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ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第292号

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ISASメールマガジン   第292号       【 発行日− 10.04.27 】
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★こんにちは、山本です。

 「はやぶさ」帰還カウントダウンの特設サイトのtwitterには、開設10日で14000を超えるフォローをいただきました。改めて「はやぶさ」への関心の高さを実感しました。

 今週は、赤外・サブミリ波天文学研究系の山村一誠(やまむら・いっせい)さんです。

── INDEX──────────────────────────────
★01:「あかり」カタログで宝石を探そう
☆02:「はやぶさ」カプセル再突入予定時刻を公表
☆03:ポスター・チラシ・壁紙を飾って一緒に「あかつき」の打ち上げを盛り上げてください!
☆04:今週のはやぶさ君 と 「はやぶさ」軌道情報
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★01:「あかり」カタログで宝石を探そう

 赤外線は人間の目には見えません。赤外線で宇宙を見たらどうなるか。
天文学者は50年ほど前から、赤外線センサーを使って宇宙を赤外線で調べ始めました。でも、一体何を見たらよいのでしょうか?最初は、それまでに知られていた有名な星などを観測していたわけですが、そのうち、可視光では見えなくても赤外線では明るく輝く天体があることに気づきました。他にもそのような天体があるに違いない。そう考えたカリフォルニアの研究グループが、専用の望遠鏡を作って、見える限りの空を波長2マイクロメートルでまんべんなく観測、赤外線で輝く天体を探しだしました。これが世界初の赤外線天体カタログです。1965年のことです。

 1983年に打ち上げられた史上初の赤外線天文衛星IRAS(アイラス)は、天文学にとってまさに革命的な出来事でした。ほぼ全天を、地上には届かない波長も含む12,25,60,100マイクロメートルで観測したIRASは、約25万天体の赤外線天体カタログを作り上げました。IRASのデータそのものによって、またカタログを元にしたさまざまな望遠鏡による追観測によって、それまでの天文学者の常識を覆すような数多くの新発見がありました。

 このIRASの天体カタログを、天文学研究の最先端に合わせて作り直そうというのが、2006年2月に打ち上げられた赤外線天文衛星「あかり」です。「あかり」は、液体ヘリウムで望遠鏡や観測装置を極低温(マイナス270℃近く)まで冷却し、2006年5月〜2007年8月にかけて、全天をまんべんなく調べるサーベイ観測を行いました。われわれの身の回りと同じくらいの温度の天体に感度を持つ中間赤外線(9および18マイクロメートル)と、冷たい宇宙(マイナス200度以下)を探るのに有効な遠赤外線(65,90,140,160マイクロメートル)の全部で6種類の波長でのデータを取得しました。異なる波長のデータを組み合わせることによって、温度を決めるなど、天体の性質を詳しく調べることができます。「あかり」のデータは、生まれたての星の赤ちゃんが宇宙のどこにいるのか、あるいは、生涯を終えようとする年老いた星がどのように振る舞うのか、など、われわれの宇宙の営みを調べるために必要な情報を教えてくれるのです。

 「あかり」カタログから宝石、すなわちわれわれの宇宙についての新しい知識、を発見しようと、天文学者たちの活動が始まっています。カタログの検索ツール(下記)には、既に1万件を越えるアクセスがありました。チームメンバーによる初期研究では、出来たばかりの惑星を持つかもしれない星の候補を見つけたり、われわれの宇宙でいまどれくらいの星が作られているかを、より正確に見積もることができた、などの成果が生まれてきています。これから世界中の天文学者によって、この日本発のデータを用いた研究成果が続々と生まれることを願っています。機会があれば、Webページや本メールマガジンなどでお知らせしていきたいと思います。

「あかり」観測成果のページ
新しいウィンドウが開きます http://www.ir.isas.jaxa.jp/AKARI/Outreach/results/results.html

「あかり」のカタログは、天文学者に向けて公開されているものですが、データを見ることは誰でも出来ます。興味のある方は、以下のURLにアクセスしてみて下さい。(いずれも英語です)。

カタログ検索ツール
新しいウィンドウが開きます http://darts.isas.jaxa.jp/astro/akari/cas.html

カタログ配布
新しいウィンドウが開きます http://www.ir.isas.jaxa.jp/AKARI/Observation/PSC/Public/


(山村一誠、やまむら・いっせい)

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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※