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ISASメールマガジン 第269号
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ISASメールマガジン 第269号 【 発行日− 09.11.17 】
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★こんにちは、山本です。
11月も半ばを過ぎ、相模原も紅葉の季節です。落ち葉を踏んで歩くのはロマンチックな気分ですが、毎朝落ち葉の掃除をしている守衛さんににとっては、大変な季節の到来です。
先週、「はやぶさ」のイオンエンジンの異常が伝えられると、何通も応援メールをメルマガ宛に戴きました。「はやぶさ」プロジェクト担当に確かに届けました。
今週は、宇宙科学共通基礎研究系の今村剛（いまむら・たけし）さんです。
── INDEX──────────────────────────────
★01：金星との往復書簡
☆02：「あかつき」メッセージキャンペーン
☆03：小惑星探査機「はやぶさ」のイオンエンジン異常について
☆04：今週のはやぶさ君
───────────────────────────────────
★01：金星との往復書簡
来年、金星に向けて「あかつき」という名の探査機が打ち上げられます。
そしてこの探査機には、皆さんから集められたたくさんの名前やメッセージが搭載されます。
金星をご覧になったことがあるでしょうか？
見たことはないとおっしゃる方も、そうとは知らずに夕方の空に一番星としてご覧になっているのではないかと思います。金星は全天で太陽と月の次に明るい天体です。ぎらぎらと輝く様子がUFOかと騒がれることもあるようです。
金星の輝きは金星自身が出す光ではなく、表面をすき間なくおおう濃硫酸の雲が太陽光を反射することによるものです。「あかつき」の任務は、この雲を含む大気がどのように循環し、どのように金星の環境を作っているのかを解明することです。金星は地球とほとんど同じ大きさで、地球より少し太陽に近いところで太陽のまわりを回っています。地球の双子の惑星と呼ばれることもありますが、その実態は、濃い二酸化炭素ガスが立ちこめる灼熱の世界です。金星と地球を見比べれば、惑星が多様な姿に進化するしくみや、地球が現在のような姿をとる理由が、より良くわかると考えられるのです。
さて、「あかつき」メッセージキャンペーンはすでに始まっています。今年はガリレオ・ガリレイが初めて望遠鏡を夜空に向けてから400年目にあたる世界天文年で、メッセージの受付は世界天文年の日本事務局が窓口となっています。集まった名前やメッセージは、顕微鏡でないと読めない微細な文字で、縦8センチ横12センチの薄いアルミ板に印刷されます。アルミ板は全部で100枚程度、これらを探査機の重りの一部として外壁にネジ止めします。重りは、探査機の重心が設計どおりの場所に来るように、探査機製作の最終段階で枚数を調整して取り付けるものです。探査機は厳しい重量制限の中で作られるので、探査機の機能維持のために必要でないメッセージプレートのようなものを載せることは本来難しいのですが、重心調整のための重りならば無理がないというわけです。こうして「あかつき」の一部となったメッセージプレートは、打ち上げから約半年後に金星に到着して、金星の気象衛星となった「あかつき」とともに金星周回軌道を巡ります。
このような企画は今回が初めてではなく、日本では火星探査機「のぞみ」、小惑星探査機「はやぶさ」、月探査機「かぐや」に続いて4回目です。海外でも米国の惑星探査機でしばしば企画されています。自分たちの存在の証である名前や内なる思いを天界に届けたいと願うことは、限りある肉体に縛られた人間の、自然な感情である気がします。
探査機の製作は最終段階にあり、打ち上げやデータ解析の準備に追われつつメッセージプレートの準備をするのは容易ではありません。しかし今、ぞくぞくと集まりつつあるメッセージを見て、やってよかったという思いを強くしています。同時に、大変なものを預かってしまったというプレッシャーも・・
そういえば火星探査機「のぞみ」の打ち上げのとき、ロケット打ち上げの担当者が、こんなものを載せていたら絶対に失敗は許されない、万が一予定の軌道に乗らなくてもせめて月までは持って行かなければ、と言っていたのを思い出します。
タイトルの往復書簡ですが、20文字までの短いメッセージには、宇宙への夢、地球に描く夢が、凝縮された言葉でつづられています。これらの手紙を「あかつき」から受け取った金星は、返信を「あかつき」に託すのではないかと思うのです。そこには、金星がひた隠しにしてきた秘密の一部が、したためられているはずです。明けの明星、宵の明星として地球を照らし出す、私たちにあてたメッセージです。
組立室の「あかつき」が郵便車に見えてくる今日このごろです。
「あかつき」メッセージキャンペーン
⇒
http://www.jaxa.jp/event/akatsuki/index_j.html
（今村剛、いまむら・たけし）
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※※※ ☆02以降の項目は省略します（発行当時のトピックス等のため） ※※※
ISASメールマガジン 第269号 【 発行日− 09.11.17 】
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★こんにちは、山本です。
11月も半ばを過ぎ、相模原も紅葉の季節です。落ち葉を踏んで歩くのはロマンチックな気分ですが、毎朝落ち葉の掃除をしている守衛さんににとっては、大変な季節の到来です。
先週、「はやぶさ」のイオンエンジンの異常が伝えられると、何通も応援メールをメルマガ宛に戴きました。「はやぶさ」プロジェクト担当に確かに届けました。
今週は、宇宙科学共通基礎研究系の今村剛（いまむら・たけし）さんです。
── INDEX──────────────────────────────
★01：金星との往復書簡
☆02：「あかつき」メッセージキャンペーン
☆03：小惑星探査機「はやぶさ」のイオンエンジン異常について
☆04：今週のはやぶさ君
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★01：金星との往復書簡
来年、金星に向けて「あかつき」という名の探査機が打ち上げられます。
そしてこの探査機には、皆さんから集められたたくさんの名前やメッセージが搭載されます。
金星をご覧になったことがあるでしょうか？
見たことはないとおっしゃる方も、そうとは知らずに夕方の空に一番星としてご覧になっているのではないかと思います。金星は全天で太陽と月の次に明るい天体です。ぎらぎらと輝く様子がUFOかと騒がれることもあるようです。
金星の輝きは金星自身が出す光ではなく、表面をすき間なくおおう濃硫酸の雲が太陽光を反射することによるものです。「あかつき」の任務は、この雲を含む大気がどのように循環し、どのように金星の環境を作っているのかを解明することです。金星は地球とほとんど同じ大きさで、地球より少し太陽に近いところで太陽のまわりを回っています。地球の双子の惑星と呼ばれることもありますが、その実態は、濃い二酸化炭素ガスが立ちこめる灼熱の世界です。金星と地球を見比べれば、惑星が多様な姿に進化するしくみや、地球が現在のような姿をとる理由が、より良くわかると考えられるのです。
さて、「あかつき」メッセージキャンペーンはすでに始まっています。今年はガリレオ・ガリレイが初めて望遠鏡を夜空に向けてから400年目にあたる世界天文年で、メッセージの受付は世界天文年の日本事務局が窓口となっています。集まった名前やメッセージは、顕微鏡でないと読めない微細な文字で、縦8センチ横12センチの薄いアルミ板に印刷されます。アルミ板は全部で100枚程度、これらを探査機の重りの一部として外壁にネジ止めします。重りは、探査機の重心が設計どおりの場所に来るように、探査機製作の最終段階で枚数を調整して取り付けるものです。探査機は厳しい重量制限の中で作られるので、探査機の機能維持のために必要でないメッセージプレートのようなものを載せることは本来難しいのですが、重心調整のための重りならば無理がないというわけです。こうして「あかつき」の一部となったメッセージプレートは、打ち上げから約半年後に金星に到着して、金星の気象衛星となった「あかつき」とともに金星周回軌道を巡ります。
このような企画は今回が初めてではなく、日本では火星探査機「のぞみ」、小惑星探査機「はやぶさ」、月探査機「かぐや」に続いて4回目です。海外でも米国の惑星探査機でしばしば企画されています。自分たちの存在の証である名前や内なる思いを天界に届けたいと願うことは、限りある肉体に縛られた人間の、自然な感情である気がします。
探査機の製作は最終段階にあり、打ち上げやデータ解析の準備に追われつつメッセージプレートの準備をするのは容易ではありません。しかし今、ぞくぞくと集まりつつあるメッセージを見て、やってよかったという思いを強くしています。同時に、大変なものを預かってしまったというプレッシャーも・・
そういえば火星探査機「のぞみ」の打ち上げのとき、ロケット打ち上げの担当者が、こんなものを載せていたら絶対に失敗は許されない、万が一予定の軌道に乗らなくてもせめて月までは持って行かなければ、と言っていたのを思い出します。
タイトルの往復書簡ですが、20文字までの短いメッセージには、宇宙への夢、地球に描く夢が、凝縮された言葉でつづられています。これらの手紙を「あかつき」から受け取った金星は、返信を「あかつき」に託すのではないかと思うのです。そこには、金星がひた隠しにしてきた秘密の一部が、したためられているはずです。明けの明星、宵の明星として地球を照らし出す、私たちにあてたメッセージです。
組立室の「あかつき」が郵便車に見えてくる今日このごろです。
「あかつき」メッセージキャンペーン
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http://www.jaxa.jp/event/akatsuki/index_j.html（今村剛、いまむら・たけし）
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※※※ ☆02以降の項目は省略します（発行当時のトピックス等のため） ※※※