良く見かける。電子化された書類が多い昨今、その書類のハードコピーを取って押印し、また、スキャナーにかけて再度電子化すると言ったことが本当に必要なのだろうか?

 いろいろな部署で合理化が叫ばれる中で、印やらサインの在り方をしっかり考えて見ては如何であろうか。


 これで終わり、いや、表題に花押(かおう)なるものがまだ残っている。印、サインに関連して色々と調べてみた。にわか勉強なので多少嘘が有るかも知れないが、そこはお許し願うとして、今しばらくお付き合い頂きたい。

 印の関連用語としては、判子、印判、印鑑、印章などお馴染みなものと、落款(らっかん)、篆刻(てんこく)、爾(じ)なるものがある。

 落款(らっかん)とは、
「なんでも鑑定団」で良く出てくるのでご存じの方も多いかと思うが、書画に筆者が自筆で署名し、または印をおすこと。また、その署名や印のこと。署名用の印そのものを落款と称することもある。

 篆刻(てんこく)とは、
木、石、金などに印をほること。その文字に多く篆書(てんしょ)を用いるからという。篆書の例としてはパスポートの表紙に記されている、日本国旅券の文字がそれである。

 爾(じ)とは、
天子の印章。皇帝の印章(秦の始皇帝)。日本では天皇の印章を指す。玉爾(ぎょくじ)ともいう。天皇の署名捺印を、御名御璽(ぎょめい ぎょじ)という。


 さて、花押であるが、時代劇に出てくる書状の最後に記されている絵のような署名のことである。真似の出来ないように工夫され且つ美的センスを持ったサインであると思う。日本独特のものかと思ったが、イスラム圏にも類例があり、中国では南北朝時代の斉にまで遡るという。


 花押は、草名体、二合体、一字体、別用体、明朝体の5種類に分類され、順に草書体にくずした署名(草名)を更に文様化したもの、実名等の二字を図案化しもの、一字のみを図案化したもの、文字でなく絵を図案化したもの、明朝体は明の太祖がこの形式を用いた事に由来し、徳川家康以降歴代の将軍が継承し江戸時代の花押の基本形となった。


 文書の真偽を判定する方法として、公家法では筆跡照合が重視され、武家法では、花押の照合が重視された(武士は花押のみを記しその文書は右筆が代行した)。戦国時代から江戸時代にも情報戦は有って敵の攪乱情報を見分けするために花押は有効な識別手段であったのであろう。


 歴代の総理大臣の花押も有るという。また、政府閣議における閣僚署名は明治以降現在も、花押で行うことが慣習になっているとのこと。サインの一つとして自分の花押を作っておくのも良いかも知れない。毛筆でなくボールペン用の花押は出来るであろうか、難しそうであるが挑戦して見ては如何か。

(加藤輝雄、かとう・てるお)

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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※