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ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第275号

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ISASメールマガジン   第275号       【 発行日− 09.12.29 】
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★こんにちは、山本です。
 2009年最後のメルマガです。読者の皆さんは、年賀状はもう出してしまったでしょうね。実は、「はやぶさ」担当のOさんが、はやぶさ君年賀状素材を作ってくださいました。
(⇒ http://www.isas.jaxa.jp/j/enterp/missions/hayabusa/fun/newyear.shtml

 まだの方は、ご利用ください。かくいう私も これから準備するのですが……

 今週は、宇宙情報・エネルギー工学研究系の吉川 真(よしかわ・まこと)さんです。

 2010年は、1月5日号から配信予定です。それでは 皆さま 良いお年をお迎えください。

── INDEX──────────────────────────────
★01:いよいよ2010年へ
☆02:「月のかぐや」講演会【新宿・紀伊國屋ホール】
☆03:第3回宇宙総合学研究ユニットシンポジウム「人類はなぜ宇宙へ行くのか?」
☆04:小惑星探査機「はやぶさ」軌道情報
☆05:今週のはやぶさ君
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★01:いよいよ2010年へ

 いよいよ、2010年になりますね。“2010年”と言えば、アーサー・C・クラークのSF小説「2010年宇宙の旅」がすぐに頭に浮かんできます。もちろん、「2001年宇宙の旅」の続編です。2001年の時も、ついに2001年が来たかと思いましたが、それから2010年まで、あっという間でした。これらSFの世界では、人類が木星まで旅行できることになっていますが、現実は、まだ遠い未来の話です。でも、実際に宇宙を冒険している探査機がいます。改めて言うまでもないと思いますが、小惑星探査機「はやぶさ」です。

 2009年は、「はやぶさ」にとっては、まさにイオンエンジンで始まって、イオンエンジンで終わった年でした。2009年2月、それまでしばらく休止していたイオンエンジンを起動させ、最後の軌道修正に入ります。このまま、約1年間、つまり2010年の3月くらいまでイオンエンジンが動けば、地球に帰還できるのです。

 その後、イオンエンジンは順調に動き続け、特に大きな出来事のないまま、11月。突然、イオンエンジンのスラスタDが止まってしまいます。すでにスラスタAとスラスタBは使えず、スラスタCがかろうじて動作するだけでしたから、Dが止まってしまうと2010年の地球帰還は厳しくなります。
2010年がダメな場合には、また3年遅れの可能性も。でも、もはやこの状態での3年遅れは、非常に厳しいことは確かです。

 誰もが万事休すかと思ったとき、思ってもいなかった裏技が飛び出しました。スラスタAの中和器とスラスタBのイオン源を組み合わせて、1台のイオンエンジンとして動作させようというものです。すでにご存じの方が多いかと思いますので詳細は省略しますが、このやり方で、現在、「はやぶさ」は順調に飛行しています。

 イオンエンジンによる軌道変更量を分かりやすく表現するために、仮に今の時点でイオンエンジンが止まったと仮定したとき、「はやぶさ」がどこまで地球に近づくかという図を作成することになりました。例えば、2009年12月22日の時点で仮にイオンエンジンが止まったとすると、「はやぶさ」は2010年6月に地球に約200万kmまで接近することになります。今後、イオンエンジンを吹き続けると、この最接近距離が徐々に小さくなっていき、 2010年3月くらいまでイオンエンジンが動作すれば、この最接近距離がゼロになるわけです。

 本当に「はやぶさ」は戻ってくるでしょうか? これは、誰にも分かりません。我々は、“祈る”ことしかできません。(ということで、JAXAで作製した「はやぶさ」のビデオ
新しいウィンドウが開きます http://spaceinfo.jaxa.jp/inori/index.html には、「祈り」というタイトルが付いているのですが。)でも、もちろん、「はやぶさ」を運用しているメンバーは、単に祈っているだけではありません。「はやぶさ」を地球に帰還させるために、少しでもおかしなことはないか五感を最大限に働かせつつ、時には第六感も頼りに(?)運用を粛々と続けているのです。

 「はやぶさ」地球帰還まで、もう半年を切りました。まさに秒読み段階になりつつあるわけですが、「はやぶさ」を帰還させること、地上に降下してくるカプセルを無事に回収すること、そして、イトカワの表面物質をきちんと分析できること、これらについての作業が現在まさに進んでいるのです。

 来年、2010年は、月惑星探査にとって、非常に忙しい年になりそうです。「はやぶさ」の地球帰還に加えて、金星探査機「あかつき」や小型ソーラー電力セイル実証機「IKAROS」が打ち上げられます。さらには、新しいミッションである「はやぶさ2」や「SELENE2」の実現も目指していくことになります。このようないろいろな月惑星ミッションが、多くの「夢」を私たちにもたらしてくれることを期待したいと思います。

 最後に、いくつか願い事を...
「はやぶさ」が無事に地球に戻ってきますように。
「あかつき」や「IKAROS」が無事に宇宙へ旅立ちますように。
「はやぶさ2」や「SELENE2」が実現しますように。
そして、2010年が、皆さまにとって、平穏でかつ飛躍の年になりますように。

よいお年をお迎えください。

(吉川 真、よしかわ・まこと)

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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※