宇宙航空研究開発機構 サイトマップ

TOP > レポート&コラム > ISASメールマガジン > 2010年 > 第293号

ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第293号

★★☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ISASメールマガジン   第293号       【 発行日− 10.05.04 】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

★こんにちは、山本です。

 やっと真冬のような春から抜け出して新緑の季節がやってきました。もう、ゴールデンウィークも終わりなんですネ。

 相模原キャンパスはアメリカハナミズキが満開です。白い花ばかりなので、夕暮れ時には雪をかぶったように見えます。

 「はやぶさ」のtwitterに続いて「IKAROS」のtwitter も始まりました。皆さんのフォローをお待ちしています。

 今週は、宇宙科学共通基礎研究系の大月祥子(おおつき・しょうこ)さんです。

── INDEX──────────────────────────────
★01:金星探査機「あかつき」の待つ種子島へ
☆02:「IKAROS」・「あかつき」ロケットに結合
☆03:「はやぶさ」特設サイト  関係者からのメッセージ
☆04:今週のはやぶさ君 と 「はやぶさ」軌道情報
───────────────────────────────────

★01:金星探査機「あかつき」の待つ種子島へ

 いよいよ5月18日に打ち上げが迫った金星探査機「あかつき」。私はその「あかつき」に搭載されている1μmカメラIR1の開発・試験を担当しています。

 「自分が関わったものを宇宙に飛ばしたい!」
そんな憧れがきっかけで地球惑星科学の道に進んだ私にとって、大学院での研究室選びの際に知った金星探査計画PLANET-Cはまさに渡りに船でした。打ち上げなんてまだまだずっと先のこととと思いながら地上望遠鏡で金星を観測していた学生時代を経て、再来年度にはついに打ち上げ!というタイミングでプロジェクト研究員になり、正式にプロジェクトの一員となりました。
IR1のフライトモデルの性能評価試験を担当し、一次噛み合せ試験・総合試験に参加し、「あかつき」という名前を決める場にも立ち会い、皆さんのお名前とメッセージを預り、あっという間に2年間が過ぎて、あとたった2週間で打ち上げです。何年間もずっと打ち上げをわくわくと楽しみにしてきたのに、衛星に関わる時間が長くなるにつれ緊張からくるどきどきの方が大きくなってきました。宇宙研で様々な試験に参加して一つの衛星に関わる人の多さやその一人ひとりの熱意を目の当たりにしたり、メッセージキャンペーンやアウトリーチ活動を通じてたくさんの人からの応援の気持ちに触れたりするうちに、
「自分が関わったものを宇宙に飛ばす」
ことの責任への緊張が増します。


 今年3月上旬、「あかつき」は相模原キャンパスでの組立および機能試験を終え、3月17日に種子島宇宙センターに向けて搬出されました。2009年6月からずっと相模原キャンパスで総合試験を行なってきた「あかつき」は宇宙研内の多くの方々に親しんでもらっていました。そのため、見送りにはプロジェクトメンバー以外にも沢山の人が駆けつけてくれ、賑やかなものになりました。さらに、お向かいの相模原博物館側からも10人ほどの方が数時間にわたって見守って下さいました。

 17時30分頃、「あかつき」の入ったコンテナを載せ、トレーラーが出発しました。万歳三唱とたくさんの拍手に見送られての旅立ちでした。探査機としては小柄な「あかつき」。トレーラーに乗って陸路で鹿児島まで移動し、鹿児島港からフェリーでの種子島入りです。そして相模原出発から丸2日後の3月18日午後17時30分頃、無事にJAXA種子島宇宙センターに到着しました。ここからフライトオペレーションの始まりです。

 私たち観測機器担当者は打ち上げの瞬間は相模原の運用室で迎えます。種子島での作業は3月末の詳細電気試験と4月末の最終外観検査のみで、この時だけ種子島に行くことになります。私にとってはこれが初めての種子島宇宙センターでした。羽田からまずは鹿児島空港へ、そして小さなプロペラ機に乗り継いで種子島空港へ向かいます。空港からはレンタカーで宇宙センターのある南種子町に移動しました。宿泊先のビジネスホテルを始め、いたるところに歴代のロケット打ち上げのポスター(関係者のサイン入り)が貼られています。
もちろん我らが「あかつき」をのせるH-IIAロケット17号機のポスターもありました。関係者がいつもお世話になっているだけあって、町の皆さんロケットにも衛星にも詳しく、話しているだけで打ち上げの地に来たことを実感できました。

 移動日翌日、ついに種子島宇宙センターへ。広大な敷地の奥に射場が見え、それだけで感動してしまいます。しかし、ここではJAXAの職員と言えども、本当に立ち入る必要のあるエリアにしか入ることはできません。どのエリアに入る必要があるかを全て事前に申請し、IDカードに登録しておくのです。残念ながら射場は遠くに眺めるだけでした。

 私たちの作業場所は第2衛星組立棟。ここで「あかつき」の打ち上げ前最後の詳細電気試験を行いました。ただし、「あかつき」のあるクリーンルームに入れるのは実際に衛星に触る作業を行う人だけで、私たち観測機器担当はガラス越しのみでの「あかつき」との再会でした。この詳細電気試験では、実際にカメラの電源を入れて観測用のプログラムを流し、長距離の輸送の前後で動作に変化がないことを確認しました。詳細電気試験の翌々日は打ち上げ時の手順を確認する運用リハーサルがあり、打ち上げに関わる全ての人が当日の配置につく必要があったため、電気試験後はすぐ種子島から相模原にトンボ帰りでした。

 1ヶ月後の4月末、観測機器担当者にとって2度目にして最後の種子島作業がありました。「最終外観検査」です。この時期、「あかつき」は衛星単体での作業を終え、いよいよロケット側との結合作業が始まります。衛星分離部・衛星搭載アダプタの上への取り付け、フェアリングへの格納が行われれば、もう「あかつき」に近づくこともできません。そこで、その前に肉眼での最後の外観検査を行うのです。何年にもわたり開発・試験してきた担当機器を小さな傷やホコリの一つも見落とさないようしっかりと観察し、異常がないことを確認します。

 この日、打ち上げを3週間後に控えた「あかつき」は既に衛星フェアリング組立棟に移っていました。無塵衣を着てエアシャワーを通り、クリーンルーム内に入ると、部屋の真ん中に「あかつき」は置かれていました。広い部屋でしたので、もともとコンパクトな機体が一層小さく見えます。そんな「あかつき」を各機器担当者が細部にまでわたってじっくりと検査し、自信を持って送り出せることを確認しました。探査機に対して使う表現ではないかも知れませんが、とても美しい姿でした。この姿を目に焼き付けることが出来たことを幸せに思います。年末に「あかつき」から届く金星の画像もきっと美しいことでしょう!
 今からとても楽しみです。


 今回のこの原稿は種子島への往復の飛行機の中や作業の合間に少しずつ書いてきましたが、原稿締め切りである今日4月30日、「あかつき」は衛星分離部に取り付けられ、衛星搭載アダプタ(PSS)に取り付け済みの小型衛星搭載部上部に結合されました。今後は衛星フェアリングに格納され、大型ロケット組立棟に運ばれた後、H-IIAロケット17号機に取り付けられる予定です。これからの打ち上げに向けての最新情報は、「あかつき特設サイト」(新しいウィンドウが開きます http://www.jaxa.jp/countdown/f17/index_j.html )をぜひご覧ください!

(大月祥子、おおつき・しょうこ)

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※