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ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第262号

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ISASメールマガジン   第262号       【 発行日− 09.09.29 】
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★こんにちは、山本です。

 シルバーウィークも終わり、久しぶりの相模原キャンパスは秋の装いです。
Yさんが退職してから大して手入れされていない花壇に秋の花が一斉に咲いています。雑草がいっぱいと思ってみると、ミントの林でした。今度、ミントティーに挑戦してみましょう。

 今週は、宇宙科学共通基礎研究系の北村良実(きたむら・よしみ)さんです。

── INDEX──────────────────────────────
★01:星はなぜ生まれるのでしょうか?
☆02:内之浦宇宙空間観測所 特別公開
☆03:今週のはやぶさ君
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★01:星はなぜ生まれるのでしょうか?

 皆さん、こんにちは。(●^_^●)
 ISAS宇宙科学共通基礎研究系の北村良実です。私は電波望遠鏡と赤外線望遠鏡を使って、星や惑星が誕生する様子について研究しています。前回の2007年10月9日第160号では、「地球誕生の現場を見る」というタイトルで、太陽系のような惑星系が誕生する様子を探る研究を紹介させていただきました。今回は、太陽のような星(恒星)がなぜ、どのようにして生まれるのか、という問題に焦点を当てたいと思います。

 皆さんは宇宙と聞くと、真っ先に何を想像されるでしょうか?
私は子供の頃に田舎で見たきれいな星空に魅了され、天文学者となりました。(^-^)v

 そうです。星、を思い浮かべられる方が多いと思います。実際に星は見える宇宙での主要メンバーです。我々が所属している銀河系の星は、星座や天の川として古くから親しまれてきました。一方、銀河系の外にある銀河、例えばアンドロメダ銀河、も何千億という星の集団から成っています。従って、宇宙を理解する上で星の出生の秘密を明らかにすることはとても大切です。

 星は質量(重さ)によって、その一生が決まってしまいます。星のタイプは重い方から軽い方に向かって、O−B−A−F−G−K−M−L−Tのように分類されています。我らが太陽はG型であり、その寿命は約100億年です。一方、質量が太陽の40倍もあるO型の星は、太陽よりも20倍大きく、明るく青白く輝きます。しかし、その寿命は100万年と非常に短命です。その反対に、質量が太陽の半分くらいしかないM型の星は、太陽の半分ほどの大きさで、暗く赤く見えます。その寿命は何と、宇宙の年齢よりも長い500億年です。(@o@)

 また星の人口調査をすると、重くなるに従ってその数は減っていきます。


 ではこのような星の特徴はどのようにして決まるのでしょうか?
そのためには、星の誕生の様子を調べる必要があります。皆さんはオリオン座の馬頭星雲(暗黒星雲)の写真を見たことがありますか? そこだけ星の数が少なく、周囲よりも暗くなっています。このように星々の間の空間には、ガスとチリから成る雲状の塊(星間雲)がいくつも浮かんでいます。(◎_◎)

 星間雲に含まれているチリが背景の星からの光を遮るため、暗黒星雲として見えるのです。きれいな星空を汚しているようにも見えますが、実は暗黒星雲の中で星が生まれることが分かってきたのです。暗黒星雲は非常に低温であり、星のように光ることはできませんが、電波を強く放射するため、例えば長野県野辺山高原にある45m電波望遠鏡を使うと、明るく見えます。

 暗黒星雲を電波望遠鏡で詳しく調べると、小さな塊(コア)が数多く分布している様子が分かります。さらに、赤外線天文衛星「あかり」で見える点状の赤外線天体を含むコアも多く存在します。これらの赤外線天体は生まれたての星(原始星)と考えられているので、コアの内部で星が誕生していることになります。(*⌒O⌒*)

 暗黒星雲中にあるコアが、自分自身の重みを支えきれず重力(引力)によって中心に向かって潰れ、新たな星を生み出すのです。最終的にコアの質量の数割くらいが星になると考えられています。とても経済的とは言えないですね。さらに、コアの人口調査をすると、重いコアほど数が少ないことも分かってきました。重いコアを作るには周りから大量のガスやチリを集める必要があり、簡単ではないからです。


 ここでまとめてみましょう。暗黒星雲に存在するコアの質量と数が決まれば、新たに誕生する星の質量と数が決まり、その結果を私達はきれいな星空に見るのです。\(^O^)/

 星の運命は暗黒星雲中のコアにかかっているのです。


 では、なぜ暗黒星雲にコアが存在するのでしょうか?
言い換えれば、なぜ星が生まれなければならないのでしょうか?
残念ながら、この本質的な問いに対しては、まだ誰も答えることができません。現在私達は、赤外線天文衛星「あかり」と野辺山45m電波望遠鏡を駆使して、何とか答えを見つけようと努力しています。コアを多数含んでいる暗黒星雲を野辺山45m電波望遠鏡を使って調べ、コアがまだ存在していない希薄な星間雲を赤外線天文衛星「あかり」を使って調べ、そして両方の研究を結びつけ、コア誕生の秘密に迫ろうとしています。まだ確実な答えは得ていませんが、この宇宙が真空の「ゆらぎ」から誕生したように、星間雲に存在する「ゆらぎ」がコア形成の鍵を握っていそうです。(^-^)v

(北村良実、きたむら・よしみ)

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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※