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ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第204号

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ISASメールマガジン   第204号       【 発行日− 08.08.12 】
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★こんにちは、山本です。

 一般公開に来場されたみなさま、暑さと雷雨の中、相模原キャンパスを充分にお楽しみいただけたでしょうか。

 今年は、2名のメルマガ読者の方にお会いできました。きっと、もっと大勢の読者の方が来場くださったと思いますが、「きれいなお姉さん」だけではなくて「怖そうなオバサン(私ですが)」がいて、声をかけられなかったのではと……

 今週は、きみっしょん事務局の三浦政司(みうら・まさし)さんです。

── INDEX──────────────────────────────
★01:なんか むつかしいことを かんがえよう
☆02:今週のはやぶさ君
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★01:なんか むつかしいことを かんがえよう

 皆さんこんにちは、ISASで博士課程1年生の大学院生をやっている三浦と申します。宇宙研で毎年夏休みに開催されている高校生向けの教育イベント「君が作る宇宙ミッション(通称:きみっしょん)」の運営スタッフの代表をやらせて頂いています。今年も、関係者の皆様のご協力のおかげで「きみっしょん」は無事に終了し、参加した高校生たちがとてもいい顔で宇宙研を去って行きました。今回は皆様に「きみっしょん」とは何か、参加した高校生たちが得られるもの、きみっしょんに携わる大学院生の活動などを、今年のきみっしょんの報告を交えて紹介したいと思います。

 まずは「きみっしょん」とは何かを紹介したいと思います。きみっしょん、正式名称「君が作る宇宙ミッション」は、20名程の高校生が4泊5日の合宿形式で宇宙研に泊まり込み、JAXA職員や大学院生のサポートを受けながら自分たちの力で宇宙ミッションの立案を行うという教育プログラムです。
毎年夏休みの始めに開催されており、第7回目を迎える2008年度のきみっしょんは7月28日〜8月1日の日程で行われました。

 きみっしょんは「自分で考え、自分で決定し、自分で作業する」をモットーにしています。実際には数人ずつのグループに分かれてミッション立案を行うので、「自分で〜」の部分は正確には「自分達で〜」となり、仲間たちとのコミュニケーションやチームワークといったものも重要になってきます。
宇宙科学の最前線を担う宇宙科学研究本部において、同じ「宇宙」というものに魅かれた高校生たちが協力し合い、本物の研究者と同じように頭と体とチームワークをフルで使ってミッションを立案し、数々の思い出と達成感によって一周り成長して帰って行く。これが、「きみっしょん」というイベントの正体です。

 上記のような経験を高校生にさせてあげたい!という目標のもと、きみっしょんに向けての準備は数ヶ月前から始まります。実は、きみっしょんの企画・準備・運営などの主体を担っているのは、宇宙研で学ぶ私たち大学院生たちなのです。毎年、有志で集まった宇宙研の学生たちが「きみっしょんスタッフ」として、工夫と発想を凝らしてさらにきみっしょんを良くしていこうと考えながら企画・運営に当たっています。

 今年のきみっしょんスタッフの仕事は、高校生を募集するポスターの作成から始まりました。広報担当の吉澤さん(博士課程2年生)が作成してくれたポスターには、青い空に向かって飛び立って行くロケットを背景に「なんか むつかしいことを かんがよう」と銘打ってあります。
(募集ポスターはこちらから閲覧できます:
新しいウィンドウが開きます http://www.isas.jaxa.jp/kimission/kimission/archive/poster2008.jpg

 宇宙ミッションの立案という作業は、高校生たちにとっては何か「むつかしいこと」に感じられると思います。宇宙科学や宇宙開発について考えてみたい!と集まってきた高校生たちが「むつかしいこと」を真面目に考えることの「難しさ」に面くらいながらも、必死になって宇宙ミッション立案を目指すきみっしょんにとって、ぴったりのキャッチコピーでした。

 このポスターを見て応募してくれた高校生たちの中から参加者を選抜する作業をはじめ、きみっしょんのスケジュール作り、宿泊や食事、飲み物などの手配・準備、しおりの作成など、きみっしょんを開催するための様々な作業を大学院生たちが役割分担して協力しあいながら進めて行きます。また、きみっしょん当日に高校生に適切なアドバスができるよう、宇宙研の先生にお願いしてスタッフ向けの特別講義を開催したり、自主的な勉強会なども行います。スタッフの大学院生たちにとっては、きみっしょんの開催そのもの が一つの大きな「ミッション」だったりします。このような作業を通して、研究室の枠を超えた大学院生同士の交流が深まるのも、「きみっしょん」の隠れた醍醐味のうちの一つです。

 今年も多くの大学院生の協力のもとに第7回きみっしょんの準備が整い、高校生たちを迎えることができました。毎年ながら、実に個性豊かで面白い高校生たちが集まりました。初めて会ったばかりなのに、すぐに打ち解けてお互いのことを話始める高校生たちを見て、いよいよきみっしょんが始まったんだなと、学生スタッフにも気合いが入ります。

 1日目は所内見学や特別講義、歓迎会などを開催し、いよいよ2日目からミッション作りの作業に入ります。宇宙ミッションを作る過程は、「目的を決める」、「方法を決める」、「ミッションを評価する」という3段階に分けられるのですが、さっそく一番最初の「目的を決める」から大変な作業となります。意見を主張し、議論し、協力して調査しながら、ミッションの目的を明確にして行きます。2日目はどこの班もだいたい「目的を決める」という段階までで終了となります。きみっしょんでは1日の終わりに「進捗報告会」を開き、その日の進捗を学生スタッフや見学に来たスタッフの方々の前で発表します。
今年は「オールトの雲を直接観測する」、
「月や火星への移住を目指した調査を行う」、
「宇宙空間での発電によりエネルギー問題を解決する」など、
個性的で意欲的なミッションが挙げられました。これらの高校生たちの発表に対し、アドバイザーである学生スタッフや先生方から厳しい質問やアドバイスが飛びます。

 3日目、4日目はこれらのアドバイスを取り入れたり、質問された点の答えを探したりしながら、ミッションの方法をより具体化し、評価していきます。
「どのようなエンジンを使えばどのくらいの時間でオールトの雲まで行けるのか?」
「太陽風を利用するとどのくらい発電できるのか?またはどのくらい発電すればよいのか?」
など、定量的な見積もりも行います。これらのことは高校生にとってはとても「むつかしいこと」ですが、大学院生スタッフのアドバイスのもと、その場で物理法則を学んだりしながら、頭脳フル回転で考えていきます。

 そして4日目の夜、大勢の宇宙科学の専門家の前でそれぞれのグループが立案した宇宙ミッションを発表します。考えに考え抜いて作ったミッションを、何回も訂正しながら一生懸命作った発表資料でプレゼンテーションするのです。発表を終えた後、高校生たち1人1人にコメントを言ってもらいました。

「こんなに勉強したのは初めて」
「ミッションを具体的に考えるのはとても大変だと分かった」
「きみっしょんが終わっても本気で勉強しようと思った」
「達成感でいっぱい」
「まだまだ力不足だと思った」

 などなど、他にもたくさんのうれしいコメントを残してくれました。
「むつかしいこと」を考えることの難しさと楽しさ、本気で打ち込むこと、自分自身の力で考えること、協力して一つの大きなことをやり遂げること。
我々スタッフがきみっしょんを通して高校生たちに伝えたかったことが、きちんと伝わってくれたんだなと、これらのコメントから読み取ることができます。

 翌日、いくつもの貴重な思い出と達成感を胸に、高校生たちは宇宙研を出発しました。5日間という短い期間でしたが、高校生たちにとっては熱くて濃い5日間になったのではないでしょうか。また、高校生たちを乗せたバスを見送って、我々大学院生スタッフも「きみっしょん」という一大ミッションを成功させることができた達成感で満たされました。きみっしょんの企画や運営、高校生へのアドバイスをしていくなかで、大学院生たちも貴重な出会いと体験を得て、自らの研究への刺激とすることができたのではないでしょうか。

 このように素晴しい教育プログラムである「きみっしょん」はこれからも続きます。なんか「むつかしいこと」を考えてみたい高校生の皆さん、参加をお待ちしております。

 きみっしょんの詳細、様子については以下のURLをご参照ください。

ホームページ:新しいウィンドウが開きます http://www.isas.jaxa.jp/kimission/
実況中継ブログ:新しいウィンドウが開きます http://edu.jaxa.jp/kimission-blog/7/

 最後になりましたが、「第7回君が作る宇宙ミッション」の開催にあたってご尽力頂いた皆様に、この場を借りてお礼申し上げます。本当にありがとうございました。

(三浦政司、みうら・まさし)

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※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※