宇宙航空研究開発機構 サイトマップ

TOP > レポート&コラム > ISASメールマガジン > 2009年 > 第274号

ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第274号

★★☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ISASメールマガジン   第274号       【 発行日− 09.12.22 】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

★こんにちは、山本です。

 2号前のメルマガで紹介した「あかつき」メッセージキャンペーンの締切りが、12月25日(金)から来年1月10日(月)までに延長されました。

 正月休みを利用して、ご家族、友人誘い合わせてご応募下さい。団体応募も受け付けています。(⇒ 新しいウィンドウが開きます http://www.jaxa.jp/event/akatsuki/index_j.html

 今週は、JAXA宇宙環境グループの小原隆博(おばら・たかひろ)さんです。

── INDEX──────────────────────────────
★01:郷に入ったら郷に従うのくだり
☆02:星の大爆発が宇宙に残した超高温火の玉の「化石」を発見
☆03:小惑星探査機「はやぶさ」軌道情報
☆04:今週のはやぶさ君
───────────────────────────────────

★01:郷に入ったら郷に従うのくだり

 東北大学大学院を終了し、駒場の宇宙科学研究所に入りました。1986年の事です。それまでEXOS-B/C衛星の関係で、宇宙研には何度となく訪れていましたが、職員としていろいろな用務を行うことになりました。会計の方がたにいろいろ教えていただきました。衛星に関する予算も担当する事になりました。海外への送金手続き、実験装置の通関も、その時学びました。会議の開催から成果物の印刷も、一連の仕事の締めくくりです。定期的な委員会の切り盛りもやらせて頂きました。次第に研究する力も身について来た感触があり、次の展開になりました。

 郵政省通信総研に移ったのは宇宙研入所から10年経った1996年度の冬でした。通信総研の宇宙環境研究室長になっての最初の仕事は研究の企画運営でした。通総研の人事・事務システムは大きく異なっていましたし、人の考え方も違っていました。研究のための研究の宇宙研から、役に立つ研究を目的にする国立研究所(国研)スタイルに切り替えるには、時間を要しました。大きな差を感じましたが、どこか、根っこのところで、「研究は研究でしか売れない」と思っていました。今もそのように思っています。とはいえ、国研は、役に立つことを行なう組織でした。私達の分野(宇宙空間科学)の応用にこころがけ、宇宙天気予報を、積極的に進めました。人工衛星や、宇宙飛行士が影響を受ける宇宙環境の研究に向かいました。事務処理のスタイルは、さすがに情報通信技術のメッカだけあって、非常に電子化されていました。意志決定の仕組みも、単純明快でした。

 一昨年から、再び縁があってJAXAに移りました。新スタートした宇宙環境グループの担当になりました。筑波宇宙センターに出入りし始めたのは、実は、JAXA発足当初の2003年からです。非常勤招聘研究員として、月に2回ほど、筑波宇宙センターに訪れていました。JAXAは、私がこれまでに経験したことのない大きな組織です。動く予算も、行なわれているプロジェクトも、非常に豊富な内容です。国際宇宙ステーションに宇宙環境計測装置を搭載する計画が進んでいました。宇宙天気予報への活用をJAXAの皆さんと考える一方で、衛星に環境モニターを搭載する計画を進めました。今現在、5機の衛星で宇宙環境を計測しています。国際宇宙ステーションも、夏に成功しました。来夏には、世界で初めての準天頂衛星は打ち上がります。

 JAXAで時々感じることは、人事、経営企画そして各本部が別々の基準で、物事を進めているように思う事があります。JAXAが2003年に発足するにあたり、ISAS,NAL,NASDAの3機関が統合されましたが、それぞれの文化を背負っての統合。ある意味では当然なのかもしれません。同じことは、通信総研(CRL)が通信放送機構(TAO)と統合したときも感じましたが、JAXAの場合は、同種類の研究開発が複数の本部で行われている事が大きな特徴です。現在、専門技術グループ(DE)組織が企画されて、本部を横断する形で、宇宙技術の開発研究を進めています。基礎研究から応用技術まで、DEは幅広く所掌するという目的を持っていて、すでに本部横断的な取り組みも、始まっています。

 私達の宇宙環境グループは、衛星や宇宙飛行士に影響を与える宇宙環境という視点と、宇宙環境の変動メカニズムの深い理解を2つの視座において、これまでの地球周辺から、月や惑星の環境の理解へと踏み出しています。ISAS,NASDA,NALの文化は、今、JAXAという新天地に入りました。郷に入れば郷に従え、とは、昔からの理ですが、よく考えるとJAXAの郷はこれからです。JAXAの役職員が、新しい「郷」を築いていかなければなりません。単純明快が、私の一番好きな言葉です。故大林先生がよく話されました「研究は中身でしか売れません」という言葉を、あらためて思い出しています。JAXAが、はりぼてと言われないよう、明快でスマートな意思決定、そして中身をずっしりと詰めこむ努力が、今、必要です。郷に入ったら郷に従って来ましたが、最近になって、理想的な「郷」を築くのが、本筋ではないかと気づいた次第です。52歳になりました。残り10年、いよいよラストスパートです。

(小原隆博、おばら・たかひろ)

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※