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ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第325号

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ISASメールマガジン   第325号       【 発行日− 10.12.14 】
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★こんにちは、山本です。

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 今週は、宇宙探査工学研究系の久保田孝(くぼた・たかし)さんです。

── INDEX──────────────────────────────
★01:APRSAF
☆02:「あかつき」の機能確認作業において金星を撮影
☆03:「はやぶさ」カプセル等の展示スケジュール
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★01:APRSAF

 今回は、宇宙教育の話をしたいと思います。私は現在、JAXA宇宙教育センタ−に併任しており、また、APRSAFの宇宙教育普及分科会の共同議長をしています。その分科会の活動を紹介します。

 APRSAF(エイ・ピー・アール・サッフ)とは、何かご存知でしょうか?

 略語を使うことが多いこの頃ですが、特に宇宙分野では略語が多く使われています。APRSAFは、Asia-Pacific Regional Space Agency Forum の略で、アジア太平洋地域宇宙機関会議のことです。

 APRSAFは、アジア太平洋地域における宇宙利用の促進を目的として、1993年に設立されました。現在、4つの分科会(地球観測、通信衛星応用、宇宙教育普及、宇宙環境利用)があります。各分野における各国の宇宙活動や将来計画に関する情報交換を行うとともに、災害や環境など共通の問題解決に向けた国際協力プロジェクトを立ち上げ、具体的な協力活動を行っています。

 4つの分科会の1つである「宇宙教育普及分科会」は、宇宙を題材として、その効果的な利用による青少年の育成および宇宙教育の普及を主な目的として、2004年に設立されました。

 初代分科会共同議長である小山孝一郎先生が精力的にすすめ、宇宙教育および普及に関する情報交換のみならず、具体的な協力活動の構築に向けた議論、提言を行っています。その一環として、水ロケット大会や宇宙教育セミナーなど具体的な活動を推進しています。

 ところで、水ロケットを作って飛ばしたことがありますか?

 JAXA相模原キャンパスの特別公開では、毎年水ロケットを飛ばしています。スタッフが子供たちに作り方を教えて、子供たちは自分で作ったオリジナルの水ロケットを飛ばします。

 水ロケットは、ペットボトルなど身近な材料を用いて作るのが特徴です。
そして、ロケットの飛ぶ原理、物理法則、宇宙への関心、ものつくり、飛んだ時の感動や喜び、失敗から学ぶ工夫などなど、宇宙を題材とする教育のよい例です。

 宇宙教育普及分科会では、宇宙についての理解を深める機会を小中高校生に提供する「宇宙教育フォーラム」を開催しています。

 また、水ロケットの作り方、飛ばし方の教材作りや情報交換の場の提供、宇宙の題材を学校教育に効果的に取り入れることを目指して、学校教員らに宇宙教育における研修の機会を提供する「宇宙教育セミナー」・「宇宙教育ワークショップ」等をアジア太平洋地域で開催しています。

 今年のAPRSAFは、11月23日〜26日にオーストラリアのメルボルンで開催されました。宇宙教育普及分科会には、11カ国、1国際機関から 40名近くが出席し、宇宙教育普及に関して活発な議論がされました。

 会議では、小中校生を対象とした教育プログラムの継続、また高校生・大学生対象の高度な水ロケットやCanSatによる教育プログラムなど、次の段階の取り組みについての検討を推進することが確認されました。

 また、宇宙教育における教員研修の機会や現地の言葉での教材を増やすなど教員支援をさらに強化し、またWikiサイトを利用した教材や宇宙教育に関する情報の共有および発信を促進し、宇宙の題材が学校のカリキュラムへ取り入れられるよう図ることが確認されました。

 さらに、分科会で編集制作した水ロケット活動広報用パンフレットを活用して、宇宙教育普及活動に努めること、アジア・太平洋地域および世界の科学センタコミュニティや他の国際機関などの機能を利用して、宇宙教育普及活動の充実をめざすこと、衛星画像、宇宙ステーションなどの成果の情報共有をはかり、今後の宇宙教育普及活動に活用するよう図ることなどが確認されました。

 APRSAFのサイドイベントとして、宇宙教育普及分科会では、2005年より、水ロケット大会を開催しています。

 今年は、11月20日〜21日にメルボルン市の郊外で開催されました。アジア太平洋地域の10カ国および南米地域の2カ国から、33名の生徒(12歳〜16歳)、34名の教師・指導者が参加しました。水ロケット大会では、打ち上げ競技だけではなく、宇宙に関する講義、パラシュートなどを用いた高度な水ロケット研究会、打ち上げ装置の研究会、CanSatデモンストレーション、火星探査体験、宇宙実験ラボ体験なども行われました。

 生徒たちには、水ロケット競技や体験学習を通して国際交流を行ってもらうとともに、体験したことを友人に広めてもらうことも狙いとしています。また、教師・指導者には、宇宙を題材としていかに教育活動を展開するかを学んでもらい、それを広めてもらうことも目的としています。

 今回は、日本から、6名の生徒と2名の教員が日本代表として参加し、生徒の一人が水ロケット競技で見事優勝しました。

 JAXA宇宙教育センターでは、宇宙教育に関する活動を推進しています。その一環として、APRSAF水ロケット大会日本代表の募集と選抜を行っています。来年も水ロケット大会を開催する予定ですので、ぜひ奮ってご応募いただければ幸いです。

 教育には時間がかかります。APRSAF宇宙教育普及分科会では、心豊かな青少年の育成のために宇宙を素材として教育活動を展開することを推進しています。

 宇宙教育の目的は、子供たちが最もロマンを持ちやすい宇宙を材料にして、好奇心と探求心を涵養することですし、宇宙分野だけではなく、社会の様々の分野で活躍する将来の人材を育てることに貢献することにあると思っています。

 ぜひ、学校等において宇宙を題材に教育を推進していただければと願う次第です。

(久保田孝、くぼた・たかし)

JAXA宇宙教育センターに関する情報
新しいウィンドウが開きます http://edu.jaxa.jp/
新しいウィンドウが開きます http://edu.jaxa.jp/education/international/

APRSAFに関する情報
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水ロケットに関する教材情報
新しいウィンドウが開きます http://wiki.vssec.vic.edu.au/waterrockets/

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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※